しっぺ返し
闘技大会ハードモードの決勝戦での相手はヒカルだとわかるとリョウガはニヤリと笑みを浮かべる。ついにこの手で引導を渡せると思うと笑いが止まらないのだ。リョウガはどう痛ぶってやろうかと考えながら、試合がいつ始まるのかを今か今かと待ち侘びる。
◇
一方、ヒカルの方は準決勝を勝ち進み、決勝戦の相手がリョウガであることを確認する。
「まさかリョウガがここまでくるとはな…属性無しな分、他の分野を徹底的に鍛え上げてきたのか…。そういえば身体能力テストで彼は上位だったな…。魔法のことばかり見てたためにそれ以外を見落としていたのか…」
迂闊だった。とヒカルは呟く。今までリョウガを馬鹿にしてきたつけがまわってきたのだろうかと。現にガレット、ライネール、レイカもリョウガにほぼ傷一つ与えられずに敗北している。それにリョウガに様子もおかしいのだ。ガレット達を倒した時、リョウガの顔が悪魔のような笑みを浮かべていたことを。まるで相手を打ちのめすのを楽しんでいるかのように。
「何はともあれ、今度の彼は一筋縄ではいかないか。…いや、今までは僕達にとって優しすぎたんだ。全力でいかねば必ず負ける…」
ヒカルはそう決意しながら決勝戦の対戦表を見つめるとステージに向かった。
◇
『第一回闘技大会ハードモード決勝戦だぁぁぁぁ!!!』
「「「うおおおおおおおおお!!」」」
『ついにこのハードモードも決勝戦!優勝を掴み取るのはどっちだ!?』
司会者の話と共にリョウガとヒカルが入場してくる。
「「「キャー!!」」
「ヒカルくーん!頑張ってー!」
(そういやこいつ、結構モテるんだったな)
リョウガはヒカルを応援する女子達を鬱陶しく思いながらも、ヒカルがモテるということを思い出した。だがリョウガにとってそんなことはどうでもいいことだ。今の彼は相手を打ちのめすことしか頭にない。
両者がステージに上がると、ヒカルが話しかけてきた。
「リョウガ、まさか君がここまで来るとは思ってもみなかった。そこは素直に称賛しよう」
「……」
ヒカルは感心の目でリョウガを見据えるが、リョウガは不機嫌そうにヒカルを睨む。どうやらそんな気などさらさらないだろうと思っているようだ。ヒカルもリョウガの表情を見て察したのか口を開く。
「別に馬鹿にしてなどいない。これは正真正銘、君を評価している。正直、僕も負けるんじゃないかと思っている。だから僕は…初めから全力でいかせてもらう!!」
『おーっと!ヒカルは最初から全力でいく宣言をしたぁぁぁ!!』
「……」(挑発の仕草)
『ミスター・ルーザーもヒカルに対して挑発だあああ!!』
(もはや、彼はもうルーザーじゃない。全力で倒すべき相手だ!)
ヒカルはもうリョウガをミスター・ルーザーと呼ぶことなどできない。今のリョウガは全力で挑まなくてはならない相手なのだ。
「いくぞリョウガ!」
『レディー…ファイト!!』
カーン!
「ハアアアアアア!!」
試合開始のゴングが鳴ると、ヒカルはリョウガに向かっていく。リョウガはその場から動かない。
(…!誘われてる…!)
そう察したヒカルは止まろうとするが急には止まれずリョウガの目に前まで迫る。するとリョウガが右手を出して、ヒカルを掴もうとしてきた。
(不味い!!)
ヒカルは掴まれそうになるが間一髪で後ろに下がり、なんとか免れた。
「チッ…!」
リョウガが不機嫌そうに舌打ちする。
「まさか誘われていたとは…。迂闊に近づいていたらどうなっていたか考えるだけでゾッとする。ライネールのように一瞬で決まっていたかもしれない…!」
「……」(挑発の仕草)
(また挑発…同じ手も通じないのはリョウガもわかっているはず…何か隠しているのか?それともただ浮かれている?クソ…、魔法が使えればキラハンドとダクハンドをけしかけることができるのに…!)
ヒカルが考えているとリョウガがいきなり動き出し、一瞬でヒカルの目の前に迫る。
(…ハッ!しまった!考えすぎて注意が散漫に…!!)
リョウガの拳がヒカルの顔に迫る。だがヒカルはリョウガの腕を掴んでなんとか止める。
「くっ…!ハァ!!」
ヒカルはリョウガを押し出して少し下がらせる。リョウガは終始ニヤついており、ヒカルはそれが不気味で尚且つ、何を考えているか全く読み取れない。
(思った通りだ。ヒカルのやつ、
リョウガはヒカルの弱みがわかったようで、誘い込みを辞めて、今度は自分から攻めにいった。
『なんということだ!あのリョウガがヒカルを攻めにいっているぞ!ヒカルは逃げに徹している!どうしたヒカル!らしくないぞ!』
「おい、あいつまで…」
「もしかしてあいつも口だけで大したことないとか?」
「というかナナセのことも敗者って呼べねえじゃん。あいつほぼノーダメージだぜ?」
他の生徒達もヒカルに対する不満やリョウガに対する評価について話している。ヒカルもそれを聞いて、余計に焦り出す。
「もしかしてクラヤミもさ、さっきの三人と同じように本当は弱いんじゃね?」
「…!!」
一人の生徒がそう呟いたとき、ヒカルは拳を握り締めた。
(…弱い?この僕が…?)
ヒカルがあからさまに不機嫌になったのをリョウガは確認すると攻撃を辞めて再び挑発した。
「……!!!」
プツン…
ヒカルの中で何かが切れる音がした。するとヒカルは一気にリョウガに距離を詰めた。
(僕が…こんな属性無しの雑魚なんかに…!こんな調子に乗った奴に負けるなど…!!)
「あってたまるかあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
普段の冷静でクールな態度はどこいったら、怒りの表情でリョウガに向かって拳を振るう。リョウガもヒカルに向かって拳を振るった。二人に拳が交差し、互いの頬に拳が当たった。
「「「!!」」」
闘技場全体が静かになる。二人は互いの拳で顔が潰れていた。
「…う…うぅ…!」
ヒカルが目に涙を浮かべる。リョウガはニヤりと笑い、生徒達はどうしたんだとざわつく。すると…
「うわああああああああああああん!!痛いよぉぉぉぉぉぉ!!」
ヒカルが殴られた頬を抑えて悶えながら泣き出した。その姿に全員が呆然とした。ステージ上での泣き叫びは、あまりにもみっともないものだからだ。
(ヒカル、お前は昔から痛みを極度に恐れていた。転んだだけでも大声で一日中泣き喚く泣き虫っ子だったんだよな。やれやれ、キラハンドとダクハンドに頼り過ぎてそこんとこは全然鍛えられてない。変わんねえな、お前も)
ヒカルの情けない姿に呆れつつもリョウガはさっさと場外に落として決着をつけようとヒカルに近づいた。
「ま…待って!降参!降参する!もう痛いのやだあああああああああ!!」
『クラヤミ・ヒカル降参!勝者、ナナセ・リョウガ!!』
ヒカルがまさかの降参で決着がついた。
『どういうことだああああああ!!ヒカルがまさかの降参!?たかが攻撃一発入れられただけで泣き喚いたと思いきやそれだけで降参だとぉぉぉぉ!?情けなさすぎるぞぉぉぉぉぉぉぉ!!』
司会者が驚きの声を上げると、観客席全体がざわつきだす。リョウガはまだ泣いているヒカルを放って、その場を去った。
「やったー!リョウ君が優勝したあああ!!」
「いや、優勝したのはしたけど、なんか締まらないわね…」
マインはリョウガが優勝して大喜びするが、ゼリームはなんか思ってたのと違う感じだった。
「要するにあのキザ野郎はカッコつけてるだけでやたら打たれ弱かっただけのことよ!」
「ふん…情けないにも程がある」
ジャレッドとヤミロウはヒカルの情けない姿に呆れるしかなかった。
「だがリョウガ、よくやった!まさか優勝までするとは思っても見なかった!第一回闘技大会ハードモード優勝者は、ナナセ・リョウガ!お主だ!」
テレンシアはリョウガを心から祝福し、称賛した。これは属性無しでも輝けるということを証明したのだから。
◇
「「ブー!!ブー!!」」
「ノコノコやってくるんじゃねえ泣き虫が!」
「俺達に散々偉そうな態度取っておいてなんだあのザマは!」
生徒達はブーイングの嵐だった。その矛先はヒカルに向けられていた。
「ちょっと!流石にやり過ぎよ!」
「そうだ!確かに決勝戦はあれだったがヒカルだって最後まで戦ったのだ!」
「彼だって決勝戦まで勝ち進んで来たんだからそこまで言わなくても…」
責められるヒカルにガレット、ライネール、レイカが割って入り、彼をフォローするが…
「うるせえ!お前もだよボルテージ!あんだけ大口叩いておきながらナナセに一撃も当てられずに負けた癖に!」
「うぐぅ…!」
「お前もだよアーリック!たった十秒程で簡単に負けやがって!よくもまあそんな偉そうなことが言えるな!」
「…っ!」
「サクライもそうだ!たった二発であっさり負けて!何が実力者だ!」
「うっ…!」
ガレット、ライネール、レイカまでもバッシングを受ける。言い返そうにも本当のことなので何も言えないのだ。
『つ…続いては、優勝者ナナセ・リョウガだ!』
司会者の声と共にリョウガがやってくる。しかし、あたりは静かだった。
『まさかあのミスター・ルーザーが優勝してしまうなんて…!やっぱりなんか反則とかしてたんじゃねえのか…!?』
「そこまでだ!」
司会者はリョウガが優勝したことに納得がいかないらしく、証拠もないのに反則したのではないかと疑っているとテレンシアがやってくる。テレンシアは司会者を睨みつけていた。
「優勝したというのにまだ敗者呼ばわりするのか。彼は不正など行なっていない。正真正銘、彼の純粋な実力だ」
『テレンシア学園長、しかしいいのですか?こいつは属性無しですよ?こんな奴が優勝なんて今までエリートだった彼らが不憫で…』
テレンシアはリョウガは純粋な実力でここまで勝ち抜いて、不正は全くないことを話すが司会者はどうも納得いかない様子。だがテレンシアからしてみれば、司会者の言うことはただの差別にしか聞こえないのだ。
「もういい。貴様はクビだ」
『…え?』
テレンシアの急なクビ宣言に司会者は目を丸くする。
「貴様の言うことはただの差別だ。ましてや一生懸命勝ち抜いた者さえも侮辱するとは…そんな者に司会者の資格などない!」
『が…学園長!俺がクビになったら…!』
「お前の代わりなどいくらでもいる」
『あ…あ…!お…おめでとう!!ナナセ・リョウガ選手!!実に見事な戦いだった!!優勝おめでとう!!』
掌を返して、リョウガを称賛しまくる司会者。だがリョウガはちっともいい感じがしない。
『優勝は君だ!!まさにスーパーでビクトリーな勝利者!!勝利の女神は君に微笑んだ!!ウルトラビックな大勝利だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
必死にリョウガを煽てる司会者だが、その心境は“褒め称えるので許してください”と訴えているかのようだった。テレンシアは表情を変えず、司会者に近づく。すると司会者はさらに必死にリョウガを煽てる。
『君こそオンリーワンな勝利者だ!!泣き虫な雑魚なヒカルとは違って誰も寄せ付けず、とてつもなく打たれ強い絶対的な勝利者で優勝者!!!皆さんもご唱和ください!!!彼の名を!!!絶対無敵のウルトラスーパーアルティメットビクトリー勝利の神!!!ナナセ・リョウガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!』
ピキーン!
