第2話
俺の名前はシン。今、隣国の大商会カルテル商会の一人娘の暗殺を依頼され、この隣国の地ラグナベルクに足を踏み入れている。
なぜこのような暗殺の依頼が出されたかというと、どうやらカルテル商会の一人娘に化け物が生まれたらしい。というのもその娘が大気中の魔力を取り込めるという異端な体質らしい。
普通はそんなのあり得ない。魔力というのは、自分の体内で作り出し蓄えるものだ。
なのにこの娘は、魔力がなくなったら大気中の無限の魔力を取り込んで蓄え直すことができる。
まあ、こんな奴は中々生まれないし、もしたくさん生まれていたら魔法の概念が変わってしまう。生まれるとしても精々100年に一人くらいだろう。
今回の良くない所は大商会にそんな娘が生まれてしまったことだ。大商会といえば今でも、色んなところに大きなパイプを持っていたらお金だって沢山あるそんな成功者のところにさらにそんな跡取りがいたとなればこれからの商会全ての上に立つことができると言っても過言ではない。
今回の依頼はそれを良しとしないラグナベルクの商人からの依頼だ。
そんな商人が俺に依頼してきたのには、理由がある。
それは、その娘が中級魔術までしか打てないからだ。
化け物と言ってもまだ11歳のガキだ。まだ魔術の訓練を始めて多くても5年ってところだろう。
それに、大気中から無限の魔力を得ると言ってもまだ魔力容量も完璧ではないから、一度に蓄える魔力には、限度があるはずだ。それを鑑みて中級魔術までしか打てないと確信している。
そして俺は、中級魔術なんて効かない暗殺者疾風のシンだ。
だから選ばれた。
俺からしてみればたとえ中級魔術を無限に撃つ娘だとしても簡単に殺すことができる。
そして今絶好のチャンスが訪れていた。
今まで家に引きこもっていた。娘が一人で街に出ている。おおかた家にいるのが暇になったとかだろう。
まあ、どうでもいい。これで確実に殺すことができる。
「よお〜、ラーナ・カルテルこんな一人でいちゃダメじゃねーか」
大商会の娘ラーナ・カルテルが誰も通らないであろう路地に入った瞬間声を掛ける。
こんな所を通るとしたら道に迷っているバカくらいだろう。
「だ、誰あなた?」
ほお〜さすが大商会の娘、少し怖がってはいるが鋭い目つきでこちらを睨んできやがる。普通の女のガキなら俺のような男が睨みながら歩いてくるだけで震えたうさぎみたいになるのに、なかなかやるじゃねーか。
「別に、今から死ぬやつに教えるのとなんざ何もねーよ」
「チッ。どうせどこぞの商会の差金とかでしょ。」
この何の情報ない中でここまでわかるのか。こいつこういう場面になれてやがるのか。
いや、これは違うな。
ただこいつが11歳とは、思えない頭をしてるだけか。
これは、俺みたいな暗殺者を送るのも頷ける。
じゃないと返り討ちに合うだけだな。
「わかってんじゃねえか、まあそういうことだから死んでくれ。」
そう言って疾風のシンが飛び出した。
そのスピードは、名前の通り疾風だった。凄まじいスピード、衰えない加速で距離を詰める。
その速度にラーナの反応は遅れてしまう。攻撃魔術は展開出来ず、防御魔術だけになっていた。
そこにとてつもなく重い蹴りが飛んでくる。
「ほおー、このスピードを防ぐか。」
防いだと言ってもさっきの一撃で展開した防御魔術はズタボロになっている。
「この蹴りのどこが暗殺者なのよ。あんた、格闘家の方がまだ納得なんだけど。」
「そりゃあそうだろうな、俺は、魔術師専用の暗殺を生業にしている。このスタイルの方が魔術師には効くからな」
魔術師は魔法で全てを解決する。そんな魔術師の弱点は近づかせてはいけないことだ。近づかせてしまうと、接近戦に持ち込まれてしまう。流石にそうなると魔術師ではどうにもできなくなってしまう。
「じゃあこれは反応できるか試そうじゃねえか」
ラーナは魔術を発動しようとした。新しい防御魔術と攻撃魔術を。
だが、結果として全然間に合わなかった。防御魔術がもう少しで完成するというところで、すでに相手の手が自分の手首を掴んでいた。
詰んだ。
ラーナの脳内にはその単語が浮かんだ。
「終わりだな。じゃあ死ね!」
疾風のシンは掴んだ手と反対の手を振り上げた。
「そこまでにしてもらおうか、おっちゃん」
振り向くとそこには、腕を組み、まるで強者特有のオーラを出すガキが立っていた。
よ〜〜く見ると足が小刻みに震えているのは誰も知らない・・・・・
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