血塗られた少女

結局私は一度変身を解除する隙を見つけ再度変身することにした。

サラは私が元の服を用意していることに訝しむが、先ほどの彼女の主人と思われる男の子を待たせる訳にもいかないと、追及は避けたようだ。


「あれぇ? さっきと同じ服だー!」


男の子は素直に疑問を口にする。かわいい。


「魔法の服なんですこれ。秘密ですよ?」


私は人指し指を唇に当て、屈みこむ様なポーズをして笑顔を決める。

営業用魔法少女変身バンクの決めポーズだ。

男の子は「わぁ! すごい!」と言って手をぱちぱちと叩く。

とてもかわいい。

となりに居た女騎士はまたしても「え?」という表情を浮かべていた。


「それでおねーさん! ほんとありがとう! サラ達を助けてくれて」


「たまたま通りかかっただけですから気になさらず。 それよりここは危ないから、早く移動した方がいいわよ?」


私は少しおねーさんぶった態度で、窘めるように男の子に移動を促す。

そもそもこんな子供とお付きの兵士だけでなぜこんなとこにいるのだろうか?


「でも……、沼の調査をしないと……。兄上が頑張ってるし力になりたいんだ……」


その言葉に、女騎士たちは辛そうな表情を見せる。

どうやら、主人の役には立ちたいが力不足を痛感しているようだ。

仕方ない。私が悪役になるしかないだろう。


「おにいさん? が頑張っているんでしょう? それはなぜだと思うの?」


「それはみんなが……危ない目に合わないためだよ!」


「そうだよね? そのみんなの中に君がいないと思う?」


「あ……」


どうやら思い当たったようだ。

男の子は今にも泣きだしそうだ。

しかしその後の言葉は意外な一言だった。


「おねーさん! 僕に力を貸してくれませんか?」


「へ?」


「兄上は忙しく直接沼を見に行けないことに不安を感じておいででした。 僕だけでも連れて行ってくれませんか?」


どうやら、説得は失敗したようだ。

女騎士は下をむいて、諦めたように首を振っている。

私は断りたい気持ちでいっぱいだったが、断れば大惨事になるのは明白だ。


「少し、護衛の方とお話させてくれませんか?」


一旦保留してサラと話した方がいいだろう。

私は一度、この場を中座し、サラ達を呼び出した。


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