第86話
食べ歩きということで、屋台のものを色々つまんで食べる。
この世界の食べ物は現代由来の愛子が持ち込んだ料理と、この世界由来の料理の二種類がある。
後者は馴染みがないが、前者はそれはもう、だいたいぜんぶどっかで見たことがある。
カレーとか、ハンバーグとか、スパゲティとか、ラーメンとか。
なんか、成人男性が好きそうなものばっかりある気がするのは気のせいか。
偏見?
「おいひ」
「んだなぁ」
というわけで現在食べているのは、そんな現代料理の一種、たいやきだ。
この世界では一般的に愛子料理と言われている。
意味はまぁそのままだよな。
「カスタード、カスタード至高」
「チョコだろ……」
いや餡だろって言われたら、いやチョコだろ……と俺は返すくらいにたいやきの中身はチョコが好きだ。
「愛子の恵みに感謝……」
「俺には無理だな」
なにせ、俺にはこういうのを開発するための知識がない。
毎日をスマホと惣菜に費やしてきたオタクの末路だよ。
後単純に、どう考えても誰かのアイディアとかぶる。
「そんなことない、ツムラはやればできる」
「やってできたところで、過去に何人の愛子が同じことをやってきたと思ってるんだよ」
オタクが考える現代知識で無双する方法なんて、大体どれも似通ったもんだ。
偶にこいつどこからそんな知識を? みたいなやつもいるが、少なくとも俺にそんなものはない。
「確かに、愛子そういう傾向ある」
「みんな似たりよったりってか?」
「違う。皆、同じようになにかに巻き込まれる運命にある」
ああ、巻き込まれ体質の話か。
というか、愛子の傾向としてはそれだけに限らないだろう。
巻き込まれることでなにか大きな事を成す体質だけではない。
自分が何かを起こす体質も、往々にして備わっている。
主人公属性とか、そういうのか?
俺の場合は、まぁ、レベリング中毒だろうな。
「この世界、スキルの枠から外れた“特異”がある」
「特異?」
「愛子の特性、とか。他にも、色々」
ふぅん。
いまいちピンとこないが、スキルってのは要は女神様が齎したもの。
その枠に外れるってことは、女神様と関係のない、普通じゃない何かを特異と言うんだろう。
「わたしにとっては……」
「とっては?」
「ツムラのレベル上げ、特異」
ああ、うん。
そう言われると、特異に対する人々の反応っていうのがなんとなく想像がつく。
ともあれ。
「流石に、今日は休みだからレベリングのことには拘らないよ」
「ほんとぉ?」
ほんとほんと。
お互いたいやきを食べ終わり、次の食べ物に思いを馳せている。
この満腹感は、今この瞬間に限ってはレベリングより優先され――
「助けてくれ! 物取りだ! そいつを捕まえてくれー!」
「経験値だ!」
――なかった。
俺は呆れるクロを脇に置いて、経験値を求めて飛び出すのだった。
なお、100点にしかならず、レベルアップはできなかった。
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