第6話 わたしの召喚獣は男の子⁉1

 な、なにが起きたの⁉

 タマゴが割れた、けど……いつもみたいなふわふわしたかわいい生きものじゃなくて、わたしとおんなじ、人間。


 わたしが呆然と男の子をながめていると、男の子はぐいっと顔を近づけてきた。


「おい。聞いてんのか。あんただろ。リディル・ベロワーズってのは」

「え、は、はい。そうです」


 とりあえずこくこくうなずくと、男の子はくわっと目をつり上げた。


「やっぱりか。てめーのせいで迷惑してんだ、こっちは!」

「え、ええっ⁉︎ な、なんのお話ですか……」


 いきなりあらわれて、わたしのせいで迷惑してるって、なんなのーっ⁉︎


「おいおいおい。揉めてるとこ悪いけど、俺らのタマゴはどこいったのかなー?」


 そ、そうだよ。わたしのタマゴは⁉︎

 男の人に肩をつかまれた黒い髪の男の子は、能面みたいな無表情になって、ジロリと目だけで男の人たちを見た。

 そして、すばやく周囲を見て、くいっと片眉をあげる。


「タマゴ?」

「召喚獣のだよ! 俺らが見つけたってのに消えたじゃねえか!」

「ゲートのこといってんのか? つうか、あんたらじゃ無理だろ」

「はぁ?」


 男の子は獅子のように鋭い瞳で、三人の男の人たちをあざ笑うように見た。


「チカラを持ってないヤツが、ゲートを開けるわけがない」

「はぁ? さっきから訳わかんないこといいやがって!」


 顔を真っ赤にした男の人が怒ったようにこぶしをふりあげた。


「あ、あぶないっ!」

 

 わたしがとっさに男の子の手をつかんだその瞬間、空から一本の雷が地面に落ちた。

 焦げたような臭いと、しゅうしゅうとあがる白い煙。地面に、小さな穴があいている。

 わたしも男の人たちも、ぎょっとしてその穴を見た。今、なにが?


「お、おい、なんかやばくね」

「ば、ばか。ただの脅しだろ。今のだってきっと、クリスタルエッグを使ってるに決まって……」


 コソコソと話す男たちの足もとに、また雷が落ちた。靴の、ほんの少し横。ふつうの雷は、地面を伝って電気が流れるって聞いたことがある。でも、わたしはなんともないし、地面に穴だけがあいている。

 ということは、これは自然の雷じゃない。


 特殊な……召喚獣たちが使う元素魔法。


 わたしと同じ考えになったのか、男の人たちは固まって、やがて腰がぬけたみたいに地面にお尻をつく。

 黒髪の男の子は男の人の肩を踏みつけて、ぐっと顔を近づけ、金の瞳でいかくする。


「戦うってんなら、相手になるけど?」


 男の子の手が、バチバチと光った。

 手の中で電気が弾けているみたいに、青白い光の線が走っている。

 男の人たちは顔を真っ青にして、悲鳴をあげながら逃げていった。


 ぽかんとそれを見送っていると、男の子がふり返った。


「ったく。面倒なヤツらもいるんだな。おい、大丈夫か?」

「え? あ、ありがとう。助けてくれたの?」

「まぁな。文句はいろいろあるが、とりあえず俺の名前はクロウベル・S・エトワール。あんたのパートナーだ」

「パートナー?」


 聞いたことのない言葉に首をかしげる。

 と、鼻の頭にポタっと水滴が落ちてきた。雨だ!


「と、とりあえずわたしのお家にいこう!」


 わたしは男の子、クロウベルを連れて走って自分の家へと向かった。

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