憧れの先輩は吸血鬼でした
冷凍ピザ
1学期
第1話 ある日の出会い
私は
私は今、寝坊と言う高校入学以来最大のピンチに見舞われている。
起きた時には時計の針は7時50分を指し示していた。めっちゃやばい。
しかし、幸いな事に家から学校までの距離は徒歩15分の距離だ。普通は全力で走れば8分程で着くだろう。
不安要素としては、私は運動神経が絶望的に悪い事だ。当然体力も全然無い。なので1秒でも早く家を出なければならない。
「はぁはぁっ……はぁはぁ」
全力で朝の住宅街を駆ける私。
まあ駆けるって程速くないけどね……。
私は結構朝に弱いタイプなので、朝にこうして全力疾走するのは身体に堪える。
まあ全力疾走はいつやってもしんどいけど。
「はぁ……はぁ……死ぬ……肺が裂ける……」
「やあ、大丈夫か?」
死にそうになりながら学校へ向かって走っていると、後ろから何者かに声をかけられる。
声からして私と同年代なのだろうか。
とりあえず、無視するのはあまりにも失礼なため、呼吸のリズムを整えながら(あんまり整ってないけど)声の主の方へと振り向く。
「……誰……?」
「私は2年3組の
朝倉凛音。
私はその名前を知っていた。
成績優秀、スポーツ万能、スタイルもよく、何より顔がいい私の憧れの先輩だ。
とてもクールで、何者をも寄せ付けない高嶺の花のような人に私の目からは見えている。多分、私だけでなく、朝倉凛音のことを知っている人間なら、みんなそう思うのだろう。
彼女は急いでいると言うが私のスペースにあわせて横を走っている。
そして、運動部でもないのに全く呼吸のリズムが乱れる様子が無い。
さすがとしか言いようがない。
「この子の血は……だな」
「しぇんぱいぃ……なぁにか……はぁはぁ……言いましたか?」
「いや? 気のせいだと思うぞ」
その後、何とか学校に間に合い、今日もいつも通りの日々を過ごした。普通だったのは学校に居る間だけの話だが。
ホームルームが終わり、教室を出る。この瞬間の解放感はおそらく皆が感じているのだろう。
今日は友達が用事があって一緒に帰れないらしく、もう1人の友達はそもそも帰る道が真逆なので、ぼっちで寂しく帰ることが確定してしまった。
1人で帰る帰り道はとにかく虚無だ。寂しいなんて考えにも至らないほどの虚無感に襲われる。
そんな事を考えながら、教室から生徒玄関へと廊下を歩いていく。
「やあ、今日の朝ぶりだね」
「先輩?」
朝倉先輩と生徒玄関でばったり会った。
「これも何かの縁かもな、橘が良ければ一緒に帰らないか?」
朝倉先輩、私の名前知ってたんだ。憧れの人に認知してもらえているのは良い気持ちだ。
朝は時間に追われほとんど話ができなかった。
憧れの先輩と会話するいい機会だ。
断る理由など無かった。
「はい。ご一緒させてください」
先輩と一緒に帰れるのはとても嬉しいがやはり緊張する。
コミュ力の低い私は友達も少なく、初対面や関係の浅い人との会話が特に苦手だ。
何を話そう……ダメだ全然思い付かない……。
「橘は何か趣味とかあるのか?」
不意の質問に思考が固まる。
「え……えっと……えっと」
どう答えるべきなのか先輩にオタクだと思われたらどうしようという不安を押し殺して答える。
「ゲ……ゲームです。後、漫画とかも読みます」
「ふーん、ゲームと漫画ね」
先輩はどう思うのだろうか。こいつ典型的なオタクだなとか思われてないといいけど。
「いいね。私も漫画も読むしゲームだってよくやってる」
「趣味が合ってていいですね」
「質問なんだが、橘はどんなジャンルのゲームをするんだ?」
「パズルゲームとかでしゅ。あっ」
噛んでしまった。
羞恥心で爆発しそうだ。
この場から今すぐ消えたい……私に瞬間移動ができればこんな気持ちにならなくて済むのに。
「ふふっ。可愛らしいな橘は」
「ありがとうございます……?」
なんとも言えない気持ちだ。
でも可愛らしいと言われたことに関しては普段言われないことだから嬉しかった。
「橘にはなぜか運命のようなものを感じるよ。私と橘は出会うべくして出会ったって感じ」
「私にはよく分かりません」
「私にもよく分からない。でも橘になら私の秘密を明かしてもいいかもって思ったんだよな」
「秘密……ですか?」
「私はな、実は……」
緊張が走る。
先輩が秘密を私に明かす? 出会ったばかりの私に? どんな秘密なんだろう。
「吸血鬼なんだ」
「へ?」
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