ギルド冒険譚:ダークエルフとの全面衝突

「ドラゴン族だと!?あの時に呪いをかけたはずだが......まさか呪いが解かれたのか!?」


 ダークエルフがヴァリアントを見て動きが止まっている。ドラゴン族には相当強い呪いをかけたのだろう。その呪いが解かれるとは思ってもいなかった様子だ。


「呪いを解けた今、お前達に復讐しにやってきた!くらえ!」


 ヴァリアントの巨大な口から猛烈な炎が吹き出た。その灼熱のブレスは一瞬にして周囲を焼き尽くすような熱さを放っていた。ダークエルフ達は魔法のバリアを展開し、炎は一瞬その壁によって遮られたが、その輝くバリアは次第に熱で変形し、割れ目が生じた。ダメージは大きくなかったが、バリアが完全には耐え切れず、ダークエルフ達はダメージをおった。


「くそ、流石に決めきれんか」


 ヴァリアントは次の攻撃の準備をした。ダークエルフも応戦する。ヴァリアントの黒い鱗が太陽の光を反射し、彼の翼が空気を切り裂く音が木々の間に響く中、ダークエルフは巧みな足捌きでヴァリアントの攻撃をかわし続けていた。


「ドラゴンよ、お前にこの戦いに勝ちはない!」


 ダークエルフが鋭く叫びながら、彼の手に握られた矢を一気に放った。しかし、ヴァリアントは素早く翼を広げ、その俊敏な動きで空中を舞いながら矢を回避した。


 ヴァリアントは地面を強く叩き、岩石が砕ける音が轟く中、地面の岩を盾にして前進した。


「我だけではない!仲間達がいるのだ!」


 彼の声が木々を震わせた。


 ダークエルフ達は影から影へと飛び移り、短剣や弓を手に取った。


「巧妙な技だけが戦いを決めるのではない!」


 戦いの中、木々の枝が折れ、土煙が立ちこめる。両者の間には息をのむような緊張感が漂っていた。彼らの動きは完全に互いの行動を読むようになった。


「お前達の力はこんなものなのか!」


 ヴァリアントが咆哮しながら巨大な岩を持ち上げ、それを投げつけようとすると、ダークエルフは機敏に反応した。


「力とやら、見せてやろうかしら?」


 ダークエルフの内の一人が微笑むと、樹木を駆け登り、高みから的確な矢を放つ。

 激しい戦闘は一瞬の間に高まり、互いの力と技術が入り混じりながら、森の中で轟音を立てながら続いていった。


「俺達を忘れてもらっちゃ困るぜ!」


 ヨイチ達が戦闘に参加する。


 ヨイチは剣を手に、ダークエルフの群れに向かって突進した。


「冥府の断罪!!」


 剣を振り下ろし、ヨイチの剣が鋼鉄をも貫くような一撃を放つ。彼の声が森に響き渡る中、ダークエルフ達は集団で矢を放ちながら迎え撃った。ヨイチは剣舞を繰り広げ、矢を弾き返しながら前進する。


「そんな矢怖くもねぇよ!」


 ヨイチとダークエルフ達が相手に損傷を与えつつも、致命傷を負わせることができないまま戦い続けていた。ヨイチは戦闘に息を切らし、ダークエルフ達も互いに合図を交わしながら息を整えつつ、再び攻撃の機会を窺っていた。


 戦いの音と共に、ダークエルフ達の攻撃と、ヨイチの剣が空気を裂く音が交錯していた。この死闘は双方に多大なエネルギーを消耗させつつ、どちらも優位を確立することができず、長期化していた。


 別の場所ではルナとイザベラが共に立ちはだかった。ルナはゴブリンのアンデット軍勢を呼び覚ました。一方、イザベラは杖を操り、スキルを発動する。


「闇への誘い!」


 イザベラの杖から放たれた漆黒のエネルギーはゆっくりと螺旋を描きながら上昇し、森を覆い尽くすように広がっていく。周囲には静寂が広がり、森の中にはイザベラの魔法が引き起こした漆黒の波動が支配していた。ダークエルフ達は闇の中でルナとイザベラへの狙いを定めることもままならないようだった。


