※🎨第19廻「裏切りの狂想曲(カプリッチオ)」

 りなは輪廻りんね達と相談所の食堂で話をしながらお茶会を楽しんでいた。

「このスコーンも紅茶も、美味しいっ! ねっ、輪廻さん。それとも、前のように輪廻ちゃんって呼んだ方がいいかな?」

 

 りなは頬を染めて、もじもじしている。


「ああ、りなの好きに呼んでくれて良いよ」

 輪廻は、紅茶を一口飲んで、微笑む。

「でも、不思議ね。私の前世が輪廻さんの幼馴染おさななじみだったなんて。それに……私があなたの許嫁いいなずけだったなんて、きゃっ……」


「ヒロイン・小鳥遊たかなしりな-AIイラスト」

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093090529431009


 

 顔を朱に染めて、恥ずかしく嬉しい心持ちで可愛らしく身をよじるりなに輪廻は、穏やかにまた、笑った。



「りなちゃんッ……前世で若の許嫁だったの?!」

 ショックで顔を上げられない大和やまとにりなは頬を染めてうなずく。



 ガツンと石で頭を殴られたような、衝撃を受けて青ざめる大和に輪廻は、何とも言えないと苦笑いをしている。

 複雑な心情で悔し涙を浮かべる大和だったが、一方の椿つばきは冷静な表情で輪廻達を見つめていた。



 椿がふいに口を開いた。彼女はいつもと違う冷たい雰囲気が漂っていた。

 それを感じ取る輪廻も、椿をまた冷静に判断して見ようとしていた。



「そんなことより、次のご依頼ですよ。輪廻さま、男性の方からの依頼です」

「それは、人か、あやかしか? 今回は、いかなる依頼だ?」

「今回は、人間とあやかしのハーフの方です。ある男に復讐をして欲しいそうです。自分の代わりに」



「馬鹿な事を……そんな依頼を俺が受けるとでも?」

「ふふ……あなた様なら、そうおっしゃると思っていましたわ」

 椿が妖艶に微笑む。



「――なに……?」

 その瞬間、輪廻達は相談所の中から、外へと怪しげな術によって、放り出されていた。



「……ぐはッ!」


 その刹那、輪廻の後ろにいた大和が突如血を吐き、倒れる。

 大和の背後には、腕を血まみれにさせた紫闇枢しあんかなめが静かに不気味に笑っていた。



「くそっ、ぬえかッ! 大和ッ!!」

 輪廻が血相を変えて叫ぶ。突然の強襲に驚愕しながらも体制を整え、りなを守ろうとする輪廻だったが、輪廻の背後にはまた、仄暗い表情をした椿が迫っていた。



「つっ――!!」


 椿は、彼を羽交い絞めにすると、輪廻の腹を懐から小型のナイフを取り出し一気に突き刺した。

 まさかの不意打ちに輪廻は口から血を吐き出し、腹からは、真っ赤な鮮血が溢れ、服を染める。



「なっ、つっ、椿……ッ!」

 輪廻は口の端から、血をこぼしながら顔をゆがませ、腹を押さえて悲しそうに椿を見つめると地面にドサリと倒れた。



「黒椿の乙女・猫嶋椿ねこしまつばき-AIイラスト」

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093090529159554





 🔷





「あぁっ……、ごめんなさいっ! 輪廻さま……」

 椿は、ナイフを手から落として、涙を流して顔をおおって泣き崩れた。

「いやあああっっっ!! 椿さん、何てことを。死なないで輪廻ちゃんっ! 輪廻ちゃんッ!」

 りなは顔面蒼白になり、彼にすがって泣いている。



「フッ、フハハッ……良くやった! 私の傀儡くぐつよ、聖女を連れて私の元へ帰って来い!」


「輪廻ちゃんっ、大和さんっ!いやああっっ!!」



 悲痛に泣き叫ぶりな。

 椿は傷心のりなを気絶させ、枢は彼女を肩にかつぐ。



 紫闇枢の非情な笑い声が辺りに響く。

 椿は輪廻と大和を一度だけ振り返り、困惑した切なげな表情をする。



 りなはさらわれ、椿は紫闇枢と共に去り、傷つき倒れた輪廻と大和だけがその場に残された。



 絶望を現す、黒雲立ち込める空からは雨が降り落ちて来た。

 輪廻達に降る雨の音がまるで、狂想曲を奏でるように音を立てていた。



「主人公・氷雨輪廻ひさめりんね-AIイラスト」

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093090529197750




 ♦♢∴─────────────────────────∴♦♢

 今年最後の輪廻です。今年もお読み頂いてありがとうございました。

 来年もよろしくお願いいたします。


 お忙しい中、読んで頂いてありがとうございます✨

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る