酔っぱらい
店を出るとひんやりした空気が頬を刺した。ほてった体にはこの冷たさが気持ちよかった。狭い路地裏を彩那は千鳥足で歩く。
——ああもう飲みたんない
充分すぎるくらい飲んだのに。心と体は渇きを覚える。
コンビニで缶ビールとレモン酎ハイを買って……あー明日の朝ごはんも買っておこうか。自宅前にコンビニがあってよかった。通勤用のバッグ片手に、にやついていれば、「ぶっ!」横道から出てきた通行人とぶつかってしまった。
「わっすみませっ……」
「Entschuldigung.」
彩那が謝罪を口にすると同時に、相手も聞きなれない言語を返してきた。
——わぁ、すっごい美人
すらりと背が高くモデルのようだった。
どこの国の言葉だろう。カッコいい。
さらりと流れた発音に聞きほれていると、女性はさっそうと歩き去っていく。暗がりで一瞬しか見えなかったし、サングラスもかけていたけれど、真っ赤なルージュに彫りの深そうな顔立ちが印象的だった。同性ながらときめいてしまう。
——えーっと……コンビニで缶ビールとレモン酎ハイと
美しいお姉様のうしろ姿を見送りながら、買い物リストを確認していれば、明かりのない自分の部屋が浮かんだ。
——……帰りたくないな
駅に向かいかけていた体をずるずると方向転換する。
並木通りではクリスマス当日までイルミネーションをやっている。そのことを思い出し、明かりに誘われる虫のようにふらふらと歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます