第5話 俺たちの戦いは
ネット配信で露見した『魔法省が特級魔法契約書を使っていた』という話は大きなスキャンダルとなった。
これまで特級魔法契約書にさしたる興味を持っていなかった層も巻き込んで、その存在が問題視されてきたのだった。流れに乗ったまま、ほどなくこれは違法となるだろう。
真央たちは世論を動かした張本人とした形ではあるが、どうにか和弘の思惑通り衆目を集めることに成功した。
web上にはたくさんのファンも付き、国ももう無碍に扱うことが出来なくなった。
あのダンジョン配信をした次の日、和弘と一緒に魔法省へと赴いたときにはもう、特別なものを扱うような恭しさで真央は対応されたものである。
彼女は自由に『魔法省の研究や仕事を手伝う』だけの立場となった。世論に守られた状態となったのであった。
呪いに近い契約から解放された伏見立夏は、魔法省をやめこそしなかったが、これまでの仕事とは打って変わって、ダンジョンの探索を主とした仕事をやることになった。
そもそも彼女は未知のモノが好きで『魔法』省に在籍していたのである。ダンジョンの未知なる領域の探索は、彼女が本来望んでいた仕事なのだ。
というわけで、今日も立夏は和弘&真央の二人と一緒にダンジョンの奥へと向かう。
「ここからの層は、まだ政府のデータベースにも情報が記されてない未踏の領域よ。覚悟はいい? 和弘、真央ちゃん?」
「誰に言ってますですか! 全然へーきですとも!」
「記録さえさせてもらえるなら、俺もどこだって付いていくよ」
ダンジョンの奥に眠る『魔王のチカラ』の断片を集める為に、真央もダンジョン攻略には乗り気だ。和弘も、その様子を動画に収められるといって満足げ。
それぞれが、それぞれの楽しみができて嬉しそう。
今日も和弘の配信で、ネットのファンを騒がせる。
”キター! リッカ&まおちゃんのコンビ魔法!”
”結局シュークリームなんだよなぁ”
”この層のモンスターとか、映像記録に残せてるだけでもう史料価値高すぎなんだよね”
”文字通り前人未踏だから”
”あ、お兄さんがまたモンスターを一閃した。二人に隠れて地味つよに見えるけど、お兄さん普通にヤバいww”
ところで、あれほど和弘のスマホに鬼電していた会社からのコールは、ここ数日一切なくなった。年端もいかぬ子供である真央ちゃんに特級魔法契約書を使おうとした会社として認知されてしまい、全ての契約先から仕事を取り下げられてしまったのだ。
なにも仕事がなくなった和弘の元就職先は、潰れるまで風前の灯。
課長は最後までしがみついているらしいが、もうどうにもなるまいというのが和弘の見解だった。
「結果的に、俺の発言で潰れてしまうことになったのだろうか」
「そうよあなたのせい。反省してる?」
立夏が苦笑いしながら、肘で和弘の脇腹を小突く。
「いや全然。真央ちゃんに酷いことしようとしたのが悪い」
「わかってるわね、その通りよ」
ニヤ、と笑う立夏を見て、和弘は思った。
俺たちもだいぶ仲良くなってきたよな、と。
お陰でダンジョン配信は面白くなってきたと話題だし、リスナーの数も日々増え続けている。
「見て下さいおにーちゃん、三つ首の黄金龍がいます!」
「うおお、でかいな」
「あれをテイムできたら街一つくらい破壊できそうです!」
「こら真央ちゃん、そういうこと言ったらいけません」
「ごめんなさい、おにーちゃん!」
”でた、まおちゃんの魔王さま発言!”
”人はゴミのようですから”
”まおちゃん以外の万物に一片の価値なしなんだよなぁ”
”お兄さんの言うこと聞けてえらい!”
ときおり不穏なことを言う真央をリスナーたちは楽しんでいるようだ。
そして、二人の横にいる立夏もまた、それを楽しんでいる。
「テイムはさせないぞー真央ちゃん、私が倒しちゃうから!」
不敵な笑みで飛び出す立夏。
和弘のハンディカムがその姿を追った。
「無理はするなよ立夏! 後ろには俺も真央ちゃんも居るんだから!」
「ふふ、アテにしてるわ」
”いいチームになったな”
”みんなつよい!”
”彼らならいつしかダンジョンの謎を解明してくれるに違いない”
気持ちの良いコメントが続く。
合間には癒される単純なファンコメ。
”まおちゃんかわいい!”
”リッカ派もいるぞー!”
”和弘さまーがんばってー!”
彼らの活躍は、まだ始まったばかり――。
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という辺りでひと段落!お読み頂きありがとうございました。
もともとお話の序章ぽい部分だけの短編を書くって気持ちで始めたのですが、思ってたより読んで頂けているみたいで満足です。
大風邪をひいてしまって寝込んでいる作者にお見舞いの星を送って頂けますと感謝感激です。しれっと続きが始まることがあったらそのときはまたよろしくお願いします。
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