魔法少女、大剣片手に……
森の中をトモ達は進む。
向かう先はシエナ王国。大陸の北に位置する大国だった。
深緑の景色は、北に進むにつれ紅葉が見られ、味気ないばかりの森の景色に彩を添えていた。
この世界に来てから、トモは魔法の発動に苦労をしていた。
複雑な魔力操作を必要とする魔法はまだしも飛行魔法すらおぼつかない。
位相空間に空間を繋ぎ、物の出し入れといった割と便利な魔法は使えたのは行幸だったが、それ以外は単純な強化魔法を何とか使えるぐらいであった。
魔力に任せた魔術砲なんかは、大気中のマナが濃すぎて、誘爆の恐れがあるとクーリガーから止められていた。
メテオラのおかげでこの世界の魔法理論を覚えた(クーリガーが)ので其のうち解決することだが、現状はトモにできることはそれこそ大剣をもって突っ込むことだけだった。
まずは街に入ってからだ。そう思い、先に進んでいたある日のことだった。
唐突に美しい女性が二人の前に現れた。
その肌は半透明で頭部には気の枝が生えている。
「ふむ。ドライアドか……なにようじゃ?」
ドライアド、森の管理者。木々の妖精である。
その管理者は二人の前に現れると、突然頭を下げた。
「太古の火龍メテオラ様、どうか我らにお力を貸してくださいませ。 森で暴れる化け物退治をお願いしたいのです」
「? ドライアドですら手に余ると? なんじゃそれは?」
トモは蚊帳の外で話が始まった。
「正直何がなんだか、ただ20日ほど前に空から急に落ちてきたのです。森に入ったきこりに寄生したようで暴れだしました。 一度私が戦った時に眼をつぶしたのですが、今度は触手を生やして辺りを手当たり次第に破壊していきまして……。ただ一言、魔法少女、と呟くばかりで意識も希薄な様子でした」
「魔法少女? トモ? どうした? 顔が青いぞ」
「ううん? 大丈夫だよ? なんでもない!」
トモはその単語に心当たりがありすぎるほどにあったが
しかし、一向に目を合わそうとしないトモにメテオラは何か知っていることを感じた。
トモの頬をメテオラは両手でつかみ正面を向かせる。そして目線を合わせて話す。
「トモ、いいからはなすのじゃ。 隠しても無駄じゃ」
その目は疑いの眼差しでじっとりとトモを見ている。
「いやーあのー、魔法少女って私なんだ……。 おそらく、ヘルモルトが言っていた使命ってそいつかなーって……えへ? えへへ?」
「エーレンゼルの神とかいう、異世界の神かの? はぁ、さっそく面倒ごとが見つかったというわけじゃな?」
メテオラは呆れた様子で、内容を確認するとトモの頬を離す。どさりという音とともに落ちたトモは、お尻を押さえ「痛い!」と抗議した。
「ドライアド、待たせてすまんだ。
そういうと龍の姿に戻り、森の上空に飛び上がるメテオラ。その背にはドライアドが飛び乗った。
そしてすぐに、彼女たちは西へ飛び去っていた。
置いて行かれる形となるトモに、クーリガーは一言話しかける。
「いいんですか? ほっといて」
「あのヘルモルトとかいうやつの言うとおりに戦うのは気に入らない。 あいつを思い出す。 気に入らない。ほんとぉに気に入らないけど……、こっちで初めてできた友達が一人で戦うのはもっと気に入らない! いくよクーリガー!」
トモはドレス位相空間より大剣を取り出し、彼女たちが向かった西へ走り出した。
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