第8話愛の劇場1

 アリア王妃は未だ私を正妃にする事を諦めていない様子でしたが、そこは陛下が何とかなさるでしょう。国王陛下からは謝罪をいただけましたし、「二度と王太子の婚約者に据えるような事はしない」と契約書にサインして貰いましたから大丈夫でしょう。


 それと、陛下は何故か私の提案を受け入れました。


 アリア王妃は卒倒なさり、大臣達も大半が倒れかけていましたが陛下は頑として発言の撤回はなさいませんでした。



『アリエノール嬢の提案通りにしよう』


 どうやら、王太子殿下との婚姻を望んでいたのは陛下ではなく王妃殿下のようでした。


『本来ならレーモンを廃嫡の末に生涯幽閉、相手の女性も王太子を誑かしたハニートラップ要因として公開処刑が妥当だろう。だが、それではレーモンは反省しない』


 全くその通りです。

 そもそも何が悪いのかも理解できていないと思われますわ。


『王族として、また人として、何が悪かったのか理解せぬまま処罰するのでは前例が生まれかねない』


 確かに。

 記録係も困るでしょうね。


『レーモンに決めてもらおう。どのような選択をしようともそれはレーモン自身の責任だ。己の過ちに気付くのか、それとも気付くことなく愚行を繰り返すのか。愚行を繰り返すようなら生き恥を晒してもらおう』


 大変な選択になりそうです。

 その前に本当に良いのでしょうか?

 ある意味、これは罰ゲームのような……。殿下だけの問題では済まされません。王国そのものが恥を晒す事になりかねません。……陛下は何故このような事を?


『王家も無傷ではいられまい。だがこれもを晴らすためにも必要な行為だ。勿論、私も王として、そして父親として最後まで責務を果たそう』


 陛下の言葉に、ついに王妃殿下は倒れてしまいました。大臣達の顔は死んでますわ。まぁ、それも仕方ないですわね。これは彼らにとっても罰になりますもの。その事を皆さま気が付いているからこその態度。王が傷を負うのに、臣下が無傷でいるなどありえませんから。


 要は王太子殿下がソニア嬢を選ばなければ問題はないのですが……。

 殿下が普通の感性を持っていらっしゃれば問題ないでしょう。平民の女性を妃に迎える事自体が異常だと気付くでしょう。それもなら、なおの事。


 はてさて、どうなることやら。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る