第2話 親

 目を覚ますとなんだか焦点が合わなくてぼやけた。


 しばらく瞬きを繰り返していると、だんだん目が慣れてきた。どうやらここはベットの上らしい…しかも柵付きの。


 まぁ、転生って赤ちゃんかららしいし、そういうことなんだろうね。


「あぅ。だぅあ」


 うまく発音できない…。

 まぁ、そのうち慣れるよね。すると声が聞こえた。どうやらドアの向こう側かららしい。


「そうか!無事産まれたか!で、どっちだったんだ?」

「旦那様…それが…その…」

「なんだ、ハッキリと言わないか!」

「…女の子です…」

「…っ!そうか…」


 え!?なになに?!

 女の子として産まれちゃいけなかったの?


「我が子として産まれたのだから嬉しいのだが…女では少々荷が重すぎるのでは…」


 あ、とりあえずよろこんではくれてるみたい、でも荷が重いって?

 お、入ってきた。


 旦那様と言うあたり、どうやらこの人が父親らしい。


 なんというか、かっこいい!

 赤髪に同じく赤い目 顔もThe、イケメンって感じ


「マリア、調子はどうだ?」

「ええ、いいわよ」


 うん?マリア?

 声が聞こえた方を見てみると、これまた美人な女の人が寝ていた。

 綺麗な長い銀髪に、翡翠色の瞳の綺麗な人。この人が母親かな?


「この子が、マリアと俺の娘か」

「ええ、とても可愛いでしょ?」

「ああ、マリアに似てとても綺麗だ」

「もう!あなたったらー」


 ……気まずい。 なに?この甘々感。

 居た堪れないので声をあげる。


「あぅ。、ばぶ」


 うん。恥ずかしい。


「あら?お腹がすいたのかしら?ちょっとまってね?」


 ご想像にお任せします。


 赤ちゃんとして絶対にひつようなのだ。他意はない。


 お腹がいっぱいになったからなのか、急激に眠気が襲ってきたので、そのまま意識を手放した。


 ーーーーーーーーーーー


「寝ちゃったわね。」

「ああ。…マリア…その…」

「分かってる。全部聞こえてたもの。それで?どうするつもり?」


 今回産まれた子は2人が待ち続けていた赤子であり、それはとても喜ばしいことなのだが…


 マリアは軽く赤髪の男を睨み付ける。


「そう怖い顔をするな。そうだな。…流産して死んだことにしよう」

「そう。それしかないのね」

「ああ。だが無論この子は俺たちの子供として大切にそだてる。表向きは養子としてな」

「それが、この子のためなのだものね…」



 心配されている当の本人はすーすー寝息を立ててぐっすりと寝ているのだが…



 赤髪の男の名は"ロビン"

 かつて、と呼ばれた男である。


 その婚約者の名は"マリア"

 かつて、と呼ばれた女である。


 この2人は旅をしていたときに出会い、お互いが一目惚れをし、そのまま結婚した。今回産まれた子は2人が結婚してから10年かかって産まれた子だったのだ。


 なぜ、この2人が、勇者と聖女と呼ばれたかについては、まだ秘密にしておこう。



 ただ1つ言えるのは、2人はだということだ。

 それゆえに、その2人の間にできた子供は期待がとても大きかったのだ。

 だから、2人はその期待に耐えられないと考え、死んだことにすることにしたのだ。





 転生した少女の物語は、死んだことにされたことから始まったのだった。

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