第43話伯爵夫人side

 幸いというか、私は妊娠しやすい体だったようで五年もせずに三人の子供に恵まれました。二男一女。跡取りとスペア、そして嫁入り要員。

 子育て?

 夫達に任せる訳がありません。

 私の実家経由で乳母や家庭教師を派遣して貰いましたわ。

 義両親には早々に自領で隠居していただき、夫は若くして伯爵位を継承しました。もっとも、夫は愛人の住まう別宅に入り浸りですけど、私には関係ありません。だって義務は果たしてますもの。あちらは愛人と宜しくやっているのだからと、私も始めの頃は当てつけがましく他の男性とお付き合い、とやらをさせて頂いていたわ。どうやら私は男性にモテるタイプだったようで、そこそこ楽しませてもらったわ。皆さま、お口の軽いこと。彼らが話して下さった貴重な情報は実家に役立ててもらうことにいたしました。



 ほほっ。

 私の事を陰で「社交界の高級娼婦」とおっしゃる婦人方が続出しましたが気にしません。実家と婚家を盛り立てていくのは貴族夫人の役目。パートナーの夫が頼りにならないのですから仕方ありませんでしょう?


 最近、とてもいい情報を両公爵閣下から頂いたお陰で王太子殿下とも親密な関係を築かせていただいています。落ち目の王太子殿下と言えども、腐っても王族には違いありませんもの。最大限に有効活用させていただきますわ!










 王太子殿下は、学園でソニア側妃様と運命的な出会いをし、色々なあった末の結婚。学園でのトラブルから彼らの結婚に至るまでの経緯に本当に大変なゴタゴタがあったようですが、全ては王宮の中でもかなり少数の者達のみぞ知るというところのようです。まぁ、私の方にもそこそこ情報が来ておりますからね。本当に大変だったことが分かります。よくこれで結婚できたと思ったくらいですもの。


 私から見れば、周囲からの大反対を受けたからこそ一層燃え上がった恋としか思えませんでした。

 当時、王太子殿下に婚約者がいた事も恋愛の障害として更に燃え上がる要素だったのでしょう。


 何年もソニア側妃一筋の愛妻家として名高かった王太子殿下。

 実をいうと週の半分は私と過ごす日もありました。まぁ、ソニア側妃とは十年以上……飽きてきたとしてもおかしくない年数。それに加えて何時までも終わらない妃教育に呆れ果てていました。最近は側妃の粗が目立ってきたと仰いますから、恋のフィルターが外れてきたのかもしれませんね。


 嫌いではない。

 ただ前のように無条件で愛せない。


 王族と元平民。

 価値観が合わない時が多々あったそうです。それは恋人同士なら目新しさでカバーできても、夫婦ではどうしてもそうはいかない。それでも彼女が後宮にいるからこそ、今まで深刻に受けとめることなく過ごす事が出来たそうです。


 それを聞いた時は、同意する他ありませんでした。


 恋情という謎フィルターが掛かっている時はちょっとした些細な出来事はスルーしますものね。ええ、私だって夫との婚約期間はでしたもの。他の貴族と違って王太子殿下を嗤う事なんて出来ません。


 寧ろ、王太子殿下のお気持ち。


 よ~~~く、解ります。



 


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