第15話 わたしたちのファーストキス

 わたしの心は沸き立ってくる。


「わたしもグレゴノール殿下のことが、恋人として好き」


 自分でもこういう声が出せるとは思わなかったほどの甘い声が出てくる。


「レデシアーヌさん、好きだ。愛している」


 グレゴノール殿下はそう言った後、わたしを抱き寄せてくる。


 わたしはグレゴノール殿下にその身を任せた。


 グレゴノール殿下の熱い想いが伝わってくる。


 そして、グレゴノール殿下は唇を近づけてくる。


 わたしもグレゴノール殿下に唇を近づけていく。


 重なり合う唇と唇。


 わたしたちのファーストキスだった。


 わたしは一気に甘い気持ちになっていく。


 そして、これでグレゴノール殿下との、恋人どうしとしての一歩を歩み出すことができたとわたしは思った。


 こうしてわたしたちは、恋人どうしの位置付けになった。


 まだスタートラインから少し歩き出した程度ではあるものの、それはこれから進んでいけばいい話だと思っていた。


 今までのわたしは、学校の昼休みは、ノディナーヌさんと一緒に食事をしていた。


 グレゴノール殿下の方も、別の男子の友達と一緒に昼食をとっていた。


 グレゴノール殿下と、恋人どうしの意識になってからは、グレゴノール殿下と週に一度、一緒に昼食をとるようになった。


 ノディナーヌさんもこれを機に、婚約者と週に一度、一緒に昼食をとるようになる。


 週に一度とはいっても、それだけ友達とのコミュニケーションの時間が減ることになる。


 お互いの友達に申し訳ない気持ちはあった。


 しかし、お互いの友達はむしろそれをすすめてくれて、仲に影響することはなかったので、ありがたかった。


 最初は恥ずかしさもあったが、だんだんうれしいと思う気持ちが強くなってきた。


 その週に一度の昼食は、わたしがお弁当を作るようになった。


 グレゴノール殿下は、毎回、


「レデシアーヌさんの作るお弁当はいつもおいしい。ありがとう。これからもよろしくお願いしたい」


 と言ってくれる。


 その表情を見ていると、わたしもうれしくなってくる。


 恋人となった日は、お互いの心の準備が整ってなかったので、キスまでだった。


 それから一か月以上が経ち、二人の仲が深まって、お互いの心の準備は整ってきた。


 わたしはグレゴノール殿下と二人だけの世界に入りたいと思うようになった。


 十一月上旬の休日。


 グレゴノール殿下とわたしは、グレゴノール殿下の寝室で、いよいよ二人だけの世界に入る。わたしの胸のドキドキは限界と言えるところまで大きくなっていた。


 恥ずかしくてしょうがない。


 グレゴノール殿下の方も限界まで緊張しているようだった。


 なにしろ二人とも、こういう体験は初めてだ、


 殿下に尽くすことができると思う反面、


「嫌われたらどうしょう……」


 という気持ちはどうしても湧いてきてしまう。


 でもここまできたら、そういうことは言っていられないだろう。


 グレゴノール殿下に尽くすことのみに集中するべきだ。


「レデシアーヌさん、いいよね」


 グレゴノール殿下は、やさしくわたしに言う。


「お願いします」


 わたしはなんとかそう応える。


 そして、わたしたちは、唇と唇を重ね合わせた後、二人だけの世界に入っていった。


 わたしはその世界に初めて入った時、さらに恥ずかしさが増していった。


 しかし、その後、心の中はうれしさで一杯になっていく。


 そして、これでグレゴノール殿下と心も体も恋人どうしになることができたと思った。


 そして、これから一生、仲睦まじくしていきたいと思っていくのだった。

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