第3話
毎日、毎日、働き、眠る暇なく、働き、国を支えるためだけに生きている私。生きているのか死んでいるのか、もはや判断がつかなくなっていた時、妹の腰に手を当てながら、王子は高らかに宣言した。
「彼女の方が聖女にふさわしい!!!」
それに対し、私は何も答えなかった。
答えられなかった。
頑張ってきた成果を認められなかったからだとか、妹を贔屓しているだとかそんな理由ではなく、単純に働きすぎの寝不足の頭では、すでに考え事をするような容量が残されていなかったからである。
「彼女は、公園で寝ていたりと、明らかに仕事をさぼっている」
「まぁ…公園で?はしたないわ」
「ありえないな」
「聖女としての自覚はないのか」
貴族たちが思い思いのことを叫ぶ。
私は、それに対しても反応が出来なかった。
頭は、いつからか、もやがかかったようにおぼろげで、白く濁っていた。
寝ているのか、起きているのか分からない。
ただ、体だけは繰り返され、刻み込まれた職務を全うしていた。
疲労回復の魔法を重ね掛けし、やり過ごしていたが、ついに私も限界だったらしい。普段であれば、回復する魔力も連日繰り返される徹夜や短時間の睡眠で、回復していなかったらし
い。ついに私は、その場で倒れ込んでしまい、昏睡状態に陥ってしまった。原因は、極度の疲労と睡眠不足のためだった。
そして、そのあと目覚めたのは、倒れてから一週間が経った頃だった。
目覚めたとき、真っ先に心配したのは、結界のことだ。
しかし、睡眠時でも結界を保つように厳しい訓練をしていたおかげか、昏睡状態になっていても、結界は消えることなく、この国を守っていたらしい。ついでに周辺の村の結界も保たれたままだったそうなので、私は安心した。
「お前は、聖女失格だ」
目覚めてから、早々に王子が私に会いに来たかと思うと、言い放った。
「なんだ。お前のその恰好は」
「格好なんて、気にする余裕がないものですから」
最低限の身だしなみは整えているが、それでも最低限だ。
そもそも聖女は、走り回ることのほうが多いので、もし、王子の理想の格好がドレス姿なのだとしたら、残念ながら期待に沿うことは出来ない。汚れるし、動きづらい恰好は、最初から論外だ。
「それにお前、化粧もしてないのか。聖女どころか女失格だな」
「すみません。化粧している余裕がないものですから」
事実だった。
この日は、単純に時間がなかった。
化粧をしても眉を書き、ファンデと口紅を塗るくらいだ。
「お前は、本当に聖女失格だな」
聖女にふさわしい女は、常に美しくないといけないのだろうか。
だとしたら、それ相応の時間の余裕をくれないだろうか。
せめて、あと一人聖女の仕事を手伝ってくれる人がいればいいのに。
そうしたら、私だって、もう少し小綺麗な格好が出来るのに。
「お前は言い訳ばかりだな。もういい。愛想がつきた」
愛想は、もともとお互いついているだろ。
「お前には、この国を出ていってもらう」
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