第24話

神降ろしとは。

地域一帯を清浄にするために行う儀式である。

聖樹を植えることで、一定の区域に結界を張ることができるのだが、この聖樹は、穢れに弱く、浄化をさせることが苦手な性質を持っている。

外からの攻撃に強く、内側の攻撃に弱いといえば、通じるだろうか。

聖樹を植えるには、瘴気を生み出している穢木を壊す必要があるのだが、この穢木を守っている魔物を倒す必要があるのと、ある程度、周りを浄化させないといけないというのが、厄介なところである。

この穢木を守っている魔物は、冒険者の間では、「ボス」と呼ばれ、国によっては、高額な懸賞金をつけられていることが多い。

それほど、この魔物は強い上に厄介なことが多い。

瘴気は、魔物にとっての栄養だ。魔法で言うバフ効果を常にかけられているようなもので、ただでさえ、強い魔物が、瘴気の力によって、強化されているのだから、高いレベルの冒険者でさえ、死の危険性がある。国で、高額の懸賞金でもかけなければ、誰も退治しないだろう。


冒険者でもない私が、そんな強い魔物に立ち向かっても大丈夫なのかといえば、絶対に大丈夫という自信はない。本来ならば、他の国に要請して、万全の状態で挑むべきだろう。

ただ、今回は瘴気が濃すぎる。他の国の助けを待っていたら、おそらく、この国とこの土地が持たないだろう。

穢樹が育ちすぎると、今度は子どもを生む。そして、いつしか森を形成し、樹海になってしまえば、今度こそ手に負えなくなるだろう。

だから、ここは無理をしてでも「ボス」を倒し、神降ろしをしなくてはならない。



「穢木がまだ一本なのが、救いだわ」

私は、オーロラの背から、国の周囲を眺めた。

ずいぶんと進行しているようだが、まだ子どもの姿はない。


「なんの魔法を放つ?」

「ここは一発、でっかいのいきましょう。聖なる柱よ・・・」

「ば、馬鹿がっ!そんなレベルのを小石を投げるみたいに放つな。少し距離をとるぞ」

「大袈裟な・・・」


確かに高レベルの聖魔法ではあるが、最高レベルというわけではない。

ちょっと空の見晴らしがよくなる程度の魔法だ。


「私に当たったら、怪我どころじゃすまないんだぞ!!!」


オーロラは、そういうと穢木から結構な距離をとった。


「もういい?」

「もういいぞ」


許可を得たので、思う存分いかせてもらおう。


「聖なる柱よ」


魔力を練り、手のひらに光輝く魔法のたまが浮かび上がる。

それを空高く、放りあげた。

玉は、みるみる上空に上がっていく。重く、暗い雲の中を光輝く玉が突き破って進んでいく。


「天の刃となり」


上空で、カッと玉が光輝き弾けた。

雲が消える。

白い光が、辺りを照らした。

オーロラが、眩しそうに目を細めていたのが、なんだか可愛らしい。


「その地に杭を」


玉は、巨大な柱となって地上へ突き刺さった。


「聖なる柱」

高レベルの聖魔法だ。広範囲、高威力の文句なしの魔法なのだが、危険認定されている魔法のひとつである。

というのも、澄みきりすぎた水に魚が住めないように、いかに聖魔法といえど、高いレベルのものは、人に害を及ぼしてしまうと言われている。

私は、仮にも聖女なのでなんの問題もないのだが、人によっては猛毒になってしまうらしい。

というわけで、よほどのことがない限り、禁止されている魔法だが、まぁ、事が事だし、周りにいるのは、魔物くらいだし。大丈夫でしょう。


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