第134話 パチンコは立派な武器

 とりあえず反応が消えてしまったので、新しい反応を探す。


「……いた」


 いたよ。いたんだけどさぁ……


「…多いわね」


 どうやらマリアも確認したらしい。

 気配察知と世界地図ワールドマップで確認したから間違いない。森の奥に、あまりにも多すぎる反応があった。それも多いだけじゃなくて……


「…王都に近すぎる」


 そう。森の奥なんだけど、それが王都に近いほうなんだよ……


「どうする、フィリア?」

「…なんで私に聞くの?」


 これは恐らく、スタンピードの前兆。

 スタンピードの前兆、もしくそのものを確認した場合、ギルドに報告しないといけない義務が存在する。だから一旦帰るしかないんだけど…


「あなたなら倒せそう?」

「…義務はどうするの?」

「確かに報告は必要。でも、それってでもいいのよ」


 ……いいのかそれで。


「で。どうする?」

「…帰るしかないでしょ」

「本当にいいの?」

「……なにが?」

「だって、絶対注目浴びるわよ?あなたと私で報告することになるし。Cランクからはスタンピード発生時は絶対参加。やらかさないって自信、ある?」

「…………」


 そういうことか……確かに私だけの報告より、マリアとの報告のほうが信ぴょう性がでるし、対応が迅速になる。

 ロックゴーレムのスタンピードは危険度が高い。なので迅速な対応は必須。つまり迅速な対応をするには、マリアが報告するしかない。ここで私が一緒にいる必要はないので、そこはあまり問題ではない。

 だから私にとって問題なのは、その後。つまり、ロックゴーレムのスタンピードの討伐に参加する時だ。

 ………正直心配しかない。やらかしちゃわないかってね。ただでさえ今の力を把握できてないんだからねぇ……


「……サボれば」

「無理ねぇ。あなたギルドでだいぶ期待されてるみたいだし」


 ここにきてその期待が恨めしい…


「……やるかぁ」

「そもそも自分がやらかさないって思わないのね…」

「…私は信じれない」

「今だけじゃなくて前からだと思うけど…」


 うるさいやい!


「ママはどうするの?」

「もちろん行くわよ?いくらあなたが強くても、私の大切な娘なんだから。1人で行かせる訳ないでしょう」

「……じゃあ、私が何をやっても叱らない?」

「そもそも何をやろうとしているのかによるのだけれど……まぁ、いいわ。そう出し惜しみしてられる相手でも数でもないし。周りに被害さえなければだけど」


 ……とりあえず言質はとった。周りの被害は…まぁ、善処する。


「先行するよ」

「ええ。フィリアの本気について行く自信はないもの。後から追いかけるわ」


 これは好都合かも。マリアが来る前に終わらせれば…


「私がいないからって、無理しないでね?」

「………」

「返事は?」

「………はーい」


 とりあえず身体強化をする。……あ、だめだ。強すぎる。


「フィ、フィリア。もう少し抑えて…」

「ご、ごめん」


 空気中にかなりの魔力が漏れてしまった。それだけ制御が甘くなってるってことだよね…ちゃんと訓練しとかなきゃ。

 ………人がいないとこでね。


「…こんなくらいかな」

「…もうそのままロックゴーレムに突っ込んだら終わりそうなんだけど」

「あ、その手があったか」

「やらないでね!?絶対周りの被害が凄いから!」

「むぅ……」


 はぁ…まぁ、元々考えてた方法でやりますか。

 軽くジャンプしてから足に力を入れ、一気に走り出す。ちょ!はやっ!?

















 ちょっと思ったよりも速すぎて、止まれなくてぶつかって木をへし折っちゃった。………後でドライアドから怒られそうだな。


「木に思いっきりぶち当たったのに、そこまで痛くないのは身体強化の影響なのかなぁ……」


 とりあえず気配察知……うわぁ。さっきより増えてる気がする。しかも世界地図ワールドマップで見ると、王都にどんどん近付いている。


「とりあえず……あ。そっか、出来ないんだ……」


 今更になって気付いた……考えてたこと使えない。

 いや、使えないこともないんだけど……絶対大変なことなる。その方法が……あれだよ、熱して冷やすんだよ。その熱するってのがね…絶対火事になるよね……なんで気付かなかったんだか……


「どうしよっかなぁ…」


 とりあえず今私はロックゴーレムの進行上にいる。あともう少しで姿が見えてくるはずだ。

 ………そうだ。方法使おう。確かアイテムボックスに……あ、あったあった。これをここに括り付けて……よし。





「……きた」


 土埃が舞い、地響きが鳴る。目に見えるだけでもすごい数だ。

 ……でも。の前ではそれも無力だろう。


 魔法で創り出した2本の支柱に括り付けられた、黒い、幅広の紐。その紐は中央から後ろに限界まで引き伸ばされている。そして、引き伸ばされた紐の前には……大きな丸い岩。


「巨大パチンコ。いっきまぁーす!」


 さっきまで持っていた岩を手放す。すると紐がみるみる縮んでいき……その縮む力で加速された岩が、真っ直ぐにロックゴーレムへと飛んでいく。


 ズゴーンっ!


「ストライク!」


 ガッツポーズ!

 ………うん。遊んでないでちゃんと説明しよう。さっきアイテムボックスから取り出したのは、所謂ゴム。それをパチンコのように使って、岩を発射したんだよ。

 その発射された岩は見事に命中して、まるでボウリングのピンのようにドタドタとロックゴーレムが倒れていく。こいつら、重心が上にあるんだよね。だから見事に倒れた。まだ倒せてはないけど、密集してたから、起き上がるのも大変だろう。


「上出来」

「なぁにが上出来よっ!」


 ガシッと頭を捕まえられた。あ、あれぇ?


「はぁぁ……ほんと予想の斜め上いくわね、フィリアは」

「ありがとう?」

「褒めてないわよ!」





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