第28話 エリスの参戦とお宝
一同が集まってアクセルに戻ることになった時、クリスから要望が出た。
「ねえ、今アラシが解除した水の障壁さあ、あの城の中にお宝があるんじゃないかな?
ベルディアも討伐したんだし、ちょっと行ってみない?」
「しかし、クリスはまだ完全に回復してないだろう。 大丈夫なのかい?
なんだったら後日、落ち着いてからでも……」
「甘い、甘すぎるよ、あるえ!
後日とか、後でなんて言ってたら、ハイエナどもに全部かっさらわれちゃうし!
それに……神器があったら、回収しなくちゃいけないから !」
「……分かったよ。
そういうことなら、クリスにはねりまきが一緒についていてくれ !
じゃあ、手早く済まそう。みんな入るぞ !」
アラシの決断は早く、さっさと城門に向かって歩いていく。
「あれ、……アラシは私と一緒に居てくれるんじゃないの?」
慌てて追いすがるクリスとそれに並ぶあるえ、ねりまき。
三人を追い越し、当然のように少年の隣を歩く爆裂娘の構図が出来上がった。
めぐみんはわざわざ振り返り、フッと鼻で笑う。
「ムッカー!何なのよ、あれは!!
待ちなさいよ、めぐみん!!」
「ふふん、分かりきったことです。アラシの隣は私の指定席です。
あなた達の場所はありません!」
「……戦闘が終われば、すぐにこれだ。
先が思いやられるねえ~ 」
「どうして、あるえは落ち着いていられるのかな?」
「そりゃあ、アラシが私を受け入れてくれてるからさ !
なんだかんだで、パーティーにも入れてくれたし、お爺ちゃんの無茶な要求も拒否しなかったからね♪
そこは、ねりまきも一緒だろ?」
「うん、プリーストが欲しいんなら、他の街で探してもいいし、選り好みしないんだったら、あのセシリーさんでもいいんだしね。
そう考えると、私と一緒にいたいと思ってくれてるのかも♪」
二人の会話を聞き、自分もアラシの方からパーティーに誘われて、危険な目に遭えば、本気になって怒ってくれた姿を思い出して、クリスは温かい気持ちになった。
前を見てなかったので、ぶつかってしまい、視線を上げるとまさに彼女が考えていた少年が紅い瞳をこちらに向けていて、ドキドキしてしまった。
「どうしたんだ、もう城の入り口だぞ !
探索なのだから、お前が先頭に立ってくれよ」
一番前に移動するクリスだが、通りすぎるときめぐみんがジト目を送ってきた。
「……調子に乗るんじゃありませんよ !」
それに向かって今度は暗殺少女のほうが、ニヤリと返した。
「エリスの分も私は一緒にいるんだからね♪」
◇◇◇◇◇
先に二階に上がり一階に戻ってきたが、何も見当たらず空振りかと思ったが、普通に地下室の入り口があった。
「なんか安直だね。私の活躍の場がなかったよ」
「只の古城だしな !
ダンジョンじゃないんだから、こんなもんだろう」
そうなのだ。
地下に降りて通路の突き当たりの部屋に無造作に白骨が積み重なっており、彼らが生前、身に付けていたであろう武器や鎧の類いが無造作に置いてある。
同じ場所に財貨の類いも山積みになっていた。
「魔王軍幹部は、こういう物に無頓着だったのでしょうか?」
「脳筋だったんだろうね。
いくつかは、貴族の家紋がついてるのがあるね。
面倒だから、こういうのはギルドに届けよう。
後で難癖つけられたくないし」
「そうだねえ、他のは紅魔の里に持ち帰ろうよ。
売ってもいいし、傷が付いたユウヤの鎧の代わりがあるかもよ !」
「エリス通貨はもらってもいいでしょう?
エリス教会の孤児院に届けたいんだ。
……!
こっちにあるのって神器だよ!
どうしよう……今はエリスもいないし、復帰してくるまでどこか保管しないと」
「いや、それ無理があるよ。
隠しておいても知らないうちに盗まれてるかもよ ?」
「いや、罠を設置したり、アラシに結界を造ってもらったりさ !」
「それなら、里の家にしまっておいたらどうだ」
「いけません!
我が家には出入り自由の妹、こめっこが入り放題だと忘れていますね。
我が妹を甘く見てはいけませんよ!」
ああでもない、こうでもないと悩んでいると、穏やかな声が背後から聞こえた。
「心配は入りませんよ」
そこには微笑をたたえた幸運の女神が立っていた。
「エリス、大丈夫なのか?」
「ええ、天界に戻り短時間ですが休息したので先程よりはましになりました。
あちらで、ゆっくり休んでから仕事に取りかかる予定です」
「それならさ、ここにある神器だとあたりをつけた物を持ち帰ってくれないかな?」
「私もそのために来ました。
ただ、……この鎧と、この剣ですが特殊な物ですが神器ではありません。
丁度アラシさんの使用していたのが傷ついたことですし、装備してみては?」
エリスに勧められた物だが、アラシはあまり気乗りはしなかった。
アラシが今まで装備してこなかった全身鎧プレートメイルと直刀ブロードソードで脇に置いてあるのはご丁寧にもエリスの紋章が刻まれた方形の盾ヒーターシールドなのだ。
「せっかくだが、全身鎧は動きを妨げるし、その盾には紋章が刻まれてるだろう?
俺は、エリス教のクルセイダーになる気はないぞ !」
難色を示しているアラシを見てエリスは剣と鎧に手をかざす。白銀の光が降り注ぎ、その鎧は白銀に色が変わり、剣にいたっては、自ら発光している。
「これで、鎧の重さは、あなたの革鎧並みに軽量になってます。
自然に傷が直るとはいえ、傷つかないのが一番です。
何でしたら、剣はそちらの物と合成することもできるはず、きっとあなたの力になってくれるはずです」
溜め息をついてから、アラシは鎧を付け替えた。
全身鎧にしては各部が簡略化しており、エリスの軽量化の魔法や足裏や間接部に工夫があるお陰で金属鎧特有の大きな音もしない。
どうやら、今までと同じようには動けるようだ。
「わざわざ、鎧の胸にまで紋章を刻んで俺をエリスの使徒にでもしたいのか?」
幸運の女神は黙ってニコニコしている。
「それでは、私はこんどこそ戻ります。
アラシさん、クリスのことを頼みます。
しばらくしたら、必ずまた一緒にいましょう。
私も……あなたのことを想っています」
「……こんどこそ、帰るぞ !」
「……私は戻ったら孤児院の方に行ってるね」
「報酬は、おそらく偵察分しか期待できないだろうから、貴族ゆかりの物品を届けて早く里に戻ろう」
口数が少なくなってしまった女子組を怪訝に思いながらもアラシはテレポートを発動した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます