サレ妻の想い 完
朝香るか
予感
第1話きっといつかは
中学生時代から、自分は容姿に自信がなかった。
高校時代に今の夫に出会った。
「こんな容姿ではみんなに笑われるし。自分に自信ないんだ」
「そんなの関係ないじゃん。
それでもいいよ。僕がそれ以上に好きになればつり合いが取れるよ」
それでもいいと言って、笑ってくれたのが今の夫だった。
「恥ずかしいとか思わないの?」
「そんなこと思うわけないじゃないか。
勿論交友関係があるから、
全く女性と話さないというのはできないけど、努力はするし」
きっちりと夫はその言葉を守ってくれていた。
進学してもそれはかわらず、この人なら信じていけると思った。
20歳の付き合った記念日に彼から婚姻届けを書いてほしいといわれた。
「絶対に守るし、君のことを幸せにするよ」
その言葉を信じて婚姻届を書いた。
間違いがないかどうかヒヤヒヤしていたと思う。
こんなに大切な紙は人生で、なかなかないと思う。
最初は会社の飲み会だといった。
(まぁ、コミニケーションは大切だものね)
不安だったけれど、彼と過ごしてきた時間は親族の次に多いのだ。
信頼し、安心するしかない。
次に女モノの香水が香るようになった。
いくらオシャレに疎いからって鼻は敏感にほかの女の気配を察知した。
どれだけ近くで飲んだら香水が移るまで行くのだろうか。
経験がないから一番近くで飲んでいる図しか想像できない。
それが間違いなのか、想像のし過ぎなのか。
問い詰めても会社の付き合いで飲んでいるとしか言わない夫。
「大丈夫。心配することはなにもないよ」
なんとなく嘘をついていることが分かった。
目が泳いでいたから。
それでも自分を納得させる言葉を探す。
きっと仕事の付き合いでしなくてはならないことがあったんだ。
その場のノリとか盛り上げなきゃとかあるんだろう。
問い詰めたい。
しかし、夫の嘘に乗ってやるのも妻としてのやさしさなのだろうかと
自分に問う。
女の自分にとっては屈辱でしかないが、
男の立場としてそのようにふるまわないといけない場面だってあるかもしれない。
無理に自分に言い聞かせる。
納得して、夫婦を維持してきた。
ラブホテルの領収書を見るまでは。
なんども見た。
ただのビジネスホテルの領収書だと思えたらどんなに楽だろう。
それからは夫婦をしようと思わなくなった。
行ってらっしゃいも言う。
お弁当も作る。
今はまだ子どもがいない。
別れるのなら今だ。
ただ、証拠がない。
一応ラブホテルの領収書は取って保管している。
そのホテルの会員カードももらっておいた。
しかし、これだけでは弱いだろう。
携帯を盗み見る事には躊躇がある。
私個人の財産は乏しい。
ある日、夫に聞いてみる。
「扶養内で働いてもいいかしら?」
「うん? 今の小遣いじゃ、たりないかい?」
「社会に出たいの」
「良いよ。扶養内なら」
扶養内。
この言葉が重くのしかかる。
別れたら一人で生きていけるだろうか。
今度は別の不安は募る。
しかし、今のままいても不安しか得るものはない。
☆☆☆
扶養内でも行動する方がましだった。
彼のために掃除をし、彼のために食事を作る。
これは信頼して相手を思いやっているからこそできることだ。
愛情が冷めた相手に同じように尽くすのは苦行といえる。
少しでも自分のためにお金を使えればいいと思う。
もっときれいにもできるし、そして探偵を雇うこともできる。
ネットで基本料金を調べてみる。
「少し足りないわね」
もし本当に慰謝料という話になっても
彼の給料から見てそんなに取れるとは思えない。
離婚するにはそれ相応の理由が必要だから。
必死に耐えて、笑顔を崩さずに日々生活している。
毎日、毎日なんであんな男なんかと結婚したのか自分を呪う日々を過ごした。
1年後、ついにお金がたまった。
「復讐の始まりだわ」
いそいそと目を付けていた探偵事務所に連絡を取るのだった。
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