第3話 能力

 「俺は悪噛狼平わるかみろうへい!てめぇをぶっ飛ばしに来た!」

 「は?何言ってんだオメー。頭沸いてんのか。いきなり殴りかかってきやがって…!」


 なぜ…なぜ。


 「は?沸いてねぇーけど?そっちの方が沸いてんじゃないか?とにかくぶっ飛ばしに来た。覚悟しやがれ」

 「いや、俺やらねぇよ?そもそもそういうことからは足洗ってんだよ」

 「逃げる気か?天下の桃佑様が?」

 「知らねーよなんだよそのダッセェ名前」


 なぜこうなった?





 ◇◆◇





 「すまない、超能力部はここだろうか?」

 「はい?」


 ガラガラっと扉を開けたのは剣道衣を着た女性の人だった。そして、その手には木刀を持っていた。

 今、部屋にいるのは私しかいない。つまり、私がなんとかするしかないのだ。


 「は、はい!超能力部です!」

 「あぁ、鬼円はいるか?」

 「へ?鬼円君ですか?」


 その女性は鬼円を見つけようとしていたのだ。

 鬼円なら確か…外に出ると言って帰っちゃったっけ?どうしよう。

 とにかく鬼円のことを伝えることにした。


 「鬼円君なら帰ってしまって……」

 「そうか。なら、今度来た時にこれを」

 「木刀…ですか?」

 「あぁ。彼の木刀なんだ」


 へぇ、鬼円君って木刀持ってたんだ。

 え、腰に刀(?)を付けてるのに?木刀いるの?練習用とか?ちょっ、重っ!

 木刀を手に取った瞬間、グラウンドの方から大きな音が鳴った。そちらの方にある窓を見ると、土埃がグラウンドで舞っていた。

 ナニアレ?


 「土埃……?」

 「えぇっ!?爆発でも起きたの!?」


 すると、私たちの近くにあった窓がピシャンと開く。そこには鬼円君の姿が。


 ……え、鬼円君!?


 「なにしてんの!?」

 「あっ、木刀!」

 「ちょっ!?」


 私が手に持っていた木刀を勢いよく奪い取るような感じで手に取り、そのままグラウンドの方へと飛んだ。

 木刀を掴んだままの私も連れて。


 「あああぁぁぁぁああああぁぁぁ!?!?」

 「なんでテメェーも着いてきてるんだよ!?」

 「いきなり掴むからでしょぉぉぉ!?」


 そのまま土埃舞うグラウンドに戻っていき、冒頭に戻る。







 ◇◆◇





 ……最悪な状況である。

 だが、相手が鬼円を狙っているのである。


 「覚悟しろぉぉ!!」


 すると、勢いよく飛びかかってきたのは相手、悪噛狼平と言った青年だ。

 鬼円は悪噛の動きをよく見て後ろに退避して、木刀を振る。だが、その木刀に当たることなく空振る。


 「遅いぜェ!」

 「チッ」


 悪噛が凄い勢いで腕を振って、その腕が鬼円の顔面に当たる。

 鬼円が鼻血を出して後ろに吹き飛ぶ。

 明らかに人間が出せる力じゃない。


 (……能力者か?どちらにせよ厄介だな。っていうか俺そんな目立ったことしてたか?)


 鬼円が頭の中でそう考えながら立ち上がる。

 相手は紫色のオーラのようなものに包まれていた。そして、まるで狼の様な毛と耳が生えた。


 「テメェは俺の能力が見えているらしいからな。本気で行かせてもらうぜ!」

 「チッ、能力者かよ」


 悪噛が先程とは違うスピードでこちらに近寄る。そして、拳を振るう。

 木刀でなんとか防ぐが、勢いが強く、体ごと空へと飛んでしまった。


 「空中なら避けれねぇだろ!」

 「どうかな!」


 悪噛が地面を蹴って鬼円に近づく。

 鬼円が空中で木刀を掴んで勢いよく悪噛に振るい、顔面に当たる。

 悪噛はそのままの勢いで地面に叩きつけられる。さらにそこに追い打ちをかけるように鬼円が上から蹴るようなポーズで悪噛の上に乗る。


 「オラァ!」


 さらに上に乗りながら蹴る。蹴る。踏み潰すかのように蹴る。すると、悪噛がその蹴っている鬼円の足を掴んで投げ飛ばす。

 悪噛は口から血をペッと言って吐いて口元を拭う。


 「はぁ…何がしてぇのか知らねぇが…」


 私は息を飲んだ。

 鬼円が、黄色のような、オレンジ色のようなオーラに包まれたからだ。

 香蔵さんは私が「」と言った。

 それをいま、実感したと言える。まるで毛が立つような感じが私を襲った。


 「とりあえず、ぶっ飛ばす!!」


 鬼円が木刀を強く握って悪噛にそれを向ける。悪噛はニヤッと笑って拳を構える。

 そして、お互いに走り出した。

 鬼円が木刀を振り抜き、それを避ける悪噛。さらに木刀を振る振る振る!悪噛の腕や足に当たり、当たる事に悪噛が顔を少し歪ませる。


 「オラオラァ!!」


 重さをものともせず、何度も何度も振るう鬼円。さすがに分が悪いと思ったのか悪噛は一旦後ろに引いた。

 だが、それを許さない。


 「マジか!」


 鬼円がさらに地面を蹴って後ろに引いたはずの悪噛に急接近する。

 さすがの悪噛も動揺する。鬼円はそこを見逃さなかった。

 上から下に叩き斬るように木刀を振り抜く鬼円。諸に当たった悪噛は勢いよく吹き飛ばされる。


 「ハァァァ…あんまり能力を使わせるな疲れるんだよ」


 そう言って、鬼円君は手を顔の横に持っていき木刀を肩に乗せて悪噛を見た。

 かっこいいと思ったのはここだけの話でもある。

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