魔法少女、ダンジョンへ
酔いの醒めたメテオラを伴い、トモが再度ギルドに向かったのは結局冒険者免許を貰ってから二日たってからの事だった。
その二日間にメテオラの二日酔いは酷くここに描写するのもはばかれる痴態を繰り広げたのだった。
ギルドに着くとエステルも似たようなものだったらしく、受付嬢たちがお酒は禁止と念を押してきたのだった。
二階に上がるとエステルは不機嫌そうに出迎えてくれた。
「まったくこないだは酷い目にあった。 その馬鹿龍に加減を教えておけ」
「馬鹿龍とは心外じゃのう」
「うーん。自覚ない相手に出来ると思う?」
「無理か……」
「うん……」
トモはメテオラが飲み始めてから酔っぱらっていない瞬間を見ていないのだ。
本日の朝も二日酔い明けに係わらず、酒を飲んでいたのだ。
「それで? もう出るんだろう?」
「うん。まずはあてはないけど、動いてみようと思ってる」
「それなら朗報だ。 あの種おそらく見つかったぞ?」
「全然うれしくないんだけど?」
「まぁ目標がないよりはいいでしょ? まずはダンジョン都市のひとつ、バルドに行ってみなよ。 最近あそこのダンジョンの一つ――ひび割れの断崖窟の深層が物騒になってる。 被害者はそろそろ3桁に届くらしい」
「詳細はわからんのか?」
「さっぱりだね。 とりあえず、やばい
「そんなに確度が高い情報なのかのう? 今んとこ情報不足に思えるが?」
「ノームが出たんだよ。 人の子よ助けてくれと」
「ドライアドと一緒じゃな……」
「そ! ノームとドライアドは同格の地に宿る精霊だ。それが助けを求める事態なんて、そうそうあるもんじゃない。 少なくとも、勇者や英雄クラスじゃなきゃ対処不能だが……、残念ながらそのレベルはアルデイド王国の件で出払てる」
「そういえばこの二日でそっちにはなにか動きがあったのかのう?」
「あぁ……あれ? 勇者召喚されたよ、しかも火竜王の槍もその勇者の物になったらしい。 ジャイドはトラの尾を踏んだようだ。 いくつ国が亡ぶんだろうな……」
そういうエステルの眼は死んだ魚の眼をしていた。
その話を聞いてメテオラは「わしが行こうかのう」というが本気でやめてくれとエステルは懇願するのだった。
「本当に行かなくていいの?」
トモはギルドを出ると、メテオラにアルデイドに行かなくてもいいのかと聞いてみた。父の形見とは違うが、封印されたものが使われているのだ。何か思う事はないのだろうか?
「まぁ300年も放置しておいて今更持ち主が変わったからと慌てて出るもんでもなかろう。 父の意識があるかも定かではあるまいし、まぁ悪用されぬなら放置でいいじゃろう」
どうやらほんとに今まで特に感慨もなかったようだ。
それよりは、今回の様な交渉が不可能な化け物の対応の方が優先度が高いらしい。
基本的にだらしがなく我欲塗れの龍だが義侠心というか、正義感が案外強いことをトモは短い付き合いながら感じていた。
「そういえばバルドってどこにあるの?」
「あぁ、三大国の一つカーリシアの東側じゃな。 馬車でもよいが、わしの背に乗れ、二日もあれば近くの森に降りれるじゃろ」
「へーちなみに馬車だとどのくらい?」
「10日は掛かるじゃろうな」
「それはやだ。 まぁ大変みたいだし急ごうか」
「了解じゃ」
その後トモたちは大量に物資を買い込み翌朝街を出る。
その物資の大半はメテオラの肉と酒であった。
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