魔界の訓練巡り:暗影の森での訓練 Ⅲ

 ヴェラが手料理を作るために準備を始めた。彼女の手際の良い動きは、まるで魔法のように滑らかで、調理器具と材料が彼女の意のままに動くのを見て、俺は見惚れていた。


 しばらくして、ヴェラは豪華な食事を用意してくれた。彼女の手料理は、見た目も美しく、味も絶品で、俺は感動した。


「美味しいですね、ヴェラさん。こんなに美味しい料理を作るなんて、本当にすごいです」


 ヴェラは微笑みながら言った。


「料理も魔法の一つです。料理を通じて、魔力のコントロールや感覚の鍛錬ができます。特訓だけでなく、食事も大切な一環です」


 俺はヴェラの言葉に納得し、しっかりと食事を楽しんでいた。そして、体力を回復した後、再び試合に挑む覚悟を決めた。


 ーー新スキル影魔法を習得しました。ステータスを確認してくださいーー


 俺は試合に挑む前にステータスを確認することにした。


「ステータスオープン!」


 名前: ハルト(魔族)

 LV16: HP 60 + 50, MP 85 + 50, ATK 52 + 50, DEF 53 + 50, INT 52 + 50, MDF 53 + 50, AGI 55 + 50, LUK 51 + 50


 パッシブスキル 魔族の復讐 (LV1):魔族専用スキル。魔族以外の種族に10倍のダメージを与える。与えるダメージに追加で50のダメージが付加される。


 復讐に燃える者 (LV1):体力が0になる時1で踏ん張り攻撃力が2倍になり、全てのスキルのクールタイムを解除する。


 デーモンスキン: 魔族専用スキル。自身のMDFに比例して被ダメージを減らす。


 称号 孤高の魔族: 全ステータス+50


 初代魔族プレイヤー: 魔族からの好感度が最大になりる。魔族に対する信頼度が向上し、特別な報酬が獲得できる。


 古の魔王の子供: 全ての能力上昇が10倍になり、特殊なスキルを得ることができる。ただし必要な経験値量が3倍になる。


 影の使者: 影魔法のスキルを向上させ、新たなスキルを習得する。


 スキル ダークブラスト (LV1): MP-5 クールタイム 3秒 ダークエネルギーを集めて放つ攻撃魔法。相手に闇属性のダメージを与える。


 ブラッドラスト (LV1): MP-6 クールタイム 35秒 相手からHPを吸収するスキル。ダメージを与えながら自身のHPを回復する。


 ダークシールド (LV1): MP-10, クールタイム 15秒ダークエネルギーで作られたシールドを展開し、一定時間DEFを大幅に上昇させる。


 影魔法(LV4): 影を操りより高度な戦闘をすることができる。


 影刃撃 (LV1): MP-10 影を具現化し、武器に変える。この影武器は闇のエネルギーでできており、通常の武器よりも強力である。


 闇の幻影 (LV3): MP-15 周囲に幻影を生成し、敵を惑わす。これにより、敵から一時的に不可視となり、敵の攻撃をかわすことができる。

 

 闇の縛り (LV2): MP-20 敵の足元に影を具現化して、相手を束縛する。これにより、敵の行動を一時的に封じ、攻撃を防ぐ。この束縛は時間とともに解ける。


 闇の追撃 (LV3): MP-25 瞬時に影の中に身を隠し、敵の後ろに瞬間移動する。敵への奇襲攻撃が成功すると、相手の防御を無視してダメージを与える。


 俺は新たなスキルと強化されたステータスを見て驚いた。俺は自分の力がさらに向上し、戦闘での能力が格段に高まったことを実感した。影魔法によるスキルの追加は、俺の闘志を燃え上がらせた。


「ハルト殿、そろそろ試合を始めましょうか」


「はい!始めましょう!」


「それでは始めます。最初から手加減しませんよ?」


 闘技場の中で、ヴェラとの対決が幕を開けた。影魔法が漂う雰囲気は緊張感に包まれ、まるで異次元のような空間だった。彼女の緑の瞳が闘志に燃えていた。


最初の攻撃はお互いの探り合いから始まり、闘技場の中には濃い影が踊り、幻影と実体が入り混じった。ヴェラの攻撃は精密で破壊的であり、俺はそれを完全にかわすことはできなかった。


最初の攻撃からしてヴェラの優位は明白だった。影魔法の一撃は精密かつ破壊的で、俺は迎撃する間もなくその嵐のような攻撃を受け続けていた。俺の身体は影魔法の攻撃によってねじ曲げられるように痛めつけられていった。ヴェラの一撃は精巧かつ威力があり、闘技場の中は完全にヴェラの独壇場だった。俺はあらゆる角度からヴェラの攻撃をかわそうとしたが、その激しい攻撃の前に、まるで葉っぱのように弾き飛ばされるような感覚に襲われていた。


