ようこそ!超能力部です!

ガッツYY

1章 一学期編

第1話 渋谷に来た少女


 2035年。


 『次は〜渋谷〜渋谷でございます』


 東京、渋谷。


 「ここだ。降りて…ハチ公の前……」


 私は荷物を持ち、よいしょと言って電車から降りて駅をパパパと走っていく。

 渋谷駅を出て直ぐにハチ公の前へと着く。

 明るい空と太陽の光が私の顔を照らす。眩しくなるほどの強い日差しである。

 春のポカポカするような温かさと共に私は渋谷へと降り立ったのである。


 「よし…なんとかなった!」


 私は母親が書いてくれた手紙を持ち、携帯を片手に街を見渡す。


 「しかし……いくら何でもいきなりすぎたよ母さん…」

 「あれ?その格好…」


 と、ハチ公の前を通り過ぎようとしていた高校生に声をかけられた。

 私は硬直して、変な声しか出なかった。人見知りが発動しまくっている。


 「うちの高校の制服じゃねこれ?」

 「え、あっ、はい…」

 「え!?転校生ってこと!?」


 何だこの人!チャラいのか?!ギャルなのか!?でもそんな派手な感じじゃないし……


 「あれ?道に迷ってるの?」

 「え?あぁ……まぁ…」

 「じゃあ、あたしと一緒に行こうよ!」


 そう言って手を掴まれる。

 これが私、春乃真希はるのまき輝星香蔵ひかりぼしかくらとの出会いである。















 私、春乃真希。これから新しい高校に入る予定の2年生です!

 とある理由により、2年生になり元々居た高校から東京という大都会にやってきました!

 やってはきたのですが……


 「まじぃ?あのゲーム難しくない?」

 「いや、あっ、コツをつかめば…」

 「……もしかして人見知り?」


 ズバッと言葉で私の心をエグる。

 少ししてからこくりと頷く。


 「タハハ〜そうだよね〜。いきなりこんな女に声かけられて高校に行く訳だしね〜」

 「いや、こんな女って…」


 そう。人見知りが発動しまくっているのである。

 いや、人見知りじゃなくてもこんなグイグイこられたらアレだけれども。


 「君、名前は?」

 「春乃真希です…」

 「私、輝星香蔵!よろしくね春ちゃん!」


 春ちゃん…そう呼ばれたのは初めてだな…


 「向かうとこ、向花むかはな高校でしょ?」

 「はい…」

 「やっぱり!…っていうか、同じ制服を着てるんだから当たり前か」


 香蔵さんがえへへと舌をペロッと出して笑う。

 制服姿がとても似合っていて、私でも見惚れちゃうほどの美貌であった。まるで絵に書いたような可愛さを持って……

 ……なんか悔しい。


 「着いたよ」


 東京、渋谷にあるデカイ高校。そこが、向花高校であった。パンフレットで見たが、スポーツではなかなかの強豪校。吹奏楽部、美術部もコンクールで賞を貰うほどの上手さ。

 そんな高校に入ることとなったのか……私は。


 「どったの?入らないの?」

 「いや、改めて見るとでかいなぁって……」

 「そうだよね〜入学の時はおおっ!…って思ったもん。じゃ、私はこれで!私たちの部活来てね〜!」


 そう言って香蔵さんは学校の中へと入っていき、私と別れた。面白い人だったなぁとは思う。

 部活か…考えてなかったな。

 職員室に行き、色々と確認。そのまま自分のクラスの前まで来る。


 2年A組。そこが私のクラスだった。

 やはり、転校生が来るということではしゃいでいるのか、ガヤガヤと聞こえてくる。


 「じゃあ、入ってきていいぞ」


 1度、深呼吸をしてから扉を開けて中に入る。


 「えっと…春乃真希です!よろしくお願いします!」


 声はなるべく張り上げた方だ。

 すると、私が入ってきた扉の方から男の人が入ってきた。

 黒い髪にツンツンしている特徴的な髪。制服の第1ボタンを開けていて、まるで不良だ。

 そして、腰に刀を携えて…………


 「ん?誰こいつ?」

 「こら。鬼円、また遅刻だぞお前。あとこいつとか言うんじゃない」

 「へいへい…」


 不良…?いやいや、刀…先生見えてないの?!

 そのまま男の人はクラスの後ろの方に行き椅子に座った。その際、机に足を上げた。


 「こら鬼円。足を下ろしなさい」

 「面倒臭い」

 「面倒臭いじゃない!」


 クラスで所々で笑い声が発生する。

 いや、なんでみんな笑ってるの!?刀携えているんだよ!?銃刀法違反でしょ!?


 「じゃ、春乃。あいつの隣の席に座ってくれ」

 「え、あっ、はい」


 疑問を頭の中で浮かべながら隣に座る。

 そして、ギロッとこちらを睨みつけられた。……終わった?私死ぬ?


 「おい。お前部活は?」

 「え……まだ入って…ません」

 「よし。お前、放課後ここに残ってろ」


 ……お母さん、お父さん。ごめんなさい。先に旅立つ娘を許してください。













 ◇◆◇











 「お前、刀見えてるのか?」

 「え?」


 放課後になり、怖くて動けないままだったのだが、不意に声をかけられた。

 頷くと、鬼円くん(?)が立ち上がる。


 「着いてこい」

 「え?え?」

 「質問は後で。はよこい」


 逆らったら死ぬ感じがしたので着いていくことにした。

 すると、とある教室の前で止まった。そこには『超能力部』と言う文字が着いた看板がかけられていた。


 「超…能力…部?」

 「入れ。話はその後で」


 入るとそこには…


 「ん〜?あっ!春ちゃん!!」

 「か、香蔵さん…?!」


 そこにいたのは、朝に私をここに案内してくれた香蔵さんだった。


 「部活来てくれたんだ!嬉し〜!」

 「い、いや違くって!」

 「ん?どうしたの鬼円?」


 鬼円が香蔵さんに近づいてなにかコソコソと話をしている。すると、香蔵さんが物凄いスピードでこちらに近づいて私の手を取った。


 「凄い…凄いよ転校生ちゃん…!いや、春ちゃん!」

 「え?え?え?え??」

 「能力が…んだね!」

 「の、能力?」


 混乱している私を他所に、香蔵さんは凄く私の顔をまじまじと見ている。

 すると、それを見かねたのか鬼円くんが香蔵さんを掴んで引き離し、説明を始めた。


 「能力ってのは、この刀…まぁ、他の人には見えてないんだがな。こいつを扱えたりとか、炎が体から出たり…まぁ超能力だと思ってくれていい」

 「…す、凄いね…アニメとかでしか見ないんだけど」

 「あぁ、全くだ。そして、それを駆使して困ってる人や助けを求めている人を助けるのがここ、超能力部だ」


 困ってる人や助けを求めてる人…!

 っていうか、なんで私はここに呼ばれたの?能力なんて生まれて一度も出したことも駆使したこともないんだけど……


 「わ、私能力なんてありませんよ?」

 「うん。無い人もいるんだ春ちゃん。君は特殊な例だよ。能力が無いのに能力が見える人間」

 「無い人の方が多そうですけど…」

 「まぁ、私も5人ぐらいしか見た事ないよ」

 「ご、5人……」


 少ないな……。


 「でさ、春ちゃん。部活考えてる?」

 「いや、そういえば考えてない……」

 「ならさ!超能力部へ入らない?」

 「……私、運動もダメダメ。頭脳もそこまで高くないし、役に立たないかもですけど……よろしくお願いします!」


 超能力部……少し不安なところも多々あるけど…。


 「それじゃあ……ようこそ。超能力部へ!」


 頑張っていける…気がする!

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