第40話

「無自戒が逃げた」

十文字が大声を出した。

「どうやって逃げた」

十文字がたずねると、

刑事はただ首を振るだけだった。

「ただ」

「ただ、どうした」

「あたりには、卵の散乱したあとがあり」

「卵」

十文字が首を捻った。

「はい、それによって豚箱の壁に

何らかの衝撃を与えて壊し、逃げたのでは

ないのかと」

「フーン、無自戒め、小癪な真似を

しゃがる」

十文字が頻りに感心して、腕組みした。


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