あなたの端末機、呪われていませんか?

春川晴人

始まりの予感

第1話

「はぁ〜。今日もお仕事疲れたなぁ。シロウちゃんは四日も出張だし。つまんなぁ〜い」


 スマホ片手にビーズクッションにダイブしながら部屋の中を見つめる。


「……落ち着かない」


 あたしはなにかと物をため込む性格のため、ほとんどどの部屋であっても物であふれていた。


 ところが、シロウちゃんという恋人ができてから、あたしの汚部屋はだいぶマシになったけど。シロウちゃんがいない今、整頓された部屋の中はやけに寂しさをかきたてられる。


 けど、いつまでもこんなことをしていても埒が明かない。あたしはお風呂にお湯を張りながらスーツを脱いだ。誰もいないのをいいことに、下着姿でパソコンと液タブの電源を入れる。


 今日もイラストのバイト依頼があるといいんだけど。


『あなたの絵はとても繊細で優しさに満ち溢れています。相当額の料金を支払いますから、どうかわたしのゴーストイラストレーターになってくれませんか?』


 こんなメールが届いたのは、今から四週間前のこと。ゴーストイラストレーターってところで引っかかりを感じたけれど、カツカツの生活から抜け出すためには、とても魅力的な話だった。


 結構悩んだけれど、趣味で描いてるあたしのイラストに気づかれるはずはない。あたしは、深いため息を吐いてから、やります、と書いて返信した。


 それが、すべての始まりだとは知りもせずに。


 つづく

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