第6話
―パリン。
夢の中で、窓ガラスを割られた。
…いや、夢じゃない。
これは… … …。
私の部屋の結界が破られる音だ。
体を起こす。
先ほど、眠ったばかりだ。
未だぼんやりする頭で、なんとか結界を張り直す。
聖女は、国の守りを担当しているから、命を狙われることもあるとは聞いていた。けれど、まさか私が狙われることになろうとは、思わなかった。
なにせ、倒れた時ですら、何もなかったのだから。あの時が、一番危なかった。
そう思うと、護衛の一人もつけてくれなかったのは、私の存在がどうでもいいということだったのだろうか…。
いや、よそう。
今は、この侵入者を撃退することだけを考えよう。
隣の国…は、考えづらい。この国を狙うメリットがあまりない。だとすれば…。
影が動く。
「ホーリーショット!」
「ぎゃあああああ!!!」
「ん?」
聞きなれた声だ。
王子とその取り巻きの声のような…いやいやいや…そんなわけがない。だって、どうしてこんな真夜中に私の部屋に訪れる必要があるというんだ…。
魔法が直撃したのだろう。
気絶している。
そして、私は、気絶している人間の顔を確認した。
王子。それと取り巻き数名。
「… … …」
言葉を失うとは、まさにこのことだろうか。
「キュア」
「は!?」
あのまま寝かせておくわけにもいかないため、しぶしぶ回復魔法をかける。
「ここは…?」
「私の部屋の前ですね」
「はっ!き、貴様、俺に向かって魔法を撃つとはどういうことだ!あやうく死にそうになったぞ!」
「この時間に押しかけた上に、結界まで壊されたんですもの。そりゃあ、こっちだって命の危機かもしれないと思って、攻撃するに決まっているじゃありませんか」
「だが、俺は殺されそうになった!」
「だから、こっちも殺されるかと思ったんです!」
「やはりな…」
「え?」
「貴様をこの国から追い出す」
「は?」
なにいってんだ。こいつ。
あ。王子にこいつとか言っちゃった。
まぁ。言葉にしなきゃオッケーでしょう。
「なにいってんだ。こいつ」
「きさま…俺に向かってコイツとはなんだ」
「あ。思わず」
「お前は、前々から思っていたんだ。貴様やはり俺のことを殺そうとしていたんだな…リリアの言っていた通りだ」
「は?」
「リリアが言っていた。お前は魔女だと。俺とリリアを殺して、この国を乗っ取ろうとしているのだと」
「んな馬鹿な」
「父上にお前を追い出すとは、なんたることかと怒られてしまったし」
「当たり前だ」
「お前は、父上たちを洗脳したんだ!」
「頭は、大丈夫ですか」
この王子、まじで頭どうかしてるんじゃないの。
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