「見苦しいぞ。今更褒め称えたところでもう遅い。貴様のクビは決定事項だ」
必死の媚びも虚しく、司会者はテレンシアにより凍らされ、ようやく静かになった。
「つまみ出せ」
テレンシアがそう言うと、黒服の男が二人現れ、凍らされた司会者を担いで去っていった。そして優勝トロフィーを持ったテレンシアはリョウガの前に立つ。
「見事な戦いぶりだった。この功績は語り継がれていくだろう。おめでとう!」
テレンシアはリョウガトロフィーを渡す。リョウガが軽く会釈しながらトロフィーを受け取った。
「第一回闘技大会ハードモード優勝、ナナセ・リョウガに大きな拍手を!!」
シーン…
テレンシアが生徒達にそう叫ぶが生徒達は誰も拍手しようとしない。
「…なぜ拍手を送らない?お主らも差別をするというのならこちらも然るべき処置をさせてもらう」
テレンシアが少し圧をかけながらそ言うと少しずつ拍手が起きる。だがまばらであった。
「はぁ…いつから学園はこんな風になったのだ」
少々締まらないが無事に闘技大会ハードモードは終了した。
◇
[リョウガside]
「やったねリョウ君!!」
「まさか優勝してしまうとは恐れ入った」
控室室に戻るとマイン達がいて、俺の優勝を祝福してくれた。正直なところ、俺自身も驚いている。まさか優勝できるとは思ってもみなかった。とはいえヒカル達が大したことなかったについても驚いている。魔法がないだけであんなにポンコツになるなんてな。俺からも言える。あいつらの敗因は極度の傲慢さだな。
「リョウガ、お主は属性無しでも輝けるという証明を果たした。この先、属性無しの者にとっての希望になり得るだろう」
テレンシアの言うことは最もだ。属性無しは滅多にないが、俺の他にもそう言う人がいるかもしれない。そんな人の為にも、俺は属性無しでも輝けるという証明をしなければならなかったんだ。だけど俺だけならここまで来れなかった。責めて今ここで…
「……!」
「ん?どうしたのリョウちゃん」
「……!…ゥ…ァ…!」
「リョウガ、無理しなくてもいいよ?」
止めないでゼリーム。頼む…!出てくれ!もう少しなんだ!
「……アリガトウ…」
「「「!?」」」
◇
「おい今リョウガが…!」
「喋った…!」
ジャレッド達は確かに聞いた。ぎこちないがリョウガが自分の声で喋ったのだ。初めて聞いたリョウガの声に一同は驚愕する。
「…へっ!ようやく自分の声で話したか!こいつめ!」
「イタイ、イタイ…」
ジャレッドはリョウガの頭を軽く小突く。しかしリョウガにとっては強すぎる為、痛がった。
「リョウガの声、初めて聞いたが、妙に懐かしい気がする。昔会った事がある人を思い出させる」
シトラスはリョウガの声を聞いてかつて会ったことがある人物を思い出していた。
「オレガ…ココマデ…コレタノ◯×◇+$¥|」
「無理をするなリョウガ。要するに“自分だけではここまで来れなかった。ありがとう。”と言いたいのだろう?」
テレンシアがリョウガの言いたいことを翻訳してくれた。リョウガはそれに頷く。
「ふん、俺達は特別に何かやったわけじゃねえ。全てはお前の潜在能力が結果を出しただけのこと」
「もうヤミロウったら素直じゃないんだから!」
イフはヤミロウの背中をトントンと叩く。ヤミロウは顔を顰めてため息をついた。
「僕も…リョウガみたいに強くなれるのかな…?」
ワルフィーが恐る恐る口を開くと、テレンシアが答える。
「ワルフィー、お前も高い潜在能力がある。特に射撃の腕は目を見張るものがある。今のお主に必要なのは立ち向かう勇気だ」
「勇気…僕にできるかな…」
「デキルヨ…ソノキガアレバ…」
リョウガもワルフィーに激励を送る。ワルフィーもそれを聞いて頑張ってみようかなと思い始めた。
ワイワイガヤガヤ
「ん?外が騒がしいな。何が起きている?」
外が何やら騒がしいようでリョウガ達は外に出てみるとそこには他の生徒達からバッシングを受けているヒカル、ガレット、ライネール、レイカがいた。
「お前ら、前々から属性二つだったりとかで偉そうにしてて腹立ってたんだよ!」
「魔法がなけりゃ、属性無しにも負けるクソ雑魚だとは思わなかった!」
「挙げ句の果てには一発殴られただけでわんわん泣き喚く始末!本っ当に情けない!」
「こんな奴らを推していた私達が馬鹿みたい!」
