第132話 ロックゴーレムの討伐その壱
とりあえず馬車で待ってくれていたベルとキャサリンの2人には、依頼を受けたので2人だけで王都を回っていて欲しいと頼んだ。
「わたくし達が一緒ではだめなのですか?」
「まぁその……ハッキリと言うと、足でまといだから」
「……そうですわね」
うぅ……ごめんよ。でも仕方ないんだ。
ベルの武器は弓だから岩石で体が出来ているロックゴーレムとは分が悪いし、キャサリンは貴族だからねぇ……だから今回はついてこないで欲しい。
……まぁ、私の力を見られるのが嫌だっていう気持ちもあるんだけどね。なんというか……壁ができちゃいそうで。
「それでは、ベルさんと回ってきますわ。……お気を付けて」
「気をつけてねー!」
ブンブンと馬車の窓から身を乗り出して手を振るベルに苦笑しつつも、振り返しておいた。さてと。
「じゃあいこっか」
「ええ」
一応王都の門までは送ってもらったので、そこから外に出る。
……その時門番がマリアに驚いていたのは、言うまでもない。
「えっと…」
門から出て、ギルドで貰っておいた地図を広げる。今回の討伐するロックゴーレムの生息が書かれた地図だ。例え
「……王都から近いわね」
私の後ろから地図を覗き込んだマリアか、そう呟く。確かにロックゴーレムを表す赤丸が、王都からかなり近いところにある。
近いってことは討伐に行きやすいってことなんだけど……それは人間だけに当てはまる訳ではない。魔物とて同じこと。だから早めの討伐が必要なのだけれど……
「ここまで近いのは異常ね」
そう。普通は、近くても馬車で行くような距離に、ロックゴーレムは生息しているはずなのだ。なので歩きで向かえる距離に生息しているのは、かなり異常と言える。
「……もしかして」
「なに?」
「…いや。なんでもない」
あのローブ男達が関わっているかもと思ったけれど、気配察知と
「ふーん…まぁいいわ。それより、どうやって行くの?」
「無論走って」
それ以外方法はない。
……いや、目視による短距離転移もあるか。面倒だからやりたくないけど。
「……私ついていけるかしら」
あ、心配するとこそこなんだね。
「まぁ速度は合わすよ」
マリアが身体強化して、私がしなかったら、大体丁度いいくらいだと思うし。
……うん。速さのステータスが、ね。
「じゃあいこ」
「……分かったわ」
マリアから魔力が高まるのを感じる。そ、そこまで本気の身体強化しないでも……
「いくよ」
「ええ」
その瞬間、フィリアとマリアの姿が掻き消える。地面には、大きくくぼんだ跡だけが残されていた……。
ちょっと楽しくなっていつもよりスピードを出していたからなのか、案外すぐに目的地である森へと辿り着いた。
「はぁ……しんどい。久しぶりに本気で走ったわ」
「大丈夫?」
「……なんであなたはそんなに余裕そうなのかしらね」
そりゃ身体強化をしてないから、その分魔力消費はないし。あるのは体力的な疲れのみ。だから、魔力消費と体力消費しているマリアより疲れていないんだよね。
「……あれで身体強化してないのね」
マリアの顔があからさまに引き攣った。まぁ、そういう反応になるよね……。
私は思わず苦笑を浮かべた。
「その力、ちゃんと制御できてる?」
「多分…?」
「疑問なのが1番怖いんだけど……」
いやだってしかたないじゃん。前回のダンジョン騒ぎの時にレベル上がって、それから全然戦ってないし。
……あ。あの襲撃は例外ね。あれを戦いとは言わない。てか言えない。
だから今の正確な力をあまり把握出来てなくて、制御できてるかどうか分からない。一応大丈夫だとは思うんだけどね……。
「じゃあ今回の依頼で確認できそう?」
「うーん……」
それはどうだろうか?ロックゴーレムの強さって、ものすごく個体差あるんだよね…。
「まぁ、頑張るよ」
「…ほどほどにね」
心配そうにマリアが言う。心配してるのは私の身……じゃないよね、森のほうだよね。うん。
も、もちろん森を壊すことはしないよ?またドライアドに怒られたくないし。
………でも私も自分自身が森壊さないか心配でしかたないんだけどね。
「…うん。(環境保全)頑張ろ。さて、ロックゴーレムは…」
気配察知を使い、ロックゴーレムの位置を把握する。
ふむふむ。前方方向に2体くらいの反応があるね。
「依頼の討伐数は?」
さて近付こうと思ったタイミングで、マリアがそう言ってきた。別に急ぐ必要は無いので、ちゃんと答える。
「最低五体。それ以上倒した場合、追加報酬あり」
「討伐証明は?」
「胴体内部の魔石」
ゴブリンとかだったら右耳とかなんだけど、ロックゴーレムは岩石だからねぇ……だから、討伐証明は胴体内部の中央にある、魔石しかない。
「はい。よく出来ました」
「………」
私は無言で前方のロックゴーレムへと走り出した。いやまぁマリアの考えも分かるよ?情報は共有して、把握しておかないとね。けどマリアだって依頼書見てるんだし……特に、最後の言葉は必要なかったと思うんだ。
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