第20話

「ソニアを追い出しただと!?」

「はい!」


にこにこと笑う自身のバカ息子に、私は思わず頭を抱えた。

僕、やったよ!すごいでしょう?みたいな顔で、きらきらとしているが、やったことは、国を傾けるレベルの災害である。本当、とんでもないことをしてくれた。


「いつだ?」

「今朝です」

「時間を正確に言わないか!」

「よ、夜明け前です。父上、なにをそんなに慌てることがあるのですか」

「慌てるわ!この馬鹿者がっ!!!」

「ひっ!」

「なんてことをやらかしてくれたんだ!この、…遊んでばかりで、甘やかしすぎたのが悪かったのだろう。…あぁ…やばいやばいやばい」

「父上?言葉遣いが…」

「言葉遣いなど、このさいどうでもいい!おい!誰か動けるものは!即刻、連れ戻すのだ!」


私の言葉をきっかけに臣下たちが、騒ぎ出す。


「一刻も早く探し出さねば!」

「魔物は?瘴気はどうなっている!」

「結界は、維持されているそうです。ただ、ソニア様の魔力がいつまで残っているか…」

「新しい聖女は!?」


その言葉に、はっとする。


「そうだ。リリアはどこだ。一刻も早く結界を張りなおさなくては」

「リリアなら、」

「陛下!大変です!」

「今度は、なんだ」

「て、帝国の…帝国のものが、外に…」

「なんだと!?」


空を見上げると、飛竜が飛んでいる。

帰ったかと思ったら、また来たのか!

海の向こう側かと思い、油断した。飛竜を使えば、距離は関係ないのか。


「一体何の用だ」


次から次へと厄介ごとが持ち込まれる。

こんなことは、王国始まって以来のことだ。

本当によくやってくれたなバカ息子。

とんだ災害を持ち込んでくれよって。



「オスカー殿。今度はどのようなご用件で参られたのだ」

「聖女殿を迎えに来た」

「は?」

「聖女殿は、こんな田舎の国にいるよりもわが帝国にいるほうがふさわしい。…お前もそう思わないか」

「ソニアを帝国に…だと?」

「聖女殿は、どちらにおられる?姿が見たい」

「ソニアなら…」

「馬鹿、黙っとけ」


バカ息子の口を臣下がふさぐ。

よくやった!

今、そいつに喋らせたら余計面倒なことになる。


「ソニアは、今手が離せない」

「そうやって、仕事ばかりさせて、かわいそうだとは思わないのか?お前は、本当に人間か?」

「…なに?」

「聖女殿の姿をきちんと見たことはあるか。あんなぼろぼろの姿。みじめでかわいそうだとは思わないのか。メイドさえ、道具には気を使っているというのに。国を守る人間に対しての処遇とは、思えない」

「… … …」


聖女の仕事内容など考えたこともない。ましてやソニアの姿も生活も。

だって、こうして国が何とかなってるんだから、別にいいではないか。

聖女は、国に尽くすもの。そこに聖女の気持ちなど、関係ない。それが、常識だ。

聖女とは、そういう存在である。

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