少女ティティルナ~転生と元魔王様とそれからTS?!~
天野建
ゴルデバ編
第1話 お?おお?! スウィッチしちゃったゾ!
「悪く思うなよ。俺だってこんな事、したくないんだ」
<だったら、するなよ!>
「だが、俺も家族を守らなきゃならねえんだ」
<じゃあ、この子は家族じゃないのかよ! てめえの娘だろうが!>
「ふん。ここまで言っても、返事なしか。本当気味が悪いな、お前は」
<違うだろ! この子が感情を表に出さないのは、言わないのは、親を、お前を、困らせたくないからなんだよ! だからぐっと我慢してたんだ! わかれよ! 親だろうがよ!>
自分を見下ろす父親の冷たい目。
誰かが自分の為に、怒ってくれている。
けど、それは無駄な事だ。
ああ、私はいらない子なのだ。役立たずだから。弱いから。私が悪いから、お父さんは私を捨てるんだ。何もかも私のせい。ああ、消えてなくなりたい。
「じゃあな。これからお前がどうなるかは、
そう言い捨てると、男は背を向けて足早に去った。
残した我が子の絶望に滲む眼差しに、気づきもしないで。
消えたい。ああ、消えたい。少女は切に願う。
それはきっと父親が自分に最後に望んだことだ。
ならば、消えよう。
その瞬間、少女の意識は深遠の底に沈んだ。
それと入れ違いに浮上した意識が一つ。
「ふっざけんな! この期に及んで、責任転嫁かよ! 口減らしの為に、こんな山奥にこの子を置き去りにするなら、ちゃんとその罪を自覚しやがれってんだ! 阿保が! あ? ああ?!」
大声をあげた拍子にぽろりと転げた涙。
しかしその眼にはもう悲しみに色は微塵もなかった。
「ありゃ? どうして? どうなった!? 何で俺が出てんだよう!」
少女のあどけない口から発せられたのは、およそ女子らしくない雄たけびであった。
「ん~ん? なんでだ? 何で俺が表に出てんだ?」
罵って叫んで少し落ち着いた少女は、その場にどかりと座り込むと、首をひねった。
そもそも少女の中で、自身を自覚したのは、少女の住む村を出て、すぐの事だった。
この子のあまりにも悲しい気持ちを感じて、同調したのか、外の様子も少女の視界から見れるようになった。また父親が背負った背負子に座り揺られているうちに、少女の記憶も流れ込んで来た。
少女は今いる山を1つ2つ越えた小さい村に両親と4人兄弟と暮らしていた。
近年少女の住む村の地域で不作が続き、この冬が越せないかもしれないと父親が考え、この少女を口減らししようと考えた。
兄たちでもなく、末の弟でもなく、真ん中のこの子を。
普段から表情が乏しく、口数も少ない、この子が親の中では最下位だったのだろう。
「くっそ! この子は親に迷惑をかけまいと我慢してただけだろうが! 親なら分かれよ、ばかやろうが!」
こうして愚痴っている間も、自分のうちにいるであろう、少女に呼びかけるが、一向に反応はない。気配すらない。
「なあ、おい。ショックなのはわかるがよ、生きてりゃいいことあるって。だから、出て来てくれよう」
胡坐をかいた膝に手を置き、弱ったように眉を下げる。
「無駄だ。少女はもう魂の奥に沈んでしまった。もう出てくる事はないだろう」
と、突如聞こえたバリトンボイス。
「おわ!? なんだよ、おまえ! てか、動物がしゃべった!? 魔物か!?」
今まで1人だったのに、座り込んでいた少女傍らに、黒いちんまいネコ科の動物がちょこんと座っていた。
即座に飛びのき、一歩離れる。
「怖がるな。お主に危害は加えん。我はお主に救われたもの。覚えていないか?」
「ああ?! 俺がお前を? いんや? お前みたいな黒いちんまい奴、知んないよ」
「ああ、そうか、そうだな。この姿は我の本性。お主とは人型で対面していたから、わからぬか?」」
「人型? やっぱ、おまえ魔物なの?」
「いかにも。唯一の個体魔物だ」
「へえ。子猫にしか見えねえがな」
「それは、宿主であるお前が小さいからだ」
「宿主? どうゆう事だ? テイムしてるのとはちがうのか」
「違う。お主と我の魂は結合している。おそらく私を助けた時の副反応だろう」
「助けたねえ」
いつ? どこで?全くわからん。
少女は腕を組んで、首を傾げる。
「忘れたか? お主は我を、魔王を、己の命をかけて救ってくれたであろう? ジオルリア=アカレよ」
「あっ!! ああ!! ああああああああ!!」
ジオルリア=アカレ。
その名前をきいた途端。
自分の死んだ時を思い出した。
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