生徒達はヒカル達に向かって罵倒しながら、ゴミなどの物を投げつけていた。
「おい!貴様ら!一体何をしている!!」
テレンシアが叫ぶと騒がしかった生徒達が一瞬で静かになった。
「騒がしいと思ったら、今度は敗者の責め立てか!貴様らは誰かを差別したり、負け犬扱いしたりしないと気が済まないのか!!恥を知れ!!」
テレンシアが生徒達に向かって大声で言い放つ。するとリョウガが前に出て、ヒカル達の前に立つ。
「リョウガ…?」
テレンシアはヒカル達をフォローするのかと思った次の瞬間、リョウガがニヤリと不気味な笑みに変わる。
「ヨウ…マケグミヨニングミ…。カクシタニミテイタヤツニマケタキブンハドウダ?」
「な…!?」
リョウガはヒカル達を馬鹿にし始めたのだ。
「リョウガ…お前喋って…!」
「何よ!負けた相手に対しその態度!」
「流石に酷いわよ!」
「リョウガ!そういう発言はやめるんだ!余計に人を傷つける!」
「ヒトヲ傷つけルだト…?お前ラガ俺にシタコトをワスれたのか?都合ノイイ奴ラめ…!!」
リョウガのぎこちない言葉が段々と流暢になっていき、喋れるようになっていく。
「これを聞いテモ同じことが言えるノカ!?」
リョウガはスマホを取り出すと、音声を再生する。
『おめでとう。ミスター・ルーザー君。君は誰でも勝てる相手として認められた。これからもいい噛ませ犬として活躍してくれたまえ』
『彼が最下位をだから他の人が最下位を免れる。立派なことじゃないですか』
ミスター・ルーザーとあだ名という蔑称をつけて笑うヒカル。
『このガレットに挑むとはな!!その度胸は認めてやろう!!最も、お前に勝ち目はないだろうがな!!』
『挑戦するのはいいがまた俺に負けるだけのオチだ!棄権することを勧めるぞ!ガッハッハッハ!!』
勝ち目はないと露骨に決めつけてあからさまに見下しているガレット。
『リョウガ君は何やっても無駄でしかないのよ。責めて最下位を維持して誰も最下位にさせないくらいなら役に立つかもね』
『何でこんな何もできない奴と今まで付き合ってたんだろう…。自分が馬鹿みたい』
努力を全否定し、別れを切り出してリョウガの心を抉るレイカ
『ほら来なよ!リョウガ!もう立てないの?魔法でも使えばいいじゃん。あ、属性無しだから魔法使えないんだった!ごめんね〜!』
『何その目?無能な癖にうちに楯突くって言うの?無能は無能らしく底辺を這いつくばってろ!!』
何もできない相手に容赦なく攻撃を加え、偉そうにするライネール。
これはヒカル達のリョウガに対するあまりにも酷い仕打ちだった。
「お前らハ俺に対してあんな事言っテおきながら、いざ自分達ガ言われてみれバ被害者ヅラしやがって!笑わせるな!飛んだ偽善者が!!」
「「「…っ」」」
ヒカル達は何も言い返せず、ただ俯くことしかできなかった。
「それにお前らから学んだことがある。他人を蹴落として見下すのは意外と楽しいものだってな!お前らがいつも俺を蔑む理由がよくわかったよ」
リョウガは知らぬ間に他人を蹴落として見下すことが快感になってしまっていたのだ。それを聞いたテレンシア達は愕然とした。それにリョウガの喋り方もいつに間にか完全に治っていた。
「それに俺はもう属性無しなんかじゃない」
そう言いながらリョウガは手から星属性の力を少しだけ出した。
「なんだそれは!?火でも水でも雷でも…!どの属性でもない!?」
「どういうことだ!?」
ヒカルとガレットが驚いていると、リョウガはそれに答える。
「星属性と俺は呼んでいる。まだ不完全みたいだがいずれ完全に扱えるようにしてみせる…。普通の闘技大会でも優勝は貰う。覚悟してろよ。見掛け倒し供」
「「「…!!」」」
「お前らもだ」
リョウガは他の生徒達にも指を刺した。
「一人一人覚えているぞ。お前らも揃いも揃って俺を見下しやがって…。いずれ俺がお前達を打ち破って下に敷いてやる。覚悟しとけ…!」
リョウガはヒカル達や生徒達をギロリと睨むとその場を去っていった。テレンシア達は初めて会った時の覚悟と決意に満ちたリョウガが今は他人を蹴落として愉悦に浸る歪んだ性格になっていることに驚きを隠せなかった。
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