宇宙兄弟(43巻まで)
タイトル:宇宙兄弟(1~43巻)
作者:小山宙哉
読書期間:2023/10/15~10/28
媒体:単行本
・・本書紹介・・
宇宙兄弟の魅力は、何と言っても、あのふざけた効果音だろう。
牛乳を飲むときは「ギュニュッギュニュッ」だし、のりを使うときは「のりーーのりっのりっ」だし、シャッター音は「シャシッシャシシ、シャシンッ」だし、兎に角ふざけている。
先に言っておくと、ギャグ漫画じゃない。主人公が宇宙飛行士を目指す立派な真面目な漫画だ。
じゃあなんで、こんなにふざけてるんだ、と言われれば、真面目な漫画ゆえだろう。
物語が進むほど、登場人物達の想いの強さに共感し、宇宙という未知への挑戦に恐怖し、成功に喜びを感じずにはいられない。読んでいてガッツポーズも涙も出る。
そう、感情が忙しいのだ。
ほぼ常にジェットコースターに乗っている状態。無重力と3Gの間を行ったり来たりする。その緩衝材がふざけた効果音なんだと思う。
いよいよ最終章に突入した今こそ、一気読みしてほしい作品である。
・・以下ただの感想、ネタバレあり・・
いやー、やっぱりおもしろいな、と。
実は過去に30数巻でドロップアウトしており、今回満を持してというか、何というか急に読みたくなり、全巻揃えて一気読みしたわけですが、正解でした。続きを半年も待つだなんてなんの拷問ですか?いいところで終わりすぎじゃあありませんか?
正直、2回目以降って薄味になるというか、先が分かっているから感情の高低差が小さくなる気がするので、あまり読まないんです。
今回も、途中まで読んだところは飛ばしてもいいかな、とも思ったんですが、まあ、忘れている部分もあるだろうし読むか、と。良かった。最初から読もうと思った過去の自分に感謝です。
しっかり、がっつり泣きましたからね。
いやー昔読み始めたころより涙腺が弱くなったのか?2,3巻に1回はうるっときてましたね。もう進めない、進まないww
ヒビトがクレーターに落ちた時なんか、助かるのが分かっているのに、指痛くなるくらい祈ってましたから。駆け付けたブライアンのまーかっこいいこと。泣きましたね。もう紙面が見えないくらいがっつりいきました。
何気に、管制室のスタッフが振り返るシーン好きなんですよね。ああ、ブライアンの定位置だったんだろうな、って思うんです。宇宙飛行士だけじゃなく、みんなの兄貴なんですよ。彼は。・・・・・・かっこよ。
そんな兄貴の唯一の兄がエディですよね。
同じ宇宙飛行士ですが、ブライアンとは全然違うタイプというか。
ブライアンは引っ張ってくれるタイプ、エディは後ろから支えてくれるタイプといった感じがします。あ、そう考えると、ムッタとヒビトに似てますね。天才型と努力型で考えると、天才→ブライアン、ムッタ、努力→エディ、ヒビトと逆になるんですが、不思議ですね。
この兄兄、弟弟のエピソードも素敵なのが多いですよね。月の上ではヒビトをブライアンが助け、エディをムッタが助けました。共に幼いころに月を目指し、夢を叶えた兄弟でもあります。
月でのエディのシーンは泣きました。並んで、とはいきませんでしたが、同じ景色を見て(おそらく)同じ報告をして・・・・・・その瞬間は共にあったと信じています。
さてさて、宇宙兄弟と言えば、やっぱり登場人物のキャラの濃さは外せないですよね。なんであんなに濃いんでしょうか。ちらっと出てくる人ですら個性的です。五角形のグラフがあったら、綺麗な五角形の人はいなさそう。オジー風に言うなら、みんな頭のネジが1本抜けてる。
回を増すごとに濃くなって、今見てみると、ケンジややっさんもそれほど強烈に見えない不思議。登場当時は、キャラ濃っ!!と思ったんですが・・・・・・。
個性の塊と言えば、ジョーカーズですね。
最初ジョーカーズを見た時は、こんなに協調性の無い人たちなのに宇宙飛行士になれたのか(失礼)と思いました。集めたから尚更、ということもあるのでしょうが、エディが来るまではほんとに宇宙に行けるのか?と疑っていましたね。
エディが入り、チームが上手く循環しだすと、カルロの安定感やフィリップの陽気さ(元からか?)のように強烈な個性以外の部分が見えてきて、宇宙飛行士に選ばれた理由も分かる気がします。
登場人物で誰が一番好き?と聞かれたら(悩みますが)紫さんを選びます。
いいですよね、ジャパニーズニンジャ。紫三世。