「ルナ、このままケリをつけるよ!」


 イザベラの合図と共にイザベラはスキルの準備を始める。そしてルナのアンデット達はダークエルフ達へと向かって突撃した。


 ルナはアンデット達にダークエルフ達を取り囲むように指示する。


「みんな!ダークエルフ達を取り囲んで!」


 彼女の声が冷徹に響き渡る中、アンデット達はダークエルフ達を包囲し、狙いを定めて攻撃を仕掛けた。


 一方のイザベラは杖を操り、闇の中からダークエルフ達を欺きつつ、二つの呪文を同時に詠唱し始めた。


「シャドウフレア......アビススラッシュ......」


 イザベラの声が深みを増し、森の中で彼女の呪文が響き渡る。杖から放たれたエネルギーの半分は炎のエネルギーとなり燃え盛り、もう一方は暗黒の刃が輝きを放っていた。彼女の杖から放たれた炎は急速に膨れ上がり、森を照らし出す。同時に、もう一方の放たれた暗黒の刃が、暗闇の中を螺旋状に敵対するダークエルフたちに向けて舞った。


 シャドウフレアの炎は燃え盛り、ダークエルフたちを包み込む一方で、アビススラッシュの暗黒の刃がダークエルフたちに迫る。刃は闇の速さで彼らを斬り裂き、暗黒の嵐を巻き起こした。


「ルナ!やっちゃって!」


「はい!霊魂強化!」


 彼女のアンデッドたちは怪しく輝く霊的なエネルギーを纏い、力強くその姿を変えていく。アンデッド達が力を得てダークエルフ達に向かって突進した。彼らは骸骨や霊魂の姿を纏い、驚異的な速さで敵に襲いかかった。


 アンデッド達はダークエルフたちにダメージを与えるが、彼らを撃破することはできなかった。ダークエルフたちは巧みな機動力でアンデッド達の攻撃が致命傷にならないように避ける。


「何か変です!ダークエルフ達がスキルを使ってきません!」


 ルナが違和感に気づき俺達に知らせる。確かにダークエルフ達は弓や剣で攻撃してくるがスキルは使ってこない。ヴァリアントが何かに気づく。


「こいつら呪いの呪文の準備をしてるぞ!」


「お前ら早くレオの側へ来い!」


 ヨイチが皆に声をかけ俺の側に来るよう指示をする。ヴァリアントは一瞬でヒューマンへと変身し、走って俺の所へとやってくる。ルナとイザベラも同様に俺の側へとやってきた。


「今更気づいたか、ヴァリアントとその仲間よ。だがもう遅い!」


 ーー呪縛の終焉


 ダークエルフの長らしき人物が呪文を唱える。呪いは、森全体に広がり、呪文の言葉が森の木々を震わせ、空気を歪ませるように感じられた。


「これでお前達も終わりだ!」


 ダークエルフの長が叫ぶ。


「それはどうかな?頼むぞ......」


 俺は魔王の指輪を見た。


 呪縛の終焉が発動した瞬間、魔王の指輪は光を帯び始め、ダークエルフの呪いのエネルギーを引き寄せるように輝いていた。指輪が呪いを取り込もうとすると、まるでそこには無数の流れるような影が集まるかのように見えた。


 呪いの力が指輪に集中し、光の輝きはそのまま暗闇へと変わっていくようだった。魔王の指輪はダークエルフの呪いを次第に吸い込み、その影響は指輪に閉じ込められていくように感じられた。


