魔法少女、ディグ
「うーむ。 階段崩れてるのうこれ……?」
メテオラは小脇にトモを抱え途方に暮れていた。
縦穴から22階層への階段が近すぎたのだ。トモが落ちた時の衝撃で、階段のあった場所は丸々砂に沈んでいた。
「これは少々予想外です。 掘るしかないですね」
トモの胸元からクーリガーが他人事の様に呟く。
その言葉に心底嫌そうにメテオラは溜息をつくのだった。
「掘るというてものぉ……。道具もなければ、力任せに掻きだしたらまぁた壊れかねないしのうどうするか?」
思案顔を浮かべるメテオラに対し、クーリガーは我に秘策ありといった様子で話始める。小脇に抱えられたトモの意識はまだ現世に帰ってきていない。
「我々の世界には穴をあける道具としてドリルという物があります。形状としては棒状の物にらせん型の刃が施された先端部が尖ったものです。それを回転させることで穴をあけることができます」
「ほほぅ。それは確かに便利そうじゃのう……。してそんな形状の物どこにあるというんじゃ?」
「マイスターの頭をご覧ください」
「んん……?」
そういうとメテオラはトモの頭をのぞき込む。
そこには赤々とした髪。そしてその横には黒く硬そうな鋭い角。
角はクーリガーがいう様にらせん状に刃が掘られていた。
「まさか、折れと……?」
「いいえ。多分折るのは難しいでしょうね。相当に頑丈なようですので。 ただそのまま地面に差して回転させればうまく掘れるんじゃないでしょうか?」
「正気かお主? お前の主人じゃろう?」
「まぁ怪我はしないでしょう」
「……判断基準はそれでいいのか?」
いくつか疑問があるが、確かに埒が明かないのだ。
メテオラは比較的、岩盤が多い場所を探すとその岩盤にトモを逆さまに突き立てる。
その衝撃でトモの意識は現実に引き戻されるが、次の瞬間力任せに身体を回されたのだった。
「いだっだだああああだあだっだあっだだあだだだあだだっだっだあだだだっだだががだだあだだだだだあ!」
数秒で身体全体が地面に埋まるとメテオラの腕に掛かる抵抗が急激に消えさった。
どうやら岩盤は2メートルもなかったようだ。
そのままトモを引き抜くメテオラ。メテオラが引き抜いたトモの顔を覗き込むと、憤怒の表情の闇落ち魔法少女の姿がそこにはあった。
土汚れは酷いが特にけ怪我は内容だ。
「お主ほんと頑丈じゃのう。ちょっとドン引きじゃわ」
「好き勝手地面にぶっ刺して言う言葉がそれか……」
「まぁお主のおかげで、周りが崩れずに穴が掘れたしのう。ありがとのぅ」
「へいへい。どういたしまして、ていうかどうせクーリガーが提案したんでしょ? まぁいいよ」
そういうと胸元の球体を力の限り摘まむトモ。その仕草にクーリガーは無言を貫くのだった。
(まぁいいのか……)
それなりに無茶をやった自覚のあるメテオラは、内心いままでクーリガーがトモに行ってきた仕打ちに思いを馳せ不憫に思ったのだった。
開けた穴の下へ二人は降りていく、その先は最下層22階ギルドの情報では謎の化け物はこの階層にいる可能性が高いとのことだった。
いい加減に二人の緊張も引き締まる。
最下層に入ってもやはりトモたちも魔物に出くわすことがなかったのだ。
7階の大広間で大立ち回りを演じて以来一匹も魔物と出くわさないままこの階層にたどり着いていた。メテオラはここからは虱潰しになると階段から全体を歩いて回ることを提案するがクーリガーから待ったが入る。
「マイスター。 この階層魔物の気配がまったくありませんね。 おそらくその化け物しかいませんね」
「ん?どういう事?」
トモがその言葉に反応するとクーリガーは話を続ける。
「一つ上の階層はそれなりに気配はありましたが、この階層に入ってからは一切ありません。 この階層はその例の化け物一匹が占拠している可能性が高いと感じます」
クーリガーの言葉に得心が云った表情を浮かべ、胸の下に腕を組みながらメテオラは何となく事情を察したように話だす。
「湧き潰ししとるのかもしれんのう……。どんな化け物が住み着いたんじゃここには……」
「湧き潰しって?」
「ダンジョンというのは、マナを利用して魔物が定期的に湧くといったじゃろう? そしてマナが集まって産まれやすいポイントがあるんじゃ。 そこに張って魔物を狩ることで
「つまり、この間戦った種と同様のものだったら、前より強いかもってこと?」
「まぁそうなるじゃろうな……。正直負ける気はせんが、この閉鎖空間で戦うのは最悪じゃのう。生き埋めになりかねん」
「あ、そうだよなぁ……。上層までつり出さないとまともに戦えない?」
「遭遇場所によっては足を止めての殴り合いじゃろうな」
「うへぇ……」
「まぁ生き埋めになったらお主を使って地上まで穴をあけるしかないのう」
「お願いそれはやめて!」
メテオラの冗談交じりの言葉にトモの絶叫が最下層を響き渡るのだった。
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