第50話 冬休み限定イベント
翌日、あのような話を聞いた葵が何を思っているのか気になっていた怜だが、朝学校に行くといつものようにクール系の女子をとして周りと振舞っており、怜に気を遣うようなそぶりは見せなかったため、怜も特に気にすることなく平穏な日常を送った。
葵としては怜の事情はよそのことであることから、自分が無理に干渉する必要もないと感じている。そして、怜は誰かに自分の事を気に掛けられるのは嫌いだと明菜から聞いていたため、葵もその対象だと思い気遣うことはしない。
何より怜が今の状態を気に入っているのだから。
「なんか文化祭とか体育祭も終わって、残りの日数って消化試合みたいな感じだよね」
ふと渚がそんなことを口にした。
「確かに、この後の行事的なイベントって特に何もないし」
「まぁ、高一ってそんなもんだろ」
「そうだけどさー」
怜の机に渚が腕を伸ばして突っ伏す。その渚の頭を頬杖を突きながら撫でる。
「でも、何かしらのイベントがあってもいいかも。じゃないとみんな退屈そうにしてるし」
「イベント……学期末テストくらいしか思いつかん」
「花の高校生が思いつくのがそれってヤバくない?」
「俺に普通の男子高校生を求めんな」
「あははっ……」
怜は生まれてこの型青春というものに手を付けたことがない。
恋愛も何かしらのイベントでさえも怜にとってはいずれ通る通過点のようなもので、実際に恋愛をしたいのかと聞かれても答えは「NO」としか出てこない。文化祭も体育祭も、毎年気だるく何となくで参加しており、そのほとんどをゲームをやって過ごしている。
「それにしても、冬休み前に期末テストがあるのかー……」
「しょうがない……避けて通ることはできないから」
「うぅ……」
「白崎君って勉強苦手なの?」
「うん……」
「こいつ、大の勉強嫌いなんだ」
葵がぽかんとしている。
これまでの渚の成績は葵に並ぶ学年2位。ほぼほぼ互角の勝負ができるほどの成績は維持しているものの、本性としては勉強には一切手を付けたくない隠れ勉強嫌いだ。ただ、親の意向もあって勉強はしておかないといけないという教育の下で致し方なく勉強をしている。
「だから怜が羨ましいんだよ~勉強しなくても成績の維持ができるから」
「記憶力の差」
「うっ、強者のセリフ」
「この会話何回目だよ」
「でも、本当にすごいとは思う。基本的に何かを学ばない限りは記憶すらできないはずだし」
「おいおい、あたかも俺が全知全能の神みたいな言い方だな。俺だって一応の復習と予習はしてる」
「え、そうなの?」
「当たり前だろ」
この世に勉強もせずしてすべての範囲が頭に入っている人など存在しない。もし存在するのであればもはや神の領域を超えている。
「怜の場合は記憶力が人よりも高いから、教科書を読んで問題集の応用編の部分を解いておくだけでいいんだよ」
「もはや神と何ら変わりないのでは?」
「人間だ」
葵と怜がやりとりに思わず笑ってしまい、怜からジト目を向けられる渚。
と、そこにクラスの女子が数名怜たちのもとに近寄ってきた。それにいち早く気付いた怜だが、その数名の女子たちの目的は自分ではなく、渚か葵の二人にあると思い気にしないことにした。
「あ、あの!」
「?」
「その、今度のクリスマスパーティー一緒に行ってくれませんか?」
「僕?」
「はい!」
葵は怜と渚の方を見て首を傾げた。
「あ、そっか。まだ姫野さんには説明されてないのか」
「え、なんのこと?」
「この学校、クリスマスの日になると学園中の生徒が集まったりしてパーティーを開くんだ。それぞれが会費を持ってね」
「つまり、君たちは僕とパーティーに参加したいと」
「そ、そうです……」
「いいんじゃないかな。せっかくなら姫野さんも楽しんできなよ」
「君たちは?」
「僕たちは当日の企画運営をしなきゃいけないからね」
毎年行われているクリスマスパーティーの主催は、主に理事長である青葉と生徒会。企画から運営までその他諸々を担当しているのは生徒会である。
怜と渚は今年は生徒会のメンバー、裏方としてパーティーに参加することなっている。十分人手が足りているのもあり、葵には仕事の話が入っていなかったのだ。
「怜も賛成だよね?」
「なんで俺に聞くんだよ……別に参加申し込みをしっかりしておいてくれれば問題はない」
「だってさ」
「二人がそういうなら、快く参加させてもらうよ」
「ほんと?! ありがとう姫野さん!!」
「うん」
無事に姫野を誘うことができた女子たちはウキウキで自分たちの席へと戻っていった。
「それにしても予想通り姫野さんを取りに来たね」
「なんか複雑だな」
「まぁ、学年のマドンナとクリスマスパーティーに勧誘できるならしない手立てはないだろ」
「来たのが女子でほっとしてる自分がいる」
「確かにね」
葵と渚が苦笑している横で怜は外を見ていた。
元より怜はクリスマスパーティーに興味がない。そういったイベントごとはことごとくお断りしているため、目の前で誰かが勧誘されているのを見ているのは怜としてはあまりいい気分ではなかった。
「また放課後にでも生徒会室に寄って招待状貰ってね」
「わかった」
「……」
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「ねえ、なんでそんなにご立腹なの?」
「なんでもねえよ」
「えぇ……」
その日の放課後、怜と渚は当日に向けての打合せを行っていた。
ただ、なぜか不機嫌な怜に渚は頭を悩ませていた。
「もしかして葵ちゃんがパーティーに参加することを懸念してるの?」
玲奈が怜に問いかけると怜は下ろしていた視線を上にあげた。
「え、まじで?」
「俺の勝手な妄想だ。最悪の事態を避けたいがために考えてる」
「確かに、怜さんの言うことは分かります。私も葵がパーティーに参加すると聞いたときは目を疑いました」
葵の姉である薫ですらも葵がパーティに参加することは懸念している。
「毎年のようにパーティーに参加した一部の男子生徒が後輩の女子にナンパする事件が起こってる。それが原因でトラウマになった女子も少なくはない」
クリスマスパーティーとなれば必ず起こるのが主催の目を盗んだナンパだ。全学年の生徒が参加するこのパーティーで毎年、高学年による後輩への被害が後を絶たない。そのような行為をした生徒には跡がないということが噂になっているのにも関わらずに、そういった被害が出るということは年々問題視されている。
「全員が楽しめるパーティを開くにはそういった輩を一斉に排除することも視野に入れた方がいい」
「それには私も賛成です。せっかくの日なのに、最高が最悪に変わってしまうのは許されません」
「うん。みんなが楽しめるパーティーにすることが目的だから、今年はそういった被害が出ないようにしよう」
「僕も賛成です。徹底的に監視するようにしましょう」
満場一致でその日は当日の警備体制についての会議で終えた。
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読者の皆様こんにちは、またはこんばんは〜八雲玲夜です。
なんか物語の続き感覚であとがきを残してしまう形になってしまって申し訳ありません。
じゃないとあとがきやら何やらだけで話数が進んでしまうので許してください。
この度、『気づかないうちにマドンナから好意を持たれていた件』5000PV突破誠にありがとうございます。
だから早いんだって(´・ω・`)
つい最近4000PVの感謝したばっかりなのに、もう5000PVですよ!?
いくら何でも早すぎるでしょうよ。
これだとこのラブコメ小説の1割がお礼と感謝で埋め尽くされるような感じがして気が気じゃないんですけど……
ならやめればいいと思うかもしれませんけど、こういう感謝とかお礼ってきちんとしたい派なんですよね、僕の性格上。
なので、1割程度感謝とお礼で埋められても仕方ないと思ってこれからもことある事に最新話の最後にあとがき感覚で書かせてもらいます。
なので読者の皆様には今回みたいなあとがきのようなお礼のやつはおつまみ感覚で読んでく下さい。お願いします。
なぜだか自分でも分からないけどここまで伸びてくれてるのはとても嬉しいことです。
次の目標は6000PVかな(笑)
次にこの挨拶が出来るのがいつになるのか楽しみです。
前話ではちょっとややこしい話になりましたけど、この先の展開ではそのことは気にしなくていいです。(まじで)
気にしながら読んでると訳分からなくなるので、前話である49話の内容は忘れ去ってください。
もしかしたら49話が??話に切り替わる可能性があるので、割と本気で忘れ去ってください。
第50話からはいつも通りの平穏な日常が取り戻せるような展開にして行けたらな、とおもっていますので、何卒よろしくお願いします。
というわけで、改めまして『気づかないうちにマドンナから好意を持たれていた件』5000PV突破誠にありがとうございます!!
これからもこの作品をよろしくお願いします!!
そして、いつもこの作品を読んでくださる読者の皆様、本当にありがとうございます!!
では、6000PVを突破したときにまたお会いしましょう。八雲玲夜でした。
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