演劇少女、冥府の宮で王の身代わり演じます!

野月よひら

プロローグ


 大森アンナは、どうやら死んだらしい。


 目覚めたら、異様な場所にいた。

 黒々とした大きな門。その門を潜る、生気のない顔をした老若男女の人々の列。 おそろいの白い装束を身につけ、皆一様にうつむいて黙々と歩いているのである。門の入り口では厳めしい顔をした男たちが時代錯誤な衣を纏い、左右に人を振り分けている。

(な、なに、ここ!?)

 足元を見れば、砂利道。時折吹く強い風が、足元の土を巻き上げていく。アンナは自分が裸足で歩いていることに気づいた。よく見れば服装も他の人たちと同じ白い装束である。

「おい! お前!」

 銅鑼声とともに、髭面の大男がアンナをぎろりと睨んだ。そのままつかつかと近寄ると、人の列からアンナをひょいとつまみ出す。

「なに!?」

 髭男はアンナの顔をじっくり見ると、みるみるその顔を青くする。そのままがしりと首根っこを掴まれた。

「ちょっと、やめてよ!」

 ずるずると門の下まで連れていかれると、ぺっと手を放される。観察されていることに気づいて、アンナはぐっと息を呑んだ。

「やっぱり。お前、まだ生気があるな」

「は!?」

「たまにいるんだ、そういうやつが」

「まあ、運が悪かったと思って、諦めてくれ」

 そう言ってうなずき合う男たちを交互に見る。

(ちょっと待って)

 混乱する頭をまとめようと、アンナは一度首を振った。

「あの、悪いんだけどさ、私よく分かってないんだわ。教えてくんないかな。ここ……どこ?」

 その言葉に、男たちは顔を見合わせた。

「ここは、冥界だ」

「めい、かい」

「わかりやすく言うと、死後の世界だ。つまり、お前はもう死んでいる」


 今度こそ、アンナは目を見開いた。



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