 指輪の輝きは一層強くなり、その中に呪いのエネルギーが侵食していく様子が見て取れた。俺は静かに指輪を見つめ、周囲の仲間たちも彼の行動を注視していた。


 ーー強大な呪いに抵抗します。同時に封印が一部解放されますーー


 MP +250 MDF+100 INT +360 → MP +500 MDF +260 INT+680 ※この能力は一部封印されています


 スキルの威力を4倍にし、範囲を3倍にする。 ※この能力は一部封印されています


 致命傷を受けても一度だけ無効化しHPを全回復します。クールタイム12時間 ※この能力は一部封印されています


 全ての属性攻撃から35%のダメージを無効化する。※この能力は一部封印されています


「なっ!呪いが無効化されただと......?」


「封印解除の手伝いありがとな!俺達に呪いは効かないんだよ!ケリをつけるぞダークエルフ!」



「汝達、時間を稼いでくれ!奴らはダメージを負っている。トドメを必ずさせる魔法があるのだ。その魔法を汝達に唱えている間の時間を稼いでほしいのだ」


「任せておけ!」


 俺達は時間稼ぎのため総攻撃を開始した。


「ヨイチ、いくぞ!」


「あぁ!」


「焔帝螺旋撃!」 「冥府の断罪!」


 俺達は同時攻撃をした。ダークエルフ達に大ダメージを与えることに成功した。


「冥界黙示録......魂の収穫ソウルハーベスト!」


 アストライアは鎌を手にし、その刃先を敵に向けていた。鎌の刃は異様な輝きを放ち、戦場の中で冷たい光を放っていた。彼の目は決意に満ち、鎌を振るう姿勢は凛々しく、その姿はまるで死神の如きものだった。


 アストライアは鎌を振り下ろした。彼の鎌が闇を引き裂く音が轟いた。鎌の斬撃が敵の身体に突き刺さり、深い傷が開かれると同時に、暗黒のエネルギーが漏れ出した。


 鎌を振るうアストライアの身体は力強く、その刃は敵の肉体を切り裂いていく。暗黒の鎌が敵を支配し、その身体は断片化され、魂が霊魂として現れ始めた。彼の鎌は魂を捕らえ、アストライアに取り込まれていく。


「ステータスありがとうな、ダークエルフ!」


 アストライアは鎌を下ろして決めながら言った。そしてヴァリアントの魔法の準備が完了した。


「汝達助かった。ダークエルフよ。復讐の時間だ!虚無の咆哮ヴォイド・ロア!!!」


 ヴァリアントの胸中に魔力が渦巻き、その眼光は宇宙の無限の闇を映し出していた。彼の体はエネルギーで輝き、周囲の空気は静まり返るほどに不穏なまでの緊張感で満たされていく。ヴァリアントの声が響き渡ると同時に、森全体が宇宙の底から湧き出るような暗黒に包まれていく。彼の口から放たれる咆哮はまるで虚空そのものを呼び寄せるかのようなものであり、その威力は圧倒的なものだった。


 咆哮は広範囲に広がり、ダークエルフの存在を消し去るような闇の波が森を覆い尽くす。闇は無限の深淵を連想させ、その存在は物質そのものを引き裂くかのような強烈なエネルギーを帯びていた。


 森の中では、敵の姿が虚無に飲み込まれていく様が見て取れる。その姿はまるで宇宙の彼方へと消え去るように感じられ、残された空間は無に等しい存在になりつつあった。


 ーークエストクリア!報酬をヴァリアントから受け取ってくださいーー


 クエストクリアを告げるシステムの声が聞こえた。


「やっと初めてのギルドクエストクリアだ!」


 ヨイチが喜びのあまり叫ぶ。


「汝達のお陰でダークエルフ達へ復讐ができた。礼を言う。これはお礼だ、我が持っていても意味がない。汝達に授ける」


 ギルドメンバーは各々ヴァリアントから武器を受け取った。


「ハルトよ、汝は魔族だな......魔族特有の魔力を放っておる。隠しているつもりだろうが我には隠しけれないぞ」


「流石だな、ヴァリアント」


「汝に合う武器を我は持っていない。そこで代わりに渡したいものがある。これを受け取ってくれ」


 ヴァリアントは俺に漆黒の卵を渡した。


「それはドラゴンの卵だ。きっとこれからの冒険に役に立つだろう」


「どうしてこれを俺に?」


「その卵からは我と同じ黒龍が産まれる。黒龍は闇のエネルギーや魔力に触れる機会が増れば増えるほどより強くなるのだ。我よりも汝の方が闇のエネルギーも魔力も強くなるだろう。汝に託す」


「ありがとうヴァリアント。必ず強く育てるよ」


 俺達はヴァリアントから各々授けられた。この黒龍は後にシュバルツリベリオンを強くした要因の一つとして語り継がれるのだが俺たちはまだ知らない。

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