「くっ......強すぎる、歯が立たない」


俺はダークシールドを発動した。しかしダークシールドはその彼女の攻撃を跳ね返すにはおよばず、次第に破られていく。その結果、俺の身体は傷だらけになり、息も荒くなっていた。俺の表情は苦痛と決意で歪んでいた。


「ぐはっ......スキルが破られた、このままじゃダメージを与えることができない」


闘技場中にヴェラの影魔法が張り巡らされているような感覚だった。俺は身を守るために必死で動いていた。ヴェラの攻撃は無慈悲にも俺の体を襲い、彼の激しい抵抗もむなしくその攻撃は続いた。


「ハルト殿、このままでは終わりませんよ?」


ヴェラの攻撃は一向に止まない。俺は反撃する糸口を見つけることが出来なかった。しかし、ヴェラの言葉が闘技場に残り、その重みは俺の心に深く刻まれていた。俺は息を整え、全身に走る苦痛を押し殺しながらも、ヴェラに対する戦いの意志を揺るがさないように保ち続けていた。


俺は一瞬立ち止まり、深呼吸をした。瞳には、ヴェラに対する新たな見解を模索するような輝きが宿っている。俺は闘志を燃やし、ヴェラに立ち向かう。


「今だ!」


少しだけ隙間を見つけたように思われた、しかしヴェラにはそれでも届くには至りませんでした。


「その程度では私に攻撃するのは不可能ですよ?ハルト殿」


俺はその隙間にほんの少しの可能性を感じつつも、まだ反撃の機会には遠く及ばないことを悟っていた。


俺の視線は、闘技場の中を逡巡するように走り、ヴェラの影魔法が織り成す模様を観察した。俺は一瞬の隙間を窺うために、自分自身の姿勢を調整し、相手の動きに反応するように心がけた。


闇の中で、瞬間の違和感が俺の感知技術に反映され、俺はほんのわずかな瞬間を突き止めた。ヴェラの攻撃パターンに微妙な変化が生じ、それが俺にとっての可能性を示していた。


少しずつ、俺は動きが変わり始める。影魔法によって彩られた闘技場の中、俺の身体は敏捷に動き、ヴェラの攻撃を避けるためのリズムを掴もうとしていた。俺はステップを踏むごとに、闇の中の微かな光を追い求め、ヴェラの攻撃に対して一瞬の隙間を見つけるために全身を使って動いた。


俺の体が、その隙間を探る為に曲線を描き、瞬時の避ける動作を繰り返していました。その闘いは、まるで無音の交響曲のようでありながら、俺の心臓は轟音のように鳴り響いていた。


「だいぶ動きが良くなってきましたね、ハルト殿、そろそろ本気を出しましょう」


彼女の影はより強力になり、まるで闇そのものが生き物のように動き出したかのようだ。


「くそ......まだまだ遠いのか......それでもっ!」


俺はそれでも抗い続けた。静寂が緊張感をより一層際立たせていた。ヴェラの影は闘技場中に張り巡らされ、次第にその力が増していく様子が窺えた。


「避けてみせる!」


俺の視線は敏感にヴェラの動きを追っていた。俺の動きは更に少しずつ細やかになり、俺の足取りは敏捷に変わっていった。影の中で、俺はステップを踏むごとにヴェラの攻撃を予測し、その隙間を探っていた。


俺の動きは次第にリズミカルになり、影魔法の奥深さに対する彼の洞察力が光っていた。


「もう一歩、そこにチャンスがある!」


俺の声が少し張り詰めた瞬間、俺の動きは更に丁寧になり、ヴェラの影の攻撃をかわすように変わっていく。俺はその場で静かに息を整え、影魔法の中に生じた最小限の隙間を見逃さないようにしていた。


決断の瞬間、部屋の空気が凝り固まったように感じられた。まるで舞うように影の攻撃をかわしていく。目が異次元に向かっているかのように感じその中で俺は何が起こっているのか完全に把握していた。


深い息を吐き出し、集中力を最大限に高めた。その時、周りの空気が凍りつくほど静かになった。影魔法の中に隙間が生まれた瞬間、俺はその隙間に飛び込む決意をした。一瞬を逃さず、ヴェラが無防備になる隙を探し出すことができた。


そして、俺は幻影を操り、ヴェラの背後から現れた。


「くらえぇええ!」


目の前で幻影が踊り、攻撃の狂乱が起こり、ヴェラにダメージを与えた。


「よくやりましたねハルト殿、これにて私の訓練は終了です」


「やった......やったぞ!」


 俺は安堵で床に倒れ込んでいた。そして気を失ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る