第四章 第87話 ウェルネス島 閑話③〈古代龍(エンシェントドラゴン)リヴァイアサン〉視点③
◆◇◆◇〈古代龍リヴァイアサン〉視点③◆◇◆◇
そして近代に至るのだが、様々な国家が離合集散し我が居住するウェルネスは、【ブリタニカ連邦】の構成国となり久しい。
そもそも我は人類の守護者なので、人類自身がどの様な政体の国家を営もうと、人類自身が判断してより良く進化する為の過程と言えるので、我が口出しすべきでは無いだろう。
そんな中、ウェルネス島からそれ程離れていない大陸西部では、【ドラッツェ帝国】と【フランソワ王国】の間で百年戦争なる大戦が続いていた。
その戦争の初期段階で、例の【守護機士】を駆使した戦闘が起こってしまい、又も貴重な仲間となるべきだった【守護機士】は数を減らして行った・・・。
若干苦々しい想いを抱きながら、我は特に動かずに状況を眺めていると、足元のウェルネス島に変化が訪れた。
その変化とはウェルネス島に対する【ブリタニカ連邦】の態度の変化だ。
我は元々ウェルネス島に居住するにあたって、地元の領主を務める地方貴族との間に協定を結んでいて、その長となる領主が認める巫女を通して、交流を保っていた。
長年のその交流における現代の巫女は、領主の直系の娘である【オクタヴィア】姫なのだが、ある日彼女が我に泣きついて来たのだ。
何でも、2年に一度の頻度で【ブリタニカ連邦】の本島である【グレート・ブリテン】島に、領主と【オクタヴィア】姫の兄弟達が謁見と滞在の為に向かったのだが、そのまま彼等は監禁されてしまい、ウェルネス島には全権を委任された【聖教】の司教が派遣され、事実状ウェルネス島の統治権が奪われたそうだ。
人類でも無い我としてもあまりにも常識を欠いた【ブリタニカ連邦】の遣り口に憤りを覚え、取り敢えず我が居住する【ハイランド魔法学園】の地下に【オクタヴィア】姫を招き入れ、【ハイランド魔法学園】全体で彼女を庇護する様に計らった。
そうこうしている内に、【オクタヴィア】姫の義兄に当たる【ルドラ】が、【ブリタニカ連邦】の本島である【グレート・ブリテン】島から脱出し、細かい事情が判明した事で、【ブリタニカ連邦】が本格的にウェルネスを構成国では無く直轄領にすべく動き始めた事が判ったのだった。
そして【ルドラ】が【グレート・ブリテン】島から脱出して程無く、【ブリタニカ連邦】から派遣されている【聖教】の司教により、公にでは無いがウェルネス領主の死が伝えられ、正式にウェルネスの主権が【ブリタニカ連邦】に移譲される事を一方的に領主の後継者となってしまった【オクタヴィア】姫に伝達され、彼女のウェルネスの首都への出頭が命じられた。
我はあくまでも人類の守護者なので、此の様な人類同士の政治的な遣り取りには介入出来ないので、切歯扼腕する思いで見守る事しか出来ず、辛い日々が続く中、意外な突破口が見えてきた。
それは例の【ブリタニカ連邦】の本島である【グレート・ブリテン】島から脱出した、【オクタヴィア】姫の義兄に当たる【ルドラ】が組織する事実上の反乱部隊が掴んできた情報であった・・・。
何でも首都付近の森林にある砦等で、魔物・魔獣による暴走で、英雄的な働きをみせた冒険者グループが有り、そのリーダーに当たる男は個人としても尋常では無い実力を持っていると言う噂だった。
然もその討ち取った魔物・魔獣の中には、大量の竜種や亜竜種も存在していたと言うのだ!
(そんな馬鹿な?!)
竜種や亜竜種とは、つまり我の下級眷属という事だから、基本的に積極的に人類に牙を剥く事は無く、もし対立する時は、棲み家を人類に荒らされたり、自身の家族を殺されたりした場合のみである。
なので魔物・魔獣による暴走に同調したり、大軍で人類に襲い掛かる事などは通常では有り得ない!
よくよく聞いてみると、どうも高度なアーティファクトか魔道具を使用してのテロリズムだったらしく、強制的に人類を襲わせた様だ。
(しかし、竜種や亜竜種百頭単位で人類に襲い掛かり、然もその尋常でない戦力を追い払える実力を持つ冒険者とはいったい?!)
そんな些か信じられない思いを抱き、我は久し振りにウェルネス島と近海に棲み家を持つ、我の下級眷属達と意識をリンクさせた・・・。
すると、恐るべき事が判ったのだ!
我の呼びかけに応えた下級眷属達は、まだ生まれたばかりの竜種や亜竜種のみで、其れ以上の年齢に達している竜種や亜竜種は殆どが我との意識をリンクさせず、それどころか我に対して敵意を剥き出しにして来たのだ!
(こ、此れは?!)
此の反応には、我の5000年に及ぶ龍生に於いて、たった一度経験が有ったのだ・・・。
それは、思い出したくもない凄惨な戦いの記憶・・・。
そう、それは5000年前の【旧支配者】の眷属を名乗る侵略者との決戦が行われた月面上での戦いの際、我と同等の【古代龍】20体が連れてきた眷属の竜族でも月まで来れた種が、奴等の特殊な洗脳魔法を浴びて、我等に背後から襲い掛かって来たのだ!
その所為で我と同等の【古代龍】20体は、5体を残して殺されてしまい、我等は信頼できる能力を持った眷属の竜族でも月まで来れた種を永遠に失ったのであった・・・。
(・・・此れは、何かが裏で起こっているぞ・・・)
我は改めて事態を深刻に受け止め、その鍵となると想像される冒険者に興味を持ったのだった・・・。
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