あのイタズラの数々、タスクに支障は出ないんでしょうか。・・・・・・ぎりぎりを攻めてそうですよね。仕事ができる人なので、遅れてもさくっと挽回しそうでもあります。
彼のイタズラで一番、いいのか?それwwと思ったのは、月面基地での宇宙グモですね。なんの持ち込みを許可してるんだNASAは、とも思いました。あれだけ軽量化、軽量化言っておいてそれはいいんだ、と。NASAの職員があれを真面目に検査したと思うと笑えます。
続いて、読み返て(読み返したからこそ)気づいた、話の構成の上手さについて語りたいと思います。しろーとなので、〇〇というテクニックです!とか考察とかは一切分かりません。なんとなく、ここの話の繋がりすげー!と思ったところを書きたいと思います。
ひとつめ『対比』
宇宙兄弟では対比の場面が多いです。
一番多いのが、ムッタとヒビトの対比です。(主人公なので当たり前かもしれませんが)
この二人は月で再会するまで、常に反対の状態にあります。
例えば冒頭の記者会見では、ヒビトがムッタのことを、次の会見ではムッタがヒビトのことを、いなくて残念だと言っています。さらに、ヒビトが活躍している前半ではムッタは試験や訓練で宇宙へ行く準備をし、ムッタが宇宙へ行く後半ではヒビトがリハビリや訓練など準備中となります。
細かなところだと、ヒューストンの広場でのシーンや、芝刈りのシーンなど意識して見ていると面白いです。
個人的に全身の毛が逆立つくらいテンションが上がったのは、ケンジがブルースーツに袖を通した時です。
地味なグレーの作業着のケンジと、ブルースーツを着たケンジ。同じようにロッカーの鏡に写る姿ですが、一気に色づいたような気がしました。(漫画なので白黒ですが)ここから始まるんだという興奮が全身に走りました。痺れました。
ふたつめ『危機感』
次に危機感の伝え方です。
宇宙へ行くという一般人の自分からすればファンタジーな話で、死と隣り合わせというのは、実感としては感じにくい部分があります。
しかし、宇宙兄弟ではこの危機感の伝え方がうまいな、と思う訳です。
特に感じたのが、ジョーカーズAチームの帰還です。
着水時の衝撃が、ベティにとってどれほど危険かがここまでで自然に含まれているのです。
宇宙飛行士の帰還は、ブライアン達の事故映像から始まります。帰還もまた死と隣り合わせだと見せつけられます。そこから、ヒビトの帰還ではパラシュート(ピコ)の話、ビンスの帰還では管制室の話と、安全のために動く仲間たちの話に移ります。
そして、セリカさんの帰還で、それでもなお、祝福の花火や着陸時の衝撃など宇宙飛行士には大きな負荷がかかると分かるわけです。
ベティが着地の衝撃に耐えられないかも、今の体力では帰せない、けどこれ以上筋力が落ちても帰れない、というじりじりとした焦りもより実感できます。
この自然に物語に組み込まれた情報量の多さは、宇宙兄弟の見どころの一つではないでしょうか。
この先、ムッタは慣れない船で無事に帰れるのか続きが待ち遠しいです。
最後に宇宙飛行士にとって最も必要な素質について書きたいと思います。
あくまで宇宙兄弟を読んで自分が勝手に感じたことですが、宇宙飛行士にとって最も必要なのは『信じる力』ではないでしょうか。
もちろん、語学力や専門知識、体力や咄嗟の判断力など必要なものは他にも沢山あります。けれど、信じる力は努力で補えきれない部分があると思うのです。
信じる力とは、大前提として宇宙に行けると信じることから始まります。そして、同じ宇宙飛行士である仲間や、管制室のメンバーももちろん、最新技術を詰め込んだGPS、ロケット、宇宙基地や宇宙服など一つでも信じきれないと宇宙へ行くことはできません。
細かなところで言えば、ロケットのネジ1本まで信じていないと命を懸けることはできないわけです。ムッタがめちゃくちゃ疑り深い人間で、JAXAの椅子のネジが緩んでいたことから、ロケットのネジも緩んでいるかも!と思っていれば、宇宙兄弟はそこで終了でした。
命を懸ける仕事というのは、生きて帰るという前提を信じていないと成り立たない、と思うのは私だけでしょうか。
ここまで読んでくださった方がいましたら、ありがとうございます。
共感いただける部分や、自分はこう思ったなど教えていただけますと嬉しいです。
それではまた(*'ω'*)ノシ
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