少年ボディガードと妖精姫 / 妖精と科学、子供達が未来を切り開く現代ローファンタジー
てぃえむ
小学生編 人魚姫と不思議な鳥
プロローグ これはひとつの結末
「リュウ…今まで、ありがとう」
アヤカは涙をこらえながら、眠る彼の頬に優しく触れた。
戦いの跡が刻まれたリュウの体には無数の傷が浮かんでいる。最後の力を振り絞りその傷を癒すが、木の根に包み込まれ、動けないようになっているリュウの左半身の下に隠れたおぞましい姿を思い返した。
迫る大樹の枝や根をそっと撫でる。膝の上で寝息を立てるリュウは子供のような表情に見え、その様子に少しだけ微笑んだ。
「覚えてる?小学生の時の人魚姫」
反応のないリュウの髪を撫でながら、アヤカは言葉を続けた。
「あれはまるで、今の私たちみたいだった」
大樹の枝が少しだけ大きな音を立てて揺れ、周りの空気に混じってパチパチと静電気のような音が響く。それを聞き、父親の怒りを感じ取ったアヤカは砕け散ったブレスレットを拾い上げると、リュウの体をそっと横たえた。
心の中で叫ぶ。嫌だ。本当はもっとずっと一緒にいたい。ずっと彼を支えていたい。
でも…
アヤカは涙を拭い、リュウの顔を見つめた。
「さようなら、リュウ」
立ち上がったアヤカは祈るように手を合わせると、その姿は次第に幻想的に変わり始めた。
金髪は星々が夜空で輝くように、美しい光をゆっくりと放ち、ライトブルーの瞳は深い青となり、星空を映しているような輝きを放つ。彼女全体が青白い光を纏い始め、その光は純白のドレスのように彼女を包み込んだ。
アヤカを囲んでいた青白い光の一部が天へと昇り、やがて消えていく。
妖精や精霊たちは歌を奏で、自分たちの新たな母となる存在に喜びの声を上げるように彼女の体を包んでいく。
「怒らないで、お父さん。リュウは頑張ってくれたよ。でも…」
大樹が風に揺れ、大きな音を奏でた。
「もし過去を変えられるなら、ずっと一緒に居られる未来もあったのかな」
そう呟くと、光と共にゆっくりと消えていった。
天に昇って行った光は、やがて「彼」のもとへと舞い降りる。
遠い、遠い、6年前の彼のもとへ
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