第26話

オーロラは、呆れているようだった。

まぁ、気持ちはわかるけど。


「もし、逃げられなかったらどうする気だったんだ」

「オーロラがいるし、同じドラゴンが出てこない限り、大丈夫だと思ったの」

「まぁ。別によいが」

「それよりアリーシャ王国に行ってみましょう。結界に守られていたからといって、中が無事かも分からないわ」

「あそこは、聖女に逃げられた国だぞ」

「そう。それがすごく気になるのよ。どうして、逃げたのかしら」


私と同じように追い出されたとか?それを対面が悪いからって、逃げたことにしたとか?いや、でも逃げ出したというのも対面が悪いか。それなら、どうして…。


「どうする。門のそばまで、下りようか」

「冗談でしょう?ドラゴンが、国のすぐ近くにいると知ったら、パニックになるわよ。あの辺でいいわ」


私は、オーロラに気配遮断の魔法をかけた。そして、私に何かあった際、すぐに動けるようにと、私が背中から降りるとすぐに上空へ飛んで行ってしまった。私たちは、テレパシーでお互いの考えが共有できるので、何かあったら、すぐに駆け付けてきてくれるらしい。


「さて」


城には、強固な結界が張られている。

近くで、確認したが、やはり聖女が張ったものではない。

聖女の張る結界には、周囲の瘴気を浄化させ、魔物を弱体化させる力を持っているのだから、これは、おそらく、この国の宝具だろう。大概の国は、聖女がいなくても結界を張る道具の一つや二つ持っている。おそらく、それを発動させたのだろう。


「すみませーん。この扉、開けてもらってもいいですか!?」


上空から、視線を感じる。

おそらく、門の外からこちらを確認しているのだろう。

スピーカーから、無機質な声が発せられた。

警戒が色濃く表れている。

いきなり現れて、あんな巨大な魔法を放った後だから、仕方ないが。


「お前が、あの魔法を放ったのか」

「そうでーす!」

「この国を侵略しに来たのか?」

「そしたら、こんな風に正面突破してませんよ。私は、隣国の聖女、名前は…」

「聖女様だと!!??」


スピーカーの外が、なにやら騒がしい。

ざわざわとした大勢の人間の声と、バタバタと走り回っているのか、雑音が聞こえる。


「大変だ!」「殿下に知らせなくては」「ってか、本物か!?」「お前、あれ見ただろ!あんなん出せるの隣国の化け物聖女に決まってるだろうがっ!」


…なにやら、聞き捨てられない単語が聞こえたが。隣国の化け物聖女って、私のことか?

聖女なのに、化け物とは…。


「大変、失礼しました。隣国の聖女とは知らずに、大変ご無礼を…申し訳ございません」

「構いません」


失礼な態度と言葉には、元の国で慣れている。


―ぎいぃいいいいいぃ…。


巨大な門が開かれる。

兵士たちが、道を作るように並んでいた。


「ようこそおいでくださいました。聖女様。あなたをこの国は、歓迎いたします」

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