第7話 幼馴染のままの二人
今のところグレゴノール殿下は、告白のすべてを断っていた。
とはいうものの、グレゴノール殿下に告白してくる女性は、魅力的な人が多い。
一度であきらめることはまずない。
何度でもアプローチをしてくるだろう。
このままだとグレゴノール殿下が、その女性の魅力に押し切られて、「第二夫人」にしてしまうかもしれない。
「第二夫人」ができてしまったら、わたしの手からグレゴノール殿下がその女性に奪われてしまったのも同然の状態になる。
わたしの心の中ではまだ、グレゴノール殿下に対しての恋する心は育ち始めたばかり。
でも心の底ではグレゴノール殿下が他の女性に奪われるのが嫌だと思っているのだと思う。
だからこそホッとする気持ちが生まれてくるのだろう。
自分の心の狭いのではないか、と思う気持ちもあった。
彼女たちの方はよっぽどグレゴノール殿下に対して熱い想いを持っている。
それなのに、婚約者であるという理由で、
「グレゴノール殿下を奪われるのは嫌だ」
と言い続ける資格はあるのだろうか、と思わざるをえない。
しかし、グレゴノール殿下が断る度に、グレゴノール殿下の「第二夫人」の話はなくなり、わたしたちの仲はこれまで通り維持されることになるので、このまま断り続けていてほしいと思っていた。
でもいずれ、グレゴノール殿下好みの女性が現れ、告白をOKして「第二夫人」になる日が来るかもしれない、という思いはどうしてもある。
また、もしかすると、自分が正妃になりたいと思う女性も現れるかもしれない。
今のところはそういう女性はいない。
正妃ともなれば、政略結婚の側面が強いので、恋愛感情だけではどうにもならない。
そういう面では安心しているのだけれど……。
また。「第二夫人」を目指している女性は、熱い想いを持っているので、グレゴノール殿下が、その情熱に押し切られてしまったら、OKをしてしまうかもしれない。
その時、わたしは笑顔でグレゴノール殿下を祝福することができるのだろうか?
自信がない。
その女性に嫉妬してしまいそうだ。
自分で矛盾したことを思っているのはわかっている。
わたしはグレゴノール殿下に対して、「あこがれの存在」とも「恋の相手」としても、心の底では、そういう想いが育ち始めているとは言っても。まだまだ心全体で想うことはできていない。
そんなわたしに、嫉妬する資格はないのは自分でもわかっている。
わかってはいるんだけど……。
一方、わたしの方は入学後一年経つと、才色兼備でやさしい女子という高い評価を受けるようになった。
わたし自身は、自分のことをそんなに高く評価していたわけではないので、困惑していた。
というのも、それで一部の女子に嫉妬されるようになったからだ。
イジメとまではいかなかったが、
「レデシアーヌさん、ちょっと容姿がいいからといって、いい気にならないで。わたしの方があなたよりも、美しいんだから!」
等、時々嫌味は言ってくる。
わたしは別に、自分の容姿を自慢しようとは思わないので、決していい気持ちはしない。
男子の方は、その高い評価に影響されたのか、入学後二年が経った頃から、わたしと親しくなりたいと思う男子が出てき始めていた。
もちろん、グレゴノール殿下と婚約していることは知られているので、告白されることはなかった。しかし、友達であれば、特に問題はないので、わたしに好意を寄せていると思われる男子たちは、その親しい関係を望むようになったのだと思う。
近づいてくること自体は決して嫌なものではない。
わたしのことを認めてくれたんだ、とうれしく思うぐらいだ。
グレゴノール殿下も特にそうした動きを止めようとはしなかった。
もともと、わたしの交友関係に口を出す気はなかったようだ。
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