魔法少女、神様の持ち込み企画

「最悪すぎる」


エステルはこの言葉を何度も唱えていた。

メテオラはその姿を肴にどこからか持って来たのか酒瓶を開け、何が楽しいのか大笑いしている。

二人の横のトモは「何だこの状況……」と呟いた。


一通りこの世の理不尽を嘆いたのち、エステルはトモに向き直りジト目で詰問を始める。


「で? この子が恩寵もなしにこんなに強いのはなぜよ?」


トモはメテオラに目で確認すると、メテオラは黙って頷いた。

それを確認し、トモは「よくわかんないけど」と前置きし語り始めるのだった。


「私自身はこの世界で大分力は制限されている気がするけど、元々あった力だよ。魔法少女の力。願いを媒介に世界を変える力。誰かを守る力」


鶴精カクセイと同じこの世界と別の理か……」


「エステル、カクセイってなに?」


「108の魔剣を収集している異世界からの来訪者だよ。ヘルモルトの持ち込みの……、あれの足取りはつかめてないけど未だに探し回っていると思う」


「へぇその人も強いの?」


「龍殺しをやってのけたよ。神代の龍を殺してる。 あ……、そういやメテオラ、あんたのおやじ使われたよ?」


エステルは何かを思い出したように、メテオラに話をふった。

その言葉に対して、メテオラは珍しく慌てた様子を見せるのだった。


「なんじゃと? 魔族共の内戦でも終わったというのか?」


「違うよ。 ジャイドがアルデイド王国を攻めた。 おそらく王族の血と技を取り込むためだ。 ジャイドの新王は野心と武勇の塊だったからね。 本気で魔族と戦争する気らしい」


「なぜ三大国が止めぬ? あやつらは安寧を良しとしておるじゃろう?」


「神託があったのさ。 神聖皇国の聖女様のね。 機は来たれり、勇者の再来の時である。 この戦乱は聖火となり悪を燃やし尽くすであろうってね」


「10000年の安寧の眠りからこの世界を覚ますつもりかあの神たち《馬鹿ども》は!」


「さぁね? 神々の意思は我ら下界の民には預かりしらぬ事さ。 とりあえず、ヘルモルトの仕込みに合わせて、いろいろ動き出したのは確かさ、魔族側も今回はそろそろ動くだろう」


「あのー? メテオラのお父さんって龍でしょ? 使われるってどういうこと?」


話がひと段落した様子の二人に、蚊帳の外だったトモがおずおずと質問する。


「あぁ我が愚かな父は、武運拙く討ち死にした挙句、封印されたのよ。 鶴精によってな、一本の魔剣の鞘替わりにされておる。 下手に使えば、使った者も焼き殺される諸刃の槍としてな。 あんなもん引っ張り出して、ジャイドの連中は何を考えておるのだ?」


「おそらく内乱で手に入れた玉座の新王には正確な由来が失伝したんだろうね。 ギルドでも生き字引のエルフどもが慌てふためいてやっと知ったぐらいだよ、あの槍のやばさは」


エステルは厄介ごとの連続にやだやだと、首を振った。

その一連の話にトモは心配げな顔を見せメテオラを労るように話しかけた。


「それってメテオラは悲しくないの? 勝手にお父さんを道具の様にあつかわれて」


「暴れ狂うた挙句にむざむざ封印された愚かな父じゃからのう。 特になにもおもわん」


「あっそうなんだ?」


龍の親子事情は冷え切っているようだ。


「まぁそういう訳でギルドは、喫緊の問題としてはアルデイド王国の件でいっぱいだ。 槍が使われたことしかまだ情報がないけどその内禄でもない第二報が届くのが間違いない。 そうなると、その肉の種の対応には手が回らない訳だ。 わかったよトモ、君に立場をやる。 金級冒険者としての地位と、私エステルの子飼いの冒険者っていう噂を流してやる。 これで下手に詮索する馬鹿は減るはずだ。 それでいいかい?」


とりあえずは十分すぎる内容だった。これで冒険者ギルドの影響があるところでは問題なく動けるだろう。

メテオラは話が終わったとばかりに再度酒を飲みだした。

どうやら、エステルはその酒に付き合うつもりのようだ。

トモは付き合っては居られないと、その場を後にする。

部屋を出るときにエステルから、明日昼にこいと言われそのまま部屋を後にするのであった。






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