鏡
少年が見える。髪をワックスで整え、身支度をしている。これから人に会うのだろうか。顔にクリームを塗り、髪型を整える。もう、かれこれ30分ほどだろうか。友人に会うには、いささか気持ちが入っているように思える。女性と会うのだろうか。或いは、尊敬する誰かと会うのだろうか。
こちらに気づくことは誰もない。皆、自分の姿を見つめるばかりだ。鏡が鏡であるために仕事をしている私という存在に気づきもせず。左右反転して見えるのは当然のことと思わないで欲しい。よく見えるように整えて映すのは手間だというのに。
昔は鏡に神が宿るとされて、丁重に扱われた。今は、コーティングされているからといって、ほったらかしである。
ありとあらゆる鏡は、私によって鏡となっている。映りこむものすべて鏡。
どうか磨いておいて欲しい。いつもいつも手垢を映し続けるのも面倒だから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます