オーバードーズ

「先生、愛ってなんでしょう」


「うん、身体の相性じゃないかな。情なんか後からでもわいてくる」



 わたしは枕に顔を埋めて先生の言葉を反芻した。もしいま隣で静かに寝息を立てる彼女が身体の相性だけでわたしを選んでくれているのだとしたら、情すらもないのにそんなもので彼女を縛り付けているのだとしたら。


「睡眠薬なら捨てたよ、大丈夫だから」


 手が震えて眠れないから睡眠薬を飲もうと思ったのに、この間彼女との約束を破って飲みすぎてしまったから、残らず捨てられたのを思い出した。彼女を残して死ぬのが怖いと思う。おかしな話だ。これは愛だろうか。……これはきっと、先生のいう“情”なのだ。


「安定剤も捨てたよ、いつも君は飲みすぎるから」


 わたしは寂しい。彼女に縋ることもできずに薬に逃げてしまう。彼女が見境なく薬をくずかごにやってしまうのもわかる。


「あなたが薬ならいいのに」


 わたしたちは寂しい。

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