音殺し(其の弌)

@k0905f0905

第1話

あらすじ

 無自戒(むじかい)正午は終戦後、時の天皇の言語中枢を破壊し天の岩戸に閉じ込められて

きた、半妖怪だ。

 ある時、無自戒は(あ)という言葉を

発せられなくなっていることに気づく。

長年、人と関わってこなかったせいだと、

自分を納得させようとしたが、同じく

洞穴暮らしを強いられてきた

半妖仲間たちに聴くと、皆、そんなことは

ないらしい。

 一方、東北の山奥にある世路山毛欅(よろぶな)村では

半妖怪たちの鎮魂祭が行われていた。

 世路山毛欅村に災いを齎していた、無自戒

はじめ、半妖怪たちの魂を鎮めるのが

目的だという。

 さらに、東京では「あ」の言葉を盗みに行く

と言い残して、櫻木言葉(ことは)という女性が

失踪していた。

 言葉は唐麻衣大学で言語学を専攻しており、

その道の大家、実葉(みは)竜也と

恋仲になり、マスコミやSNSで恰好の餌食になっていた。

 噂では、世界中の「あ」を言葉と竜也が

盗み出し、世界中が大混乱に陥るのではないかと

色めき立った。

 言葉が「あ」を盗み出し、何をするつもりなのかが

まったく不明な中、警視庁捜査一課の十文字幸太郎が

捜査に乗り出す。

十文字孝太郎はクビ寸前のダメ刑事だったが、

この事件をきっかけに一躍、スターダムにのし上り、

脚光を浴びようと躍起になっていた。

 市ケ原遺跡で見つかった縄文土器が

事件解決のヒントになるかと

思いきや、それは、とんだガセネタだった。

 恐山に飛んだ、無自戒の前に

百一匹の妖怪が立ちはだかった。

 どうやらこの妖怪たちが「あ」の行方を知っているらしい。

 だが、妖怪たちを一匹倒すごとに、無自戒は「い」「う」

とア行をすべて失うのだった。

 百一匹の妖怪をすべて倒したとき、無自戒は

言葉の殆どを失っていた。

 言葉の源泉を探したとき、それが言語統制下の日本に

あると知った、無自戒はタイムスリップして、

軍の将校に憑りつく。

 将校の脳神経をコントロールすることに

成功した無自戒は、言語統制を抹消

するように働きかけようとするが、

脳細胞の抵抗に遭って容易には

行かなかった。

他方、言葉と竜也は別ルートから

言葉の行方を追ったが、

謎を抱いたまま、宍道湖に身投げしてしまう。

言葉と竜也の白骨死体が三年後に上げられ、

DNA鑑定の結果、

言語中枢に細工された痕があることがわかる。

一体、誰が、何のために?

無自戒とタッグを組んだ十文字は

恐山に行く。

恐山で待ち受けていたものは、

世にも恐ろしい怪物だつた。

十文字のマグナム357も怪物には

まったく歯が立たない。

無自戒は読経で怪物に

立ち向かおうとするが。

怪物がこの世からすべての音や声を

消し去ろうとしているらしい

事を知った、無自戒と十文字は

無謀な戦いを仕掛ける。

果たしてこの世からすべての音と声はなくなるのか?

そうなったら世界はどうなるのか?

すべては無自戒の過去と前生に隠されていた。

無自戒がそのことを知ったとき、

世界が沈黙し、声や音の本質という物が

明らかになる。

そして、声や音の本質を人類が知ったとき、

正に、世界は驚天動地、大転覆することが

予感させられるのだった。


第45回横溝正史ミステリ&ホラー大賞






 


 

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