第41話伯爵夫人side

「それほど愛し合っているのなら、何故、私と結婚をしたんですか?彼女を結婚すれば良かったではありませんか!」


「私だってそうしたかった!!だが出来なかったんだ!!!」


 夫の言い分では、相手は幼馴染で将来を約束していた仲でしたが、幼馴染の家は没落。その上、自分の家も家計は火の車。とてもではありませんが、二人が結婚できるような状況ではなかったそうです。


 まぁ、そうでしょうね。


 スワニール伯爵家の内情は下落の一途。貴族としての体面を保てるかが問われていました。

 私の実家、ポニラス伯爵家の援助がなければ恐らく数十年後には没落していたでしょう。直ぐにではなく徐々に没落していく感じで……。




 だから、と言う訳ではありませんが……夫の立場からするとコレは浮気ではない。

 家庭の事情で仕方なく結婚できなかった仲なのだと。

 自分達の仲に割り込んできた私が悪いのだと。

 元々望んだ結婚ではないのだからと。


 しかも驚いた事に、夫は私との婚約が決まった時に結婚しなくても良いように色々と金策に駆け回ったらしいのです。


 何故、もっと早くそれをしなかったのか……。

 ただ、今更金策に動いたところで貸してくれる人はいなかったようですが。



「それならば……家を出れば宜しかったのではありませんか?」


「それはできない!私は伯爵家の跡取りだ。この家を守っていく義務がある。だから君と結婚したんじゃないか」



 要は、地位と立場を捨てて愛人と一緒になる覚悟がなかっただけでした。

 貴族として生まれ、貴族として育った夫には愛人と平民になってまで添い遂げる事はしなかった。家を捨てれば愛した人と結婚する事は理解していても。それだけは出来なかったようです。


 これ以上、聞く話はないと判断した私は、当然、実家に帰りました。


 両親と兄弟たちは何故か冷静。


 どうやら夫の浮気を知らなかったのは私だけのようでした。


 そのうえで、色々と婚姻契約を交わしていたようです。


 夫の浮気を許す代わりに、私にも同様の権利を有する事。

 伯爵家の跡取りは私が産む事。

 屋敷に愛人を住まわせない事。


 他にもありましたが、私に有利な条件での婚姻契約でした。

 きっと私がここまで怒るとは両家ともに考えなかったのでしょう。

 私が夫を愛していることは見て分かっていたようですが、それとこれとは話は別と考えていたようです。そこに夫に恋焦がれる私の意志など全く反映されていませんでしたわ。それでも夫と暮らす屋敷の使用人たちの態度の酷さには両親も激怒して、紹介状無しの解雇を夫と義両親に要求しました。


 父曰く、「金を払っている女主人を蔑ろにしている使用人など碌な者達ではない。我が伯爵家は給料泥棒に払う金はない」との事でしたわ。


 夫の実家は我が家の資金援助で何とか伯爵クラスの生活ができている状況ですものね。

 だからこそ、義両親は私に気を使いながらも常にイライラしていた。きっとプライドを刺激されたのでしょう。その事を父から聞かされた時は妙に納得しました。


 とりあえず、婚姻関係は継続されたのです。



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