第3話アリア元王妃side
≪≫死者の声
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なにがいけなかったの?
私は陛下に巣くう亡霊を排除しようとしただけ。
どうして誰も分ってくれないの?
≪バカね≫
バカ?私が?
≪そうよ≫
何故?
≪あんな男と結婚して。不幸になるのは解ってたでしょう?≫
愛していたの。
ずっと憧れてたの。
結婚して欲しいって言われて。
幸せになれるって。
誰よりも幸せな花嫁になれるって信じたの。
≪結婚はゴールじゃない。始まりよ≫
分かってる。
ううん、本当は分ってなかった。
大丈夫だって思ったの。
最初は婚約者の身代わりだって良かった。
そのうちきっと私自身を見てくれるって。
信じたの……。
≪信じちゃいけない男よアレは≫
だって……。
≪本当は嫌だったんでしょう?好きでもないドレスを着るのも趣味じゃない宝飾品を贈られるのも≫
だって……。
≪本当は腹が立ったんでしょう?≫
でも……相手は陛下だもの。
私の夫だもの。
≪夫だろうと国王だろうと、あの男のしている事は最低よ。あなたは怒って良いの≫
怒る?
陛下を?
≪そう。自慢の髪をダメにされた時に。好きでもない贈り物をされた時に。自分を誰かの身代わりにされた時に。あのお綺麗なすまし顔の横っ面引っ張たくって良かったのよ≫
でも……。
≪いいのよ。あなたは怒っていい≫
いいの?本当に?
≪ええ≫
私、怒って良かったの?
≪当たり前じゃない≫
私、陛下に怒って良かったのね……。
≪ええ≫
誰も言ってくれなかった。
怒って良いって。
≪相手は腐っても国王だからね。言えば不敬罪よ≫
そうね。
≪ま、あの男は頭が回るから、あなたには分が悪いか。厄介な男を夫にしたわね。同情する≫
同情してくれるの?
≪貴族夫人の大半はあなたに同情してるわ≫
本当?
みんな、陛下は婚約者を亡くしたから可哀想、って……。
≪それ誰が言った?言ってたのって下位貴族連中じゃない?高位貴族は言わないわよ?≫
そっか……。
私、最初から間違ってたんだ。
≪そうよ。あなたは被害者なんだから≫
そう……だよね?
≪そうよ!≫
私、陛下に怒って良かったんだ。
私が我慢する理由なんてなかったんだ……。
≪ええ、間違ってない。悪いのはアイツよ≫
ふふっ。
声だけが聞こえる。
幻聴なのか。それとも此処で死んだ誰かの幽霊なのかは分からない。
でも、彼女は私を肯定してくれる。
死を前にした私に話しかけてくれる。
≪あなたは悪くない≫
……ありがとう。
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