第212話 強くなっている

宰相は魔剣メイドを直接敵の目の前に飛ばしたようで早速水の人型へ剣を構えていた。

私に水の人型がバレたから隠れる気も無いのか、ローブも何も着けずに佇んでいる。


「アレがカリルの言ってた水のやつですか」


戦闘は魔剣メイドの一撃から始まる。

私と戦った時のように腕で受け止めると思っていたが水の人型は避けることで攻撃を回避していく、その際には一度も攻撃を仕掛けることはない、ただひたすらに攻撃を避けていた。


「……これは魔法じゃないな」

「魔法じゃない、ですか?」

「えぇ、あのように水に形を与えて動かす事はそう難しいことではありません。

このように簡単に出来ます」


指をヒョイと動かすことで宰相も水の人型を簡単に作り出した。


「ですが精密な動きをさせるには術者と魔力の繋がりが必須です、それは私が怠惰の力を使っても完璧に繋がりを無くす事は出来ないでしょう。

ですが映像に映るアレは魔力の繋がりがありません。

精霊のような生き物であれば可能でしょうが、洗脳や使役で操っていた場合はそれも繋がりを見つけられますし、精霊が自らの意思で動く事もまずありません」


精霊は動いたとしても遊びだ。

しかも飽きっぽい、1度やれば飽きたと2度とやらなくなり遊びが続く事は無く、あの水の正体が精霊であるはずがはない。


「ならアレはなんなのか、考えられる事はそう多くありませんよね?」

「……何者かの魂、でしょうか?」

「それもありますが魔物という線もありますよ」


おっと、先程出た話に引っ張られすぎた。


「とりあえずアレは独立した意思を持つ存在であること、そしてなんらかの方法で死なない存在である。

という事でいいですね?」

「はい」


こうして考察をしている間も戦闘は続いている。

状況として然程変わらず、魔剣メイドの攻撃は全て避けられ掠りともしていない。隣ではカチューシャを取り出し始めていた。


「……やっとか」


魔剣が大技を当たり前のように避けられたのち、水の人型が机を持ち上げ投げ始めた。


「おお〜、やっと魔剣の威力が見れましたよ。机を両断ですか」


煽りとしか思えない言葉を聞きながら少しだけ変化した戦闘を見守っている、すると机を投げている方向が魔剣メイドから微妙にずれていることに気付いた。

その違和感を感じたとき、ミナと食事をしている際に話しかけてきた学生を思い出した。


「先ほど道を聞かれたので答えたので、あの部屋に第三者がいるかもしれません」

「助けたいですか?」

「いえ、そこまでは……ただ、怪我をすることで面倒なことになるのなら助けた方が良いかと」

「貴族ですか?」

「私の記憶にないので弱小貴族家か平民です」

「じゃあ無視で」


姿が見えないけど投げられた机はほぼ全て同じ方向に飛んでいることから、机の下にでも隠れているのだと思う。

まぁ、怪我をしないことを祈ることぐらいはしておく。


「それにしても盛り上がりに欠ける勝負ですね、腕の1本や2本飛んで欲しいんですけど」

「飛んで欲しいかはともかく、確かに盛り上がりませんね」


あれだけ大口叩いていたのにも関わらず、攻めきれずにこの展開の遅さ。

間違いなく罰がさらに重くなったことだろう。


「【ちゃんと戦いなさい、出なければ気持ちの悪い貴族家に派遣しますよ】」


今重くなった。

技術の塊を派遣なんてありえない、本気では無いだろうが魔剣メイドを顔を青くして更に攻撃を激しくしている。


技術も何もない剣を振る速度と力に全てを注いだ猛攻に、流石に避けるだけの余裕が無くなったのか水の人型の右肩付近へ剣が命中、そのまま左足の方まで切った。


「「…………」」


私が首元をナイフで刺しただけで消滅した相手だ、あの攻撃が通った時点で消滅は間違いないだろう。

展開の遅すぎる戦闘の割にはなんとあっさりとした決着か、正直に言ってつまらなすぎる。


「おや?」


二つに別れた水は地面に広がる事はなく、再び人の形を取り戻していた。


「カリルの報告ではナイフで軽く刺しただけで消滅した……少なくともカリルが倒したヤツよりは強いかもですね」


完全に倒したと油断していたのだろう、魔剣メイドの顔に人型の拳が当たり地面に座り込んだ。


拳を振り抜いた姿勢から水は形を変え、球体となり空中に浮いた。


浮いていた球体は急激に収縮し、そして爆発。

それは一瞬のことであり、部屋中の机や椅子はめちゃめちゃ、避けることができず爆風を喰らった魔剣メイドの体はボロボロになっている。


「終わったようなので治療してきます、念のため学院内部の確認をお願いしても?」

「もちろんやっておきます」


宰相の魔法によって部屋に転移する。

魔法で見ていたように部屋は荒れ果てていた。


「生きてるか?」

「『は、はい……この身体が、頑丈、だったおかげでなんとか…………』」

「そうか、君に効くかわからないが魔法薬を置いておく」

「『ありがとう、ございます……』」


念のため居るであろう生徒の確認をしておく。


「大丈夫か?」

「…………」


隠れていた机に穴が複数開いていたこともあり最悪の事態を想定しており、予想通り怪我はそれなりに負ってはいたものの生きてはいた。


さて、被害は少ないが学院にまで現れるとなると早急に対処する必要がある。

何か方法を見つけなくては。

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