第49話 想い
「ごめん……、ヴァイス……。力を借りるよ……」
私はヴァイスの意思を受け入れた。それがヴァイスの覚悟なのだから。ヴァイスのような魔物に本当に意思があるのかは分からない。でも、この顔はきっと心から生まれたもの。だからこそ、私は彼の意思を尊重する。
「ありがとう」
ヴァイスの体が光り出す。私の武器に魔力が流れ込んでいくのが分かる。その魔力は今まで感じたことがないくらい大きく、強い力だ。これならきっと勝てる。そう確信させてくれた。
光が消えると、ヴァイスの姿はなくなっていた。代わりに私が握っていたのは、純白の槍。その神々しい姿から力が溢れ出ている。
「これが……、ヴァイスの力……」
ヴァイスの力を借りたからには負けられない。強く槍を握り締め、決心する。燃える闘志が力となり、槍の輝きは一層強くなる。
「くらえ!」
槍を暗黒魔獣の頭に突き刺す。今までと違い、しっかりと深い傷が入った。それによって苦しみだす。頭を振って私を振り落とそうとしてきた。
落ちそうになるのは、不思議と怖くなかった。むしろ自分から飛び降りたように思う。私の体は軽くなり、宙に浮くことができた。これもヴァイスの力のようだ。一旦地上に降りて体制を立て直そう。
「琴音! なんで飛んでるんだ!?」
赤澤先輩が驚いて聞いてくる。
「ヴァイスの力です! 私に力を注ぎ込んでくれました!」
「そうか……。よく分からないけど、勝ち目が見えてきたな」
赤澤先輩だけでなく、青山先輩や桃井さん、司令官さんまで驚いていたが、深く考え込む余裕はない。みんなはとにかく受け入れることにしたようだ。
「ダメージを与えられるのは琴音だけ。それなら私たちは暗黒魔獣の動きを止めるために援護しよう」
「琴音ちゃんのため、私も頑張る!」
作戦は決まった。私は槍を構え、再び暗黒魔獣に向かって飛び上がる。
「ふんっ!」
槍で切り裂くたびに鱗が剥がれ、攻撃が通っているのを実感する。だが相手もただではやられない。尻尾を振って反撃してきた。あまりの速さと範囲の広さで、これは避けられない。
「【ワープ】」
ヴァイスの技を受け継ぎ、背後を取る。そして、間髪入れず攻撃を加える。この調子でどんどん攻撃していけば勝てる……。そう思ったが、不可能だと悟らずにはいられないことが起きる。
暗黒魔獣が翼を広げ、怪人から得た闇のエネルギーを取り出す。そこから魔力を補給し、傷は全て回復してしまった。
「ぐっ……、やっぱり一撃で仕留めないとダメか……」
地上の様子を見る。赤澤先輩と青山先輩は魔力を溜めて強力な技を放つ準備をしている。司令官さんは暗黒魔獣を引きつけようと動き回っていて、桃井さんはその防御を担当しているようだった。
「絶対倒す。みんなのために、世界のために」
感謝を胸に秘めて再び攻撃を始める。司令官さんは暗黒魔獣の気を引き、前方で何度も攻撃をかわしている。それには桃井さんの魔法の効果もある。作ってもらったチャンスを活かして、私は暗黒魔獣の腕に斬りかかった。
「はあっ!」
司令官さんを狙って地面を殴った隙に、腕を切り落とすことに成功した。すかさずもう一本も狙う。
「もう一度!」
期待通り、もう一本の腕も切り落とせた。これで大きな隙が生まれる。先輩たちの方を見ると、ちょうどチャージ完了したところだった。
「【フェニックスアロー】!」
「【ダイヤモンドダスト】!」
炎の矢と氷の粒が無数に落ちてくる。それらは暗黒魔獣に直撃し、激しい爆発とともに硬い鱗がボロボロと崩れ落ちていく。水蒸気で強い光の反射が起こり、輝いていた。
「黒井! 今だ!」
「はい!」
先輩たちの攻撃でひるんだ今が最大の狙い目。足に力を込めて地面を全力で蹴る。月にまで届きそうなくらい高く飛び立ち、暗黒魔獣の頭上を超える。
「これで……、終わりだ! 【ライトニングパワースラッシュ】!」
槍を振り下ろし、暗黒魔獣を突き刺す。そのまま下に降りていき、貫いていく。暗黒魔獣の中は熱く、体が溶けそうだった。体が焼けるような痛み、黒いばかりで恐怖しか与えない視界。それでも我慢して突き進む。
ついに地面までたどり着いた。暗黒魔獣は大きな叫び声を上げた後、闇を放ちながら崩壊していった。
「これで……、終わった……」
地面に槍を突き刺すと同時に、先端からバラバラに崩れ落ちていく。全てを出し尽くし、魔力がなくなったようだ。
暗黒魔獣の姿は跡形もなく消え去った。ただ一つ、小さな人が倒れているのだけを確認し、私は眠るように意識を失った。闇は少しずつ明け、太陽が昇り始めていた。
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