登場人物紹介(2)






・夜柳陽咲


 年齢、六十八

 誕生日、十二月二十四日

 好きなもの、夫

 嫌いなもの、夫の気を引く物

 趣味、ガーデニング、夫の調教


 半世紀以上前の日本に生まれた夜柳雫バージョン。

 引く手数多にも関わらず、悪い男に引っかかってそのまま外堀を埋めて見事に結婚を果たす。その多才さを余さず夫の確保に費やした。

 名家の令嬢ではあり、その恋路は前途多難だったが手段を尽くして周囲を黙らせ、自分の欲しい物を手にした人生の勝者。

 孫の雫には自分自身を重ねる部分が多いが、夫がとても甘やかすので嫉妬心マシマシ。孫娘にそんな感情を抱く自分への凄まじい嫌悪感と戸惑いがあって深刻な距離が生まれている。

 だが、大志を見た瞬間に理解した。

 この子も、私と……。

 奇しくも大志が緩衝材となって溝が埋まりつつある。何とも度し難い。

 因みに自分と同じとあって雫の弱点――やられると乙女としてキュンとするポイントも確認したわけではないにも関わらず正確に把握しており、それとなく大志に情報を流しているが、説明の仕方が少し遠回しなために大志には猛獣の倒し方として伝わっている。


「あら、郁斗さん。私の知らない間にこんなに別のメスの臭いをつけて……」







・夜柳郁斗


 年齢、六十七

 誕生日、九月七日

 好きなもの、猫、孫、息子、妻

 嫌いなもの、何だっけ

 趣味、妻との会話


 半世紀以上前に出現した元祖大志。

 多少は大志以上に物事を注意的に見ているが、比較対象が大志なので一般的な感性と比べるとアウト。

 一定数の女子にモテる容姿だったのだが、雫以上に徹底していた陽咲の働きがあり、もはやこの世に存在しないレベルで周囲に認識されずに陽咲一筋の人生を送る事になった。

 ある意味で超不幸なリア充だった人。

 ただ、無意識に陽咲ゾッコンだったので幸福度的にトントン。

 幼少期から複雑な孫娘を案じる日々を過ごしていたが、それを解消したお隣さんの存在には深く感謝している。

 雫と陽咲の距離感も薄々感じ取っており、間を取り持つべく動くが、自分が原因の一端を担っているなんてこれっぽっちも気づいていないので悪化しかしない。

 陽咲には結婚記念日に必ず『愛してる』の言葉を贈るようにしている。


「おお、陽咲。え? 猫と私、どちらが良いかって? 君とワシはもう何十年も一緒にいる仲だ、言わずとも分かるだろ。…………猫だ!!」





・赤依沙耶香


 年齢、十六歳

 誕生日、六月二十四日

 好きなもの、音楽、ギター

 嫌いなもの、


 合コンで現れた少女。

 軽音部で活躍中で、作曲についても才能はある。

 趣味に没頭するタイプで本来ならば合コンに来る事も無かったが、丁度よくラブソングの作曲に難航しており、聞き手の心に刺さる歌詞を書くには圧倒的な経験不足だと自覚して憲武が企画した合コンに飛び込んだという経緯だった。

 結果的にその中で大志という可能性を発見する。

 あれ以来も連絡先を求めて雫に問い詰めているが、やんわりと断られる他に雫の操作する人間たちの包囲網によって聞けずじまい。

 それでも折れないのだから中々にタフ。

 その努力が結実して体育祭で連絡先を渡す事に成功し、以降は連絡を取り合っている。


「待ってろ! 新曲の可能性!」





・相森梅雨


 年齢、十七歳

 誕生日、六月三日

 好きなもの、面白い事

 嫌いなもの、夜柳雫、天川空

 趣味、引っ掻き回すこと


 サイドテールが特徴の美少女。

 校内でも王子様と謳われるほどスポーツをしている最中の姿は美しいと定評がある。本人は試合に集中しているので気にしていないが、自分に興味のない人間からの熱烈な好意をまるで汚い物のように感じている。

 その性格の悪さでブイブイ言わせていたが、逆に自分に興味のない人間はもっと大嫌い。

 飲食店で店員を弄ぶ悪女をやっていた時に居合わせたバイト店員の天河空に「見た目だけの女ってやっぱいるよな」と言われたり、大志一途で自分を見ない雫がその例に該当する。


「ねーねー、雫ちゃん! こっち見てよー……ちっ」






・如月いろは


 年齢、十五歳

 誕生日、十月九日

 好きなもの、努力、特撮の悪役、恋愛漫画

 嫌いなもの、不真面目な人間、夜柳雫

 趣味、テスト前日のゲーセン


 大志や綺丞の後輩。

 常に優秀な成績をキープし、中高と風紀員を務めて日々の校内パトロールを欠かさないほどに責任感が強く、高い向上心も持ち合わせている。

 幼い頃から学者として聡明な父に憧れており、しかし彼のように上手くいかず挫けかけていた。そんな時に公園で遭遇した天河空から励まされて立ち直る。

 中学では不真面目さや素行の悪さが目立つ大志を目の敵にしていたが、天河空に似た雰囲気や自分の変化を敏感に感じ取ったり、嘘偽りない感情を伝えてくれる素直さに惹かれていった。

 そして想いを伝えるも、瀬良花実の件がトラウマになりかけていた大志に最悪な形でフラレてしまい、以降は大志に愛憎紛いな感情を抱きつつ、そうさせたであろう夜柳雫への敵意を燃やしている。

 高校は綺丞と同じ学校に進学し、彼からの提案を受けて恋人レースに参戦した。


「小野先輩、私が恋人になったら生活から改善させてあげますから。……は? そ、そんな潤んだ目で見たってゆ、許してあげませんから! ……多分」





・細川太河


 年齢、十八歳

 誕生日、五月十日

 好きなもの、完璧な自分、夜柳雫

 嫌いなもの、テスト

 趣味、鏡の自分を見ること


 大志の男子校の生徒会長。

 ナルシスト。それ以上の説明は要らない。

 雫を好きになった経緯も、一目みた瞬間にまず容姿、次に街での評判、完璧すぎるスペックから付き合えればもう自分は完璧なのではないかという自己肯定の材料にうってつけと思って好意を抱く。

 雫の関心を集める大志は怨敵と見定めているが、大志からは「細いのか太いのか分からん名前でテスト赤点補習の常連なのに生徒会やってる面白い人」として興味を抱かれている始末。

 ナルシズムな部分とそこに起因する夜柳雫をブランドとして見た故の好意が見え透いているからこそ、雫は断固拒否。加えて、自分と付き合っているなんてデマを流した上にそれで勘違いした大志が恋人作りなんて余計な事に励み始めた原因でもあるので深く憎んでいる。

 近い内に、きっと彼は遠い海へ旅立つだろう。

 皆まで言うな。


「ああ、今日も私は美し……くはないが、この未完成さが人間的な魅力を引き立てている。ああ、私は完璧だ」






・根山烏月


 年齢、十七歳

 誕生日、四月二十八日

 好きなもの、暗くて静かな空間、ホラー

 嫌いなもの、注目

 趣味、肩揉み、足揉み


 大志のクラスメイト。

 極度の上がり症で注目を浴びると何もできなくなるので基本的に何事も消極的。

 人目を気にするようになった原因は、八つ歳上の従姉妹のお姉さんの悪戯……という名の対人にトラウマを抱かせて孤立したところで自分が掬い上げ、一生依存させて結婚させるルートの為の作戦にまんまと引っ掛かって今に至る。

 趣味が肩揉みや足揉みなのは、そこが凝っていたりすると「あ、やっぱり疲れてる。僕ってちゃんと生きて動いてたんだ」と生の実感を得られるから。揉んでいるとよく涙が滲むのは感動しているからであって決して悲しいわけではない。

 近い内に、上場企業の要職に就いた従姉妹のお姉さんの婚姻届にサインさせられる。

 皆まで言うな。


「ぼ、僕を直視するな! 僕なんか見たって……何も良いこと無いのに……」





・竹内千樹


 年齢、十六歳

 誕生日、七月二十一日

 好きなもの、音速、光速、加速

 嫌いなもの、速度制限

 趣味、神速


 大志のクラスメイト。

 何事もスピーディーに済ませたい謎の少年。

 大志のクラスの学級委員を務めているが、クラス内の会議等では進行が速すぎて全員から顰蹙を買っている。その事で少し皆に申し訳なく思うが、罪悪感や後悔が足枷になって遅くなるのが嫌なので結局聞く耳持たず。

 何事も速さを念頭に置いて考える男だが、何故か彼の語彙には『迅速』という言葉がない。勉強しろ。

 将来は神速になりたいそうだ。

 皆まで言うな。


「いつか、誰も追いつけない……そんな存在になりたいんだオイラ」





・内田外成


 年齢、十七歳

 誕生日、五月十六日

 好きなもの、こってり系のラーメン、ゲーム

 嫌いなもの、便意

 趣味、ゲーム、腹囲の測定


 大志のクラスメイト。

 肥満体型にも関わらず異常な敏捷性を誇る男。

 中学の頃に喧嘩で負け無しの最強イケメンヤンキーだったが、中学時代の大志に喧嘩を吹っかけたのに何の脈絡もなく横から割って入った雫との正面対決でボコボコにされて牙が折れた。

 体型は主に食生活が原因なのだが、本人は自覚した上で改める気はしない。家族には早死するだろうと既に見切りをつけられているのも知っている。

 実はゲームで大志や憲武とよく通信対戦などで遊ぶ仲だが、当の二人は内田くん使用のユーザー名『ステゴロ最強チワワ』と何故か通話中の加工された音声の所為で全く誰だか分かって貰えていない。

 近い内に、制服のサイズがまた変わる。

 皆まで言うな。


「ふ、小野氏! 今日こそゲームで勝たせて貰う……夜柳氏だけは呼ばないで欲しい」







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