第三十一話.のめのめうぇい
「本当に倒してしまったのか……」
「ああ、証拠もあるぜ」
酒場の主人がびっくりした顔をする。キツネが証拠に持ってきた大蛇の光る鱗をテーブルに置くと、少し迷惑そうな顔をした。残骸から剥ぎ取ったものだが、表は綺麗だが裏は体液で濡れている。
「見事な鱗だろ?一番大きくて良い部分を剥ぎ取ってきた。まだあるぞ」
ネチョネチョの生鱗を、もう一枚追加で主人に手渡した。
「いや、もうわかった。出さなくていいから」
「そう?アクセサリーや防具なんかの素材になるぞ、大蛇の鱗。買うと結構良い値段するんだけどな」
「そりゃちゃんと処理したやつだろう。こんな今さっき剥ぎ取りましたみたいなの持ってこられても困るよ。怖いし」
「じゃあ」
「ビール一週間無料券だ」
そう言って鈍く光るワンウィークパスを取り出した。これで一週間はこの村に滞在することは決定してしまった。マヤはにっこり笑って懐にその無料券をしまった。今までで一番の笑みかもしれない。
「おい、キツネの兄ちゃん。あんたら実はすげえんだな、あの大蛇を狩っちまうなんて。ありゃ俺じゃ無理だ」
酒場で呑んだくれていた男たちが集まってくる。ほとんどが人間の男たちだ。口々に賞賛の言葉を告げていく。
「だからこの場で一番強いって言ったろ?」
「いや、いちばんはわたし」
「……」
どうしても一番強いにこだわりがあるのだろうか。マヤは一歩もひかない。キツネもそれに対抗する。
「いや、今回一番活躍したのは俺だろ?」
「キツネはつめがあまい。とどめをさしたのはわたし」
「はい」
対抗してみたものの、キツネはすぐに諦めて彼女に敗北した。そのとき、一際大柄な丸刈りのオヤジが入ってきた。
「ところであんたら三人パーティなのか?」
「いや、私は記者です。彼らにくっついて取材させて頂いているだけで……」
「さんにんだよ」
マヤが言った。
「なるほどな、それでも珍しいな。冒険者のパーティって言ったら大体五人組が定番だぜ、負傷したら困るだろう」
「ヒーラーが必要か?」
「普通は居るのが多いんじゃないか」
「普通はな、うちは普通じゃないんだよ」
ニッと笑うキツネに、丸刈りも笑みで答えた。
「なるほどな、手傷を負わないって自信があるわけだ!さすが大蛇を狩るだけのことはある!」
「まぁ、ちょっと違うけど。そんな感じ」
「おう!男だ気に入った!よーし、今日はおっちゃんが奢ってやる!飲め飲め!」
「よっしゃー!」
すでに酔いが回っているマヤが叫び声で応えた。
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