ギルド結成の日: 未知なる領域への挑戦

 俺はバイトを終え家に帰ってきた。エリカが笑顔で出迎えてくれた。


「おかえりお兄ちゃん!」


「ただいまエリ!もう俺腹ペコだよ」


「晩御飯もうできてるから食べよ!」


 俺達はいつも通り一緒に晩御飯を雑談をしながら食べた。その後俺はヨイチに電話をかけた。


「今帰ったぞヨイチ!ギルド作りに行くか」


「遅かったなハルト。だいぶギルドハウスは取られたがなんとかなるだろう。ログインして待ってるぞ」


 俺はログインしてヨイチに合流した。ヨイチがギルドの作り方を教えてくれた。


「まずは王都アルケイヤに向かおう。そこでギルドを作ることができる。王都へはあのゲートを使っていくんだ。さっさと行こう」


 俺はヨイチに連れられてゲートをくぐりアルケイヤへと向かった。ゲートをくぐると、幅広い大通りが王都の入口に続いていた。鮮やかな旗が風に舞い、彩り豊かな看板が店々を飾っていた。様々な種族の冒険者たちの姿が行き交い、賑やかな雑踏が街を満たしていた。俺は人間以外の種族のプレイヤーを見るのは初めてだった。


「その反応は異種族を見たのは初めてだな?一応解説しておくと俺たちがさっきまでいた場所はヴェレリアンと言い人間以外の種族は入ってこれないんだ。こんな感じで各種族限定の街があるんだ」


 ヨイチは分かりやすく説明してくれた。そして道を示しながら、俺を王都の中心部へと導いてくれた。途中、立派な城壁に囲まれた宮殿が見え隠れし、その壮大な姿は都市の誇りを象徴していた。


 街路には様々な店が軒を連ねていた。武器屋、装備店、錬金術師の店など、様々な冒険者の必需品が取り扱われていた。そして、それらの店の間にはカフェや居酒屋があり、冒険の疲れを癒す場所として活気づいていた。


「この先が冒険者ギルドだ。そこでギルド設立の手続きを進めるんだ」


 ヨイチが教えてくれた。その場所は大きな建物で、扉には鎧をまとった冒険者のエンブレムが飾られていた。

 ギルドの扉を開けると、広々としたホールが広がり、数多くの冒険者たちが賑やかに情報交換をしていた。俺達は受付へと向かう。


 受付のスタッフが親切な笑顔で俺たちに声をかけた。


「本日はどうされましたか?」


「ギルド作成の手続きに来ました」


 俺が答えると、スタッフは快く頷いた。


「承知しました。ギルドを立ち上げるのですね。まずはギルドの名前を教えていただけますか?」


 俺はギルド名についてヨイチに相談した。


「ギルドの名前、何かアイデアあるか?」


 俺が尋ねると、ヨイチは考え込んだ表情を浮かべた。


「んー、特に何もないな。お前のギルドなんだから、任せるよ」


 ヨイチが笑いながら答えた。


「お前考えるのめんどくさいだけだろ......」


「バレたか!でもお前のギルドなんだからお前が決めるのは普通だと思うぞ?」


 ヨイチは笑いながら答えた。


「わかったよ......そうだなぁ」


 俺はギルド名を考えた。ギルドを使って魔族側についた職業の人を集める予定だけど魔族ってことがバレるのは絶対だめだ。それを加味して考えるなら


「シュバルツリベリオン...なんでどうだ?意味は黒の反逆者達だ」


 俺が提案すると、ヨイチは興味深そうに考え込んだ表情を浮かべた。


「良いと思うが、これだと俺みたいな職業ばかり集まるぞ?良いのか?」


 ヨイチが懸念を示すと、俺は微笑んで説明した。


「実はそれが狙いなんだよ。理由は追って話すよ」


 その時、再び受付のスタッフが話しかけてきた。


「ギルド名の決定、お済みですか?」


 スタッフが訊ねると、俺は自信を持って答えた。


「はい、『シュバルツリベリオン』でお願いします」


 スタッフは笑顔で頷き、ギルド名を登録してくれた。そしてスタッフが続けた。


「次はギルドマスターとサブマスターの登録です」


「ギルドマスターがレオンハルト、サブマスターが......ドングリでお願いします」


「なんで嫌そうなんだよ!」


 ヨイチが大声で叫んだ。


「登録完了しました。最後にこちらをどうぞ」


 スタッフは俺に一つ鍵を手渡してくれた。


「ギルド創設おめでとうございます!これはギルドに一つしか発行されない鍵です。ギルドハウスを選ぶ際に使用します。慎重にお選びくださいね!」


 スタッフが祝福の言葉と共に鍵を手渡した。


 ーーシュバルツリベリオンギルドが設立されましたーー


「よし、ギルドも作れたしギルドハウスを探しに行くか!」


「そうだな!レオ早く行くぞ!」


 俺とヨイチは、ギルドハウスを選ぶために、話し合いながら王都の中を巡り始めた。だが探し始めるのが遅かったようだ。ほとんど目ぼしいのは別のギルドに取られている。


「くそ......やっぱり他のギルドに取られてるな......どうする?レオ」


「そうだな......一度都心から離れてみよう。隠れ家的なのがあるかも知れない」


 俺達は都心から離れて探索を始めた。だがそううまくはいかない。ヨイチは疲れたようで壁にもたれかかっていた。その時、ヨイチが何かを感じたようで、壁面を軽く押してみた。


「ん?なんだこれ。レオ!こっちに来てくれ」


 ヨイチが何かを発見し、俺のことを呼ぶ。


「ここの壁なんか変なんだよ。見てみろ、ここ押せるぞ」


 ヨイチが壁に手をかけ、軽く押すと、壁が驚くほど簡単にくずれていき、そこから隠し通路が現れた。


「なんだここ......行ってみるか?」


 ヨイチが俺に尋ねる。


「もちろんさ。行こう」


 俺達は探求心をかき立てられながら、隠された通路を進んでいく。通路は長く、闇が広がっていた。そして通路を抜けるとその先には古びた魔法陣が彫られた壁や、奇妙な記号の彫り込まれた広間が広がっていた。


「この魔法陣......どこかで見た気が......」


 俺は記憶を探るようにした。そして、フィンに連れられた隠し部屋で見た魔法陣だと気付いた。


「ここはかつて魔族がいたようだな......」


 俺が口にすると、ヨイチは驚きの表情を浮かべた。


「なんで分かるんだよ?」


 ヨイチが疑問そうに尋ねると、俺は簡易的な説明をした。


「これを俺は魔族が住む魔界で見たことがあるんだ。魔界ではこっちの世界は現界と呼び、ここ現界にも魔族がたくさんいるんだよ」


「ちょっと待ってくれ...状況に追いつけない」


 ヨイチが戸惑うと、俺は謝りながら言った。


「そうだろうな。でもとりあえず今は飲み込んでくれ。後で詳しく説明するから」


「必ずだぞ?」


 ヨイチが不安げに聞くと、俺は頷いた。


「とりあえずここを探索しよう」


 俺がそう言うとヨイチは頷いた。そして俺達は神殿の探索を始めた。神殿の中には、薄暗い廊下が広がり、その先には様々な扉があり、その分様々な部屋があった。魔法陣や神秘的な絵画で飾られた部屋の扉は、複雑な模様が彫り込まれたものや、宝石で装飾されたものなど、様々なデザインが特徴だった。


 俺達は一つ一つの部屋を探索していった。その中には、古代の魔法書が保管されているような書庫や、祭壇のある神聖な空間、工房や実験室など多岐にわたる部屋が存在した。それぞれの部屋には、古い手稿や魔法のアーティファクトが置かれ、神殿全体が神秘的な力に満ち溢れているような雰囲気が感じられた。ある程度探索を終えた時ヨイチが俺に興味本位で言ってきた。


「ここギルドハウスにできないか?」


「ここをか?できる気がしないがとりあえず試してみるか」


 俺はギルドハウスの鍵をインベントリから取り出した。


 ーーギルドハウスの鍵を使いますか?一度きりの選択なので慎重に選んでくださいーー


「マジかよ......使えるのか。もちろん使うさ!」


 ーーギルドハウスの鍵が使われました。これよりここはシュバルツリベリオンギルドのギルドハウスですーー


 システムの声と同時に神殿全体が白い光で包まれた。


 ヨイチは喜びを隠せずに笑った。


「やったぜ、レオ!これでギルドを始められるぞ!まずはメンバーだな!確かネクロマンサーの子がいるんだっけ?」


「ああ、今から連絡してみるよ」


 レオンハルト:ルナ今大丈夫か?


 ルナ:どうされましたか?


 レオンハルト:実はクランを作ったんだ。ルナに加入して欲しくて連絡したんだけど入ってくれるか?


 ルナレオさんのクランなら喜んで入りたいです!でも:私なんかでいいんですか?


 レオンハルト:もちろんさ!招待状送るな!


 ルナ:ありがとうございます!


 ーーシュバルツリベリオンにルナが加入しましたーー


「これでとりあえず3人だな」


 俺が呟くと、ヨイチは頷いた。


「そうだな、それじゃ本格的にギルメン探しを始めようか!」


 ヨイチはやる気満々だった。俺達は神殿を後にし、一度王都へ戻ることにした。このギルドメンバー探しは、多様性と強さが融合するギルドへの門出であり、未知なる冒険の幕開けだった。

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