第8話


沙織の右手が忠信の股間へと伸びてきた。ずっと固くなったり疲れて柔らかくなったりを繰り返していた忠信のモノは、今は半勃起状態だったが、初めて沙織に触られて驚いた。忠信の緊張が伝わったのか、沙織はすっと手を引っ込めたが、「ふふっ」と小さく笑うとまたそっと手を伸ばした。忠信の膨らみに手が触れると、ふと力を抜きサワサワ、フワフワと膨らみを優しくなで始めた。これは、忠信が彼女の身体を触る時のやり方だ。まだ芯までは固まりきれていないそこの、中途半端な柔らかさを楽しむようにフワフワ揉んでいる。が、すぐに反応し膨らみ始めた。沙織が、ぐっと前に乗り出すように動いたので、忠信は彼女の胸から手を離した。彼女は、シャツの前のボタンを2個止めると、忠信の股間に覆い被さるように上体を倒した。忠信はその背中にそっと左手を置き、やさしく撫でて見守った。

沙織の指がジッパーを探している。忠信は恥ずかしくなり、腹を引っ込めた。少し腹回りに余裕ができて、沙織の指がジッパーを探り当てた。ゆっくりと下ろし始める。沙織の熱い息が股間にかかる。忠信は興奮した。陰茎がむくむくと大きくなる。下っ腹に力をいれたまま腹を引っ込ませているので、ベルト回りも余裕があった。沙織が器用にベルトを外し、スラックスの留め金も外した。ボクサーブリーフの上から優しく両手で陰茎を包み揉み始めた。沙織の白く美しい指が、自分の陰茎を撫でさする様に、なおいっそう忠信は興奮した。芯まで硬くなり、全身に力が入った。「ふふっ」と、悪戯っぽい笑いを漏らすと、沙織はボクサーブリーフに手をかけ、引っ張って陰茎を露出させた。忠信は脱がせやすいように少し腰を上げた。陰茎が暗闇のなか屹立し、ビヨン、と揺れた。


「すてき・・」


小声で沙織がつぶやいた。外気に触れ、沙織にマジマジと見られ、忠信の興奮は混乱を伴って最高潮に達した。次の展開は・・・と、期待する間もなく、沙織がベローンと鬼頭を舐め、忠信は快感にあえいだ。見下ろすと、あの挑むような眼に笑みをたたえ、沙織がこちらの顔を見つめていた。目を合わせたまま、ぱくっと陰茎を咥え込む。そのまま、口中で、舌が踊る。裏筋からぐるぐると舌を回し、カリ部分に上唇を引っかけるように動かしながら右手で根本をしごく。またカリ部全体をベロベロと舐め回される。忠信は変化する快感について行こうと必死だった。


「すご・・・・」


思わず声が漏れた。シャワーを念入りに浴びてきて良かった。ボクサーブリーフも、派手ではないがきれいな物を選んでよかった。こんな美人が自分にこんな事をしてくれるなんて。しかもここは映画館。なんという背徳感。なんという変態的な空間だろう。ジュポ、チュパっと時々音がする。もう、映画はまったく観てなかった。沙織の整った鼻梁と、美しい目、時々はらりと目にかかる艶のある髪と、それを払い耳にかける仕草。卑猥に膨らんだりすぼんだりする頬と、果実のようにぷっくりしたオレンジかかったピンクの美しい唇が、自分の陰茎にこすりつけられる様を見ているだけで精一杯だった。ハーモニカを吹くようにズルー、ズルーっと陰茎に唇を這わせた後、まっすぐ咥えて口をすぼめ、ゆっくりピストン運動を始めた。その間も舌があちこち刺激している。どこでこんな事覚えたんだろう?凄いテクニックだと思った。自分が遊び慣れていないのもあるけれど、やはり以前にどこかの誰かとこんな事をしたんだろうな、などど考えていたら、沙織の動きが早くなり、吸引力も唇の締め付けも強くなった。


「うおっ」


思わず声が漏れる。動きに合わせて尿道の裏から尿道にかけ舌をあてられてベローンと舐められている。その事に気づいた時、


「やば!」


イキそう!と思い沙織の肩を慌てて叩いた。

沙織をどかせようとしたが、沙織は忠信の腰にしっかり掴まって動かない。なんでだ?どかないと口の中に発射してしまう!やばい!と思った時、ぱっと沙織は口を離し、ハンカチで口を拭いた。。そして椅子に戻り座り直すと服装もささっと直していた。ウェットティッシュを取り出し忠信に差し出す。忠信は少しの間だらしなくそのままでいたが、差し出されたウェットティッシュを受け取りながらも自分のリュックからウェットティッシュを取り出すと、もらったウェットティッシュと合わせて陰茎を拭いた。まだ陰茎は屹立したままドクンドクンと脈打っている。沙織の唾液で、暗闇でもテラテラ光っていた。口紅がところどころ付いているのがなんだか可笑しかった。拭き取ってしまうのももったいない気がしたが、よく拭いてノロノロと服装を戻した。


「トイレ行ってきますね。」


沙織が囁き、忠信は「うん」と頷いた。呆然としていた。もしかしたら、と期待が無いわけでは無かったが、こんなことまでしてもらえるなんて考えてなかった分、喜びも驚きも大きかった。


それにしても、世の中にはエロい事があるもんだなあ、と変な感慨にふけってしまう。今までの人生で、自分には縁の無い事、と諦めていたが、自分が当事者になるとは。こんなことは、裕福な勝ち組か、容姿に恵まれた人々だけが楽しんでいる事だと思っていた。多分基本的にはそうなのだろうから、誘ってくれた沙織に感謝した。沙織もやはり、遊び慣れたイケメンと、散々やらかしてきたのだろうか。そういったイケメン達や富裕層との遊びで、さっきのようなテクニックも身に着けたのだろうか。余計な事とわかっていながら、ふと考えてしまった。が、すぐ思い直した。いいではないか。負け組確定の冴えないおじさんでも、気に入って相手してくれているのだ。ありがたく受け入れよう。そして、お互い楽しめるよう全力をつくそう。


今日のために勃起力増強剤のジェネリック版を見つけて服用してきている。時間さえかければ二回は可能なはずだったが、まだイキたくなかった。やはり一度射精してしまうと随分と気持ちが下がってしまう。バイアグラ系の薬だが、飲んだからといって発情するわけではなかった。ただ、性的刺激に身体がよく反応する。これは飲んでみないとわからないことだった。しかし、この効能もとても楽しく感じた。


「お待たせしました。」


沙織が戻ってきた。メイクを直してきたのだろう。また、キラっとした印象が強くなっていた。トン、と忠信の太ももに右手を置く。忠信も左手をポンっと沙織の太ももに置いた。お互いにサワサワと相手の太ももを撫でた。そして徐々に股間へと移動する。お互いに同じぐらいのタイミングで、相手の股間にたどり着いた。忠信の陰茎はまた固くなってきた。沙織はその硬度を楽しむように時々ギュッギュッと握る。忠信は沙織の柔らかでなだらかな下腹部の感触を楽しんでいた。時々、下まで指をやりコリっとした小さな突起の根本をグッグッと押しながら擦った。忠信の息が段々荒くなる。沙織の息も荒くなってくるのが聞こえた。沙織が器用に片手でベルトを外し、ジッパーを下した。忠信はさっと自分のスラックスとボクサーブリーフを下ろして座り直した。沙織のスカートをたくし上げ、ショーツを引き下ろした。二人共、大事な部分が丸出しの状態になった。まさに変態カップルだな、と忠信はおかしくなった。沙織が忠信の陰茎をしごき始めた。忠信も沙織のあそこを愛撫した。二人でお互いに快感を与えあった。

楽しい、と思った。こんなにくだらない事で、こんなに楽しい事がああるだろおうか。まるで発情した高校生カップルのように、二人は共にあえぎ、キスをし、局部をまさぐりあった。


と、突然、人が入ってきた。忠信がそちらにチラと目をやると、さっき喫煙所にいた高齢の男性のようだ。男性はあまり足音をたてず、そーっと回り込んで二人の真後ろの席にストっと座った。どうやら、二人を堂々と覗こうという腹らしい。

忠信は少しあっけにとられて固まっていたが、気を取り直して沙織の局部を再び触り始めた。何かあれば沙織を守ろう、と思いながら。ところが、沙織の反応が変わった事に気づいた。


沙織の耳まで真っ赤なのが暗闇でもわかった。顔が火照っている。忠信の陰茎を握る手が止まった。身体中強張っている。しかし、股間は、深奥からドクっと愛液が溢れ出てきた。体温が上がっている。呼吸も熱く深くなってきた。物凄く興奮しているようだ。



恥ずかしいんだ。忠信は気づいた。沙織は、羞恥に弱いのだ。この恥ずかしさを楽しんでいる。

なるほど、これは面白くなってきた。忠信は心中で舌なめずりをした